表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/104

第23話「ワン・オン・セブン」後編

 



「来たか……1時間5分、予想より10分早いな」


 エンジェルシリーズの7機を確認した凛斗はサブモニターを操作し、ビーコンを停止させる。

 このビーコン、今はルシファーの中にスタンドアロンの回路を組んで設置されている。凛斗が親爺さんに相談したところ、30分もかからずに取り付けてくれた。


「他に機影は無し。やっぱり、あいつらが先行したか」


 さらに上昇、ルシファーを森から空へ上げる。

 ここは小笠原諸島に含まれる絶海の孤島。その陰に隠れていたルシファーだが、役割は囮だ。これ以上隠れている意味もない。

 そしてレーダーに映る7つの光点を確認し、凛斗は心を切り替えた。


「さて、やるか」


 本気で戦うために。


『リント君、だよね?』

『……本物だな?』

「ああ。久しぶりだな、お前ら。メイから話は聞いたか?」

『聞いてる。色々あったってことも』

『言いたいことは山ほどあんだけどよ。けどお前、オレらに嘘言ってたのかよ?』

「おいおい、そんなことしてる場合じゃないだろ?目の前にいるのは誰だ?」

『何それ?』

『リントだろ?』

「敵だ。それ以外に何があるだ?」


 開かれた通信回線から聞こえる声には、僅かながら恐怖が混ざり始めた。

 何の躊躇いもなく、友を敵と呼んだ凛斗を恐れたようだ。


『て、敵って……』

「だってそうだろ?お前ら、いったいどこの軍人だ?俺は何者だ?」

『なっ……』

『ねえ、リント』

「ん?」

『戦う理由って、前に言ってたアレ?』

「ああ、そうだ」

『じゃあ、私達は?』

「俺は公私を分ける主義だ。多少は影響するけどな、今の立場を考えろ」

『そっか……』

『おいメイ、それで良いのかよ?もっと言っちまえよ』

『え、でも……』

『ほら、聞いちゃえば?友達だって凛斗も言ってたんだし』

「はぁ……甘すぎる。お前らは俺の何を知ってる?何も知らないくせに」


 だが今度は、凛斗の声に怒気が混ざった。


『……そんなことはない』

『知ってるよ。リント君の色んなこと。友達でしょ?』

「確かに友達だ。けどな……初めてSAGA(サーガ)に乗ったのはいつだ?」

『……は?』

『急に何を……?』

「俺は9歳の時だ。あんなに力を持つことが嬉しかったことはない」


 嬉しいと言いつつ、表情は暗い。決して明るくはない。


「初めて人を殺したのはいつだ?俺は10歳の時だ。凶悪なテロリストだったけど、拳銃1発 で呆気なく死んだよ。それから何人も、俺はこの手で人を殺してきた」


 メイ達と会う前から、凛斗は血に塗れている。拭えない穢れがその身を覆っている。


SAGA(サーガ)だって何百機も落としたな。コックピットを撃ち抜いた回数は数えきれない。車両を踏み潰した回数なんて覚えてない。飛行戦艦や海上空母だった何隻も沈めた。数百人の人間ごと、敵司令部を吹き飛ばしたことだってある。俺の手は、何千人の血で汚れてる」


 何千人もの命を奪い、それ以上の人を不幸にしてきた。

 同時に数万人が命を奪われ、それ以上の人が不幸にされてきた。

 そんな地獄を、凛斗は歩んできた。


「さて、もう1回聞くぞ」


 そしてこの時、凛斗は初めて彼らにこの目を見せる。


「俺の、 何を知ってるって?」

『ひっ⁉︎』


 狂気と憎悪で汚れた、凛斗自身が世界で最も嫌う目を。


「ぬるま湯につかったのは楽しかったぞ?けどな、それとこれとは話が別だ」


 その目で睨むのは、メイ達7人ではない。敵として立ち塞がる者達ではない。


「お前らは何も知らなさすぎる。何でテロリストやパルチザンが多数いるのか、何でSAGA(サーガ)を何機も持つパルチザンがいくつもいるのか、何故帝国軍の一大拠点を襲撃できるほどの装備を持ったパルチザンがいるのか。疑問に思わないのか?」


