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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第22話「舞う天使」後編

 



「危ない、ねっ!」


 ミカエルはサブスラスターを吹かし、寸前のところでビームの奔流を交わす。


『……狙っているんだ。当然だろう』

「そうだけど、わっと」

『……避けるな』

「それは無理」


 レミエルの正確な狙撃を避けつつ、ミカエルは空を駆けていった。

 確かにアクトの狙撃は正確だが、それは1発ずつに過ぎない。ルシファーの避ける隙間の無いような弾幕に比べれば、非常に優しいものだった。

 そして、プラズマスラスターを使うミカエルにとっては、レミエルがいる場所は数十秒で到達できる距離でしかない。状況はレミエルに不利だ。

 しかし、そんなミカエルの前に、ゼラキエルが立ち塞がった。


『行かせない……』

「遅過ぎ」

『きゃあ⁉︎』


 が、クルセイダーの1撃で片方の盾を真っ二つにされ、ビームガトリングで後ろから蜂の巣にされた。

 クルセイダーを防ぐにはクルセイダーを使うのが1番であり、他の物では頼りない。スピードの乗ったミカエルのものは余計に、だ。

 ルシファー、というか凛斗は盾かビームソードで逸らしているが、ニーネにそんなことはできない。

 そしてミカエルは高速格闘戦用機、ゼラキエルは重装甲機。スピードが違いすぎ、相性が悪過ぎた結果だった。


『……ニーネ、早すぎる』

『無理でしょ、アレ』

「ねえ、話してる場合?もうそこ、届くよ?」

『……そういうことか』

「残念」

『……なっ』


 レミエルがプラズマ収束砲を避けた先、そこにビームスローイングダガーが飛んできて、コックピットを貫いた。

 片方が全機撃破判定となり、ミカエルの視界も最初と同じものに戻る。


「もう終わり?」

『……無理を言うな』

『あんな速いのに合わせる方が大変なんだから』

「でも、リントは普通にやってるよ?」

『『リントと一緒にするな(しないで)』』

「えー?」


 当然ながら、やっていたのはいつも通りのシミュレーション訓練だ。スパイダーが基地に停泊したままなため、最近はこればかりやっている。

 無論、実機を使った方もやりたいが、今は全機警戒待機中なので無理だ。また、あれではクルセイダーが使えないため、メイにとって十分とは言えない。

 そして適当に決められた組み合わせにより、この蹂躙劇は決定された。


「メイ、やりすぎでしょ」

「え、いつも通りだよ?」

「だって、ニーネちゃんにも容赦なかったよ?」

「男どもはいつも通りだけど」

「そうかな?」

「……いつも以上だぞ」

「厳しいっての」

「あ、もしかして……」


 なお、今日の訓練は休憩しつつ行われている。ニーネとアクトの前にレックスとトランもメイに挑み、一方的にボコボコにされていた。

 ちなみに、メイは前と同じようにやろうとしたが、他の6人にゴリ押しされた結果だ。実戦形式でもない訓練で、何度も何度も疲れ切るのは嫌らしい。


「調整が上手くできてるから、とか?変えてからは初めてでしょ」

「あ、そうかも」

「あー、そういうことかよ。好き勝手やってたよなぁ」

「うん。前より好きに動かせるから、気分が良いよ」

「だからか。まったく、そんなことに巻き込むな」

「あはは、ごめん」


 その疲れ切る原因は、非常に楽しんでいた。気分良く戦えるのは良いのだが、他6人には負担になる。

 成績優秀者であっても、大変なものは大変だ。例え、それが帝国軍全体で見た場合だとしても。


「でもよ、よく動かせるよな。あのパラメータやべぇぞ」

「ほんとほんと。ピーキーすぎでしょ」

「え、でもこの方が楽だよ」

「……流石だな」


 月にある他の高等士官学校も含め、歴代最高と言われているこの世代だが、その中でもトップの2人は圧倒的だった。

 厳しい戦闘を何年も繰り返していた凛斗はともかく、数ヶ月前が初陣でしかないメイすら、並のエースを超える戦闘能力を示している。技量では負けている相手も多いとはいえ、2人とも機体との相性が非常に良かった。