 もっと奥、人の心の中にある罪。


「別に誰かが暗躍してるってわけじゃない、当然の帰結なんだよ、これは」


 それは未知だ。何も知らないからこそ、無邪気なまま笑っていられる。凛斗と違って。

 しかし凛斗にとって、未知があるのは罪ではないかった。


「もう1回言うぞ。お前らは現実を知らなさすぎる。知る権利が、いや義務が、あるはずなのに」


 最も罪がある者は、未知を知ろうともしない者。

 そういう凛斗の理念からすれば、メイ達は間違いなく悪だった。


「だが、俺ならそれを教えてやれる。どうだ?こっちに来ないか?」


 だからこそ、知る機会を与える。メイ達には知ってほしいと願う。

 好き好んで、命の奪い合いをしているわけではないのだから。


『リ、リント……』

「どうした?目が怖いか?」

『そうじゃないけど……怒ってる?』

「まあ、ある意味怒ってるかもな。不甲斐なさに」

『うっ……』

『ちょっとリント君!』

『……言い過ぎだ』

「事実だ。で、どうする?」

『その、ごめん……やっぱり無理。だって私、軍人だから』


 残念ながら、期待の片方は外れてしまったが。

 予想通りとはいえ、落胆も大きい。


「そうか。やっぱりそうなるか。だったら……」


 だから次善の策に移す。凛斗はそう言うとルシファーを動かし、背中から手持ち式ビームソードを抜いた。

 さらに手足の固定式ビームソードを発振、計6本の光剣を振りかぶる。


「力ずくで俺を止めてみろ。お前らの正義を信じるなら!」


 そして、メインスラスターを全力で吹かして突撃する。

 目標はミカエル……ではない。


『オレかよ⁉︎』

「遅いぞ」

『トラン!』

『避けて!』


 急接近したルシファーは勢いのままにリヴィアタンの左膝および右肘を斬り落とし、さらに海面へ向けて蹴り飛ばす。

 それを見て、動けなかった他の6機も動いた。


『ちぃ!やれ!』

『やるしかないでしょ!』

『……撃つぞ』

「宣言したら当たらないぞ?宣言しなくても当たらないけどな」

『……本気で狙うぞ、凛斗』


 しかし、ルシファーには当たらない。軽口を叩きつつレミエルの狙撃を避け、ガブリエルとゼラキエルの剣撃をかわし、弾幕を潜り抜ける。

 ガブリエルとゼラキエルのブリューナクを避け、一部は撃ち落とすか斬り落とす。

 そして、ついでに煽った。


「ほらほら、ちゃんと狙え。当たってないな、おい」

『このやろう!』

『ちょっと、レックス君!』

『撃つよ!もう!』


 煽られたから、というより身の危険を感じたからだろうが、攻撃の本気度合いが上がっていく。

 ルシファーは避け続けているが、際どい弾が増えていく。

 そんな状況を見たメイはミカエルを背後へ回らせ、プラズマスラスターに点火したが……


『っ⁉︎』

「どうした?斬り込まないのか?」


 その針路上にガブリエルとラグエルがおびき出され、ミカエルは横にズレることしか出来なかった。

 ルシファーはその間にラグエルのビームロケットアンカーを斬り飛ばし、ゼラキエルの右翼をビームボーゲンで粉砕する。


『嘘でしょ⁉︎』

『そんな……』

「遅い、なぁっ!」

『きゃあ!』


 さらに、ゼラキエルの盾に手をかけると棒高跳びのように飛び上がる。そして、真上に来たところで駆動系とスラスターを全力で使い急降下、ゼラキエルの両翼を刈り取った。その上で、ビームボーゲンを使い左側の盾保持用サブアームを撃ち抜く。

 横から来たウリエルにはバレルロール気味に横を取りつつ、ビームソードとビームボーゲンで攻撃するも、こちらにはかわされた。他へ注意を払っていたというのもあるが、クリスもなかなか上手い。


「ちっ」

『ボクだって負けてないもん!って!?』

「遅いな」

『や、やめ、キャー!?』


 なので後ろから追いついて蹴りを叩き込み、海に落とした。

 この程度で壊れるような機体ではないが、しばらく戦線から脱落させられる。


『この、私も!』

『あたしだってー!』


 そんなところへ接近してきた2機。そのうちミカエルに対してはクルセイダーを避けつつ蹴り飛ばし、ラファエルと衝突するように軌道を変える。

 その後ろに迫っていたゼラキエルとは鍔迫り合いをし、他からの射撃を防ぐ盾とする。

 このまま切り結ぶのも良いが、まともにやり合うつもりは凛斗にはない。膝蹴りをコックピットに叩き込んで引き剝がした後、右足を切り裂いた。

 その直後、プラズマ収束砲を展開する。


『きゃあー!?』

「そう意気込むのは良い。けど、甘い」

『……何を、なにっ⁉︎』

『アクト!』


 1機だけ戦場から離れ、島の陰から狙撃してきたレミエルに狙撃をやり返し、右腕と頭部をもぎ取る。同時に銃も破壊し、翼も半分以上を融解させた。

 主兵装を失い、メインスラスターも大半が使い物にならない。レミエルは完全な戦力外と化す。


『それ以上は!』

「意気込みは良い。だが迂闊だぞ」

『でも、ってそんな!?』


 隠れていたはずのレミエルが一方的に敗れた。

 それに浮足立った面々をかばおうと前に出てきたゼラキエルだが、一瞬で頭を打ち抜かれ、その隙に接近したルシファーにより右肩を切り落とされる。

 ウリエルが海面から上がってきた時には、戦力は半減していた。


『う、うそ……』

「さてと、これでようやく半分か」

『何で、こんな……』

『化け物かよ……!』

「そんな言い方をする資格があるのか?お前らが酷いだけだ」

『どういうこと?』


 無事な機体はミカエル、ガブリエル、ウリエルのみ。ラグエルの損傷は武器か壊れた程度だが、残りの3機は重傷だ。

 特にゼラキエルとレミエルは大破状態、戦闘継続は不可能となった。

 とはいえ、パイロットに怪我は無い。凛斗は彼らに対しては優しく、殺気は当てても殺す気は無かった。


「操縦は上手いぞ?俺でも手を焼くくらいだ。けどな、お前らがやってたのは競い合いだ。殺し合いじゃない。本気で命を賭けてない」

『は?おい、リント?』

『……何が言いたい?』

「メイ。俺が死んだって思ってた時も、本気で殺すつもりはなかったんじゃないか?いや、勝ち負けだけ気にして、殺すなんてことは考えてなかったんじゃないか?」

『そ、それは……』

「メイだけじゃない。全員同じだ。誰も覚悟も足りてないな」

『んだと?』

『リント、君?』

「民間人ならそれで良い。だがお前らは軍人だ。たとえ新兵だろうと、暴力装置の一部に変わりはない。なのに力を振るうための知識も、覚悟も、何もかも足りてない。できるのは勉強だけか?」

『他にもできるけどさ……』

『うるせぇ!ガキの頃から殺してたくせに何言ってやがる!』

「あ゛?」


 だがトランのこの言葉には、流石の凛斗もキレる。

 彼の頭に血が上っていることは分かるが、こんな風に言われて我慢できるほど凛斗は寛容ではない。


「俺は好き好んで戦争屋になったわけじゃない……」


 そんなこと、アレがなければやらなかった。

 アレがあったせいで今、この立場に立っている。

 できれば、あんな感情に(さいな)まれるようなことは経験したくなかった。


「戦わないと守れないから戦うんだよ!それを分かれ!」


 激情と共に放たれる、ルシファーの火器全てを使った全力斉射。それは無傷の3機とラファエルに投射され、散開させる。

 直撃こそ無かったものの、各機のサブスラスターはいくつかが破壊された。直線加速にはあまり問題は無いが、機動性にはダメージがある。無視できる損耗ではない。

 というより、それが凛斗の狙いだった。


「はっ!立派なのは口だけか!」

『何を!』

『この野郎!』

「意気込んでも当たらないぞ!オラァ!」

『うがっ!』

『ちょ、わっ⁉︎』


 ミカエルの大刀型クルセイダーは盾で受け流し、ガブリエルの長剣型クルセイダーは柄を蹴り飛ばしつつかわす。さらにビームボーゲンで牽制した。

 そして、2機を牽制している間にラファエルの盾に何発かハイビームボーゲンを当てた後、ラファエルをウリエルへ向けて蹴り飛ばす。

 ウリエルはどうにか衝突を避けたが、その隙をルシファーに狙われており、慌てて降下した。しかしビームボーゲンをかわし切れず、左足を失った。

 戦闘能力で凛斗が圧倒している状況に変わりはない。そして、覚悟においても。


『はぁぁ!』

『らぁぁ!』

「っと、危ないな」

『避けんじゃねぇ!』

「戦う気あるのか?当てる気が無い弾なんて撃ってもな!」


 しかし、メイ達も不本意ながら、戦闘可能な機体数が減ったことで連携しやすくなった。

 ミカエル、ガブリエル、ウリエルが格闘戦を挑み、ラファエルはビームガトリングで援護という布陣。普通のパイロットならこれで落ちるだろう。

 とはいえ、いくつかのサブスラスターが破壊されたことで、動きの一部が数瞬だけ遅くなっている。

 凛斗はその隙を見つけてかいくぐり、逆にガブリエルの左腕を撃ち抜いた。


『ちぃ!』

「狙いが甘い、回避が甘い。そんなので戦えると思ってるのか?」

『これくらい……このっ!』


 また、ミカエルのクルセイダーを避けた直後、ルシファーはビームボーゲンを何十発と放った。それらは全て避けられたが、本命はこの次。

 再度クルセイダーを構えて突撃したミカエル


「だから甘い!」

『えっ、きゃあ⁉︎』

『メイちゃん!』


 左手の手持ち式ビームソードでクルセイダーを逸らし、避ける。ここまでは同じだ。

 しかしその後右手の手持ち式ビームソードを捨てるとミカエルの左肩を掴み、スイングバイのように回転、無防備な背中に膝蹴りを叩き込む。ミカエルは完全に体勢を崩し、回転しながら落ち始めた。

 そして、タイミングを見計らって放たれたルシファーのプラズマ収束砲がミカエルの両翼を掠め、メインスラスターおよびプラズマスラスターを焼き切る。読み切った凛斗の勝ちだ。

 ついでに後ろから接近してきたウリエルの左手を掴んで振り回し、体勢を崩した後に左腕と右翼を叩き切った。


「メイ、同じことばかりやってるから覚えられるんだよ。だから、はっ!」

『なあ⁉︎』


 ルシファーはガブリエルの盾を蹴って加速すると、ラファエルへ体当たりをしかける。

 そしてラファエルが体勢を立て直す前に二閃、頭部と左肩を斬り落とした。


『この、リント!』

「遅い!」

『ちょっと、危な、わっ⁉︎』


 投げたビームソードがガブリエルの頭を貫くと同時に、ルシファーはその背後に回り、両翼を叩き斬る。

 さらにビームボーゲン30条をウリエルへ向けて放ち……


「しっ!」


 回避の隙をついて、残った右腕と左翼および頭を斬り落とす。


『あう、そんな……』

「お前らは強い程度だ。本当の戦場を、地獄を知らない。所詮、こんなところか」

『強すぎだろ……』

『でも……きゃっ⁉︎』

「メイ、もう終わりだぞ」


 また、ルシファーは高出力ビームライフルを取ると2連射、ミカエルが動かしていたビームガトリングを撃ち抜いた。

 プラズマスラスターが使えない以上、ミカエルの脅威度は半分以下だ。クルセイダーは事実上使えない。

 一応、まだビームライフルとビームスローイングダガーは残っているが、使ったところで結果は変わらないだろう。


『リント、本気になったらこんなに強いって』

『けどよ、そんな余裕でいいのかよ?』

「ああ、アレのことか。確認できるだけでも200機以上、よくこんなに集めたな」

『え、リント君、あんなにいるんだよ?』

『……難しい、だろう?』

「アレを相手にするとなると、俺でも手を焼くけどな……」


 ルシファーのレーダーにはまだ遠いが、200機以上の機影が映っている。恐らく、母艦ごと近くに来たのだろう。

 また、その先遣隊と思われるシルフィード36機(1ヶ大隊)が接近していた。

 先遣隊がルシファーの足を止めて、その間に本隊が接近して仕留めるという構図なのだろう。

 だが……


「今だ、やれ」

『は、はい』


 その瞬間、10本のビームが降り注ぎ、前にいた10機が撃墜された。残る26機も次々とビームに貫かれ、あっという間に先遣隊は全滅する。

 そもそも、凛斗の役割は囮だった。この数を集められたのだから、成功以外の何ものでもない。

 そして援護が来たということは、囮の役目も終わったということだ。


「ナイスタイミングだ、智子。もう良いぞ」

『そう、なの?』

「追いかけてこれる状態じゃないからな。それより、敵の増援は?」

『アレで終わりだぜ、凛斗』

「了解。智子、そのまま牽制しててくれ。用は終わったから、あとは逃げるだけだ」

『う、うん』


 智子が乗るアスモデウスはルシファーより50km離れた場所におり、隣にサタンを侍らせながら狙撃していた。

 そうして先遣隊を壊滅させた銃口はエンジェルシリーズへ向けられており、ロックオンも続いている。メイ達は動けない。

 レミエルなら対抗できるが、ルシファーの前でそんな隙は晒せない。そもそも、銃も頭も無い。


「メイ、お前は優しすぎる。戦場にいても辛いだけだろ」

『え、ええと……』

「俺には分かる。だから無理をしてほしくないんだ」

『それは……ありがと。でも辛そうだね、リント』

「それは……笑って戦争なんてできないからな、俺は」


 凛斗はそう、吐き捨てるように言った。

 自分の中の葛藤を悟らせないために。


「とにかく、お前達もっと現実を知るべきだ。上から与えられる情報が全部じゃない。自分の目で確かめろ。その上で決断しろ」

『あ、待って、リント!』

「じゃあな」


 本当はもっと話してほしい、もっと一緒にいたい、このまま追いかけたい。そんな気持ちがメイの中の8割以上を占めている。また軍人としても、ここでルシファーを逃すのは得策ではない。

 しかしミカエル以外は大破、ミカエルも翼の推力をほとんど失っている状態では、追いかけることなど不可能だった。

 そのため、ルシファーが接近していた帝国軍SAGA(サーガ)をプラズマ収束砲でいくらか薙ぎ払った時も、見送ることしかできなかった。


『凛斗、無事か』

「見ての通りだ。勝ったぞ」

『ったく、無茶しやがって』

『で、でも……動き、悪い、よね。損傷、あるの?』

「あー、あるにはあるが……自滅なんだよな、これ」


 智子の言葉を聞きつつ、凛斗はサブモニターに目をやる。

 ルシファーに被弾は無い。しかし、自己診断の結果はイエロー(交換推奨)だらけ、酷使した駆動部やスラスターにはオレンジ(要交換)も見える。一部にはレッド(使用不可)もだ。

 凛斗の操縦に付いてこられない機体を無理矢理動かしたためだが、ここまでなるとは予想外だった。損傷の箇所が多く、範囲も広いため、オーバーホールは確定だろう。


『自滅って……おい凛斗、お前何やったんだよ』

「データ見るか?」

『後で見るけどよ。帰るのに問題は無いよな?』

「ああ」

『だったら伯父貴か親爺さんに任せりゃ良いじゃねえか』

「確かに」


 そんなことを考えつつ、ルシファーを海中へ沈めていく。

 なお戦いの間、凛斗は懸命に隠していた。


「あー……何やってるんだろうな、俺は」


 自分の、不甲斐なさを。


「答えなんて出るわけがない、けど……まあいい、帰るか」


 なお帰還後、凛斗は親爺さんや繭達から盛大に怒られたことをここに記しておく。












・アスモデウス

EXSG73-T07D → 試製特七三式七型機甲戦闘機

 全高11.5m、第12世代SAGA(サーガ)。デーモンシリーズの7番機。狙撃戦用の機体。巨大な盾で身を守りつつ、高威力狙撃砲で敵を撃ち倒す。

 黒地に濃い緑のカラーリング。

武装

___大型多銃身狙撃砲×1

___ラージシールド×1

___迎撃ビームバルカン×2

___8連装小型ミサイル発射管×2

___ビームサブマシンガン×2

___ビームソード×1


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