「で、次はどうするの?また私?」

「やめようぜ。メイは連続だってものあるが、もう蹂躙されたくねぇ」

「あたしとクリスで、レックスとトランの相手をするのがちょうど良いんじゃない?あたし達はまだやってないし、ペア的にも」

「あ、それ良いね。ねえメイちゃん、良いかな?」

「俺は良いぞ。だろ、トラン」

「おう、やってやんよ」

「じゃあ、それにしよっか」


 そう意気込み、4人はそれぞれのコックピットへ入っていった。

 シミュレーションの調整は終わっているが、すぐには始まらない。打ち合わせをしているのだろう。

 そして外でも、話し合いは行われた。ほぼ歓談だが。


「ねえメイ、どうなると思う?」

「クリスとシアが勝つでしょ。私も応援したいし。だよね、ニーネ?」

「個人的には2人を応援したいよ?でも、それと勝負は話が別だから……」

「え?でも、私は2人が勝つと思うな。あ、アクトは?」

「……それなら、レックスとアクトにしておこう」

「あれ?もしかして遠慮した?」

「……さあな」


 そんな予想が立てられる中、レックスのガブリエルとトランのラファエルに向き合うように、クリスのウリエルとニーネのラグエルが対峙する。

 機体のサイズ差もあり、大人と子どもの勝負にも見えるが、戦闘能力は互角だ。相性差もミカエルとゼラキエルほどはない。

 残りは互いの腕と連携だけ。条件は互角だ。


『さてと、さっさとぶっ倒すぞ』

『おう、やってやんぜ』

『え?勝てるつもりなの?』

『返り討ちにしてあげる』

「じゃあいくよ。始め!」


 そしてメイが合図を出した瞬間、ガブリエルとラファエルはクルセイダーを両手に持ち、メインスラスター全開で突撃を開始する。


『らたぁぁ!』

『しゃあぁぁ!』

「わ、最初から全力って、本当に本気みたい」

「そうだね。でも、遅いかな」

「……ミカエルと比べれば、どれもそうだろう」


 しかし、ウリエルはガブリエルの、ラグエルはラファエルのクルセイダーを、どちらもビームソード2本で受け止めた。

 ミカエルほどのスピードがなければ、クルセイダーをビームソードで受け止めることも可能ではある。とはいえ難易度が高いことに変わりなく、出力と体勢のどちらが崩れても斬り裂かれてしまう。

 そんな技を決められるあたり、2人もまたエース級だった。


『重さだけは、馬鹿げてるけど』

『メイちゃんはもっとだよ!』


 さらに小型機というウリエルとラグエルの長所を生かし、ビームソードとクルセイダーの反発を利用して飛び上がり、逆側の相手に斬りかかる。

 ガブリエルは避け、ラファエルは斧槍型クルセイダーの柄で防いだものの、仕切り直しとなった感は否めない。


『ちっ、無理かよ』

『流石に無理、と……予想通りだけど』

『じゃ、次やっちまうぞ』

『シアちゃん、やろっか』


 そう言うと4人は愛機に構えさせ、相手の隙をうかがう。


「何をやるのかな?」

「また突撃とか?流石に無いか」

「挟み撃ちとかは?」

「……それよりは複雑だろう。恐らく……」

「あれ、アクトは予想できてるんだ」

「……一応、な」


 そう、外の3人が呟いた次の瞬間、状況が動いた。

 ガブリエルとラファエルはミサイルを一斉に発射し、それを見たウリエルとラグエルもミサイルを放つ。

 ミサイルの数は後者の方が少ないが、デーモンシリーズを相手にする時ほどの差はない。簡単に迎撃できる程度だ。


『効かないね』

『ちっ』


 ガブリエルはウリエルに向けてロケットアンカーを放つも、到達前にラグエルのビームロケットアンカーに貫かれた。

 もっとも、反撃のビームスローイングダガーとビームブーメランも避けられるか撃ち落とされ、互いに攻めあぐねることとなる。

 ガブリエルはブリューナクを展開させるも、ウリエルとラグエルは優先的に攻撃したため、何もできずに撃破されるものが多かった。


『やぁ!』

『やらせるかよ!』


 ラファエルは右手に斧槍型クルセイダーを保持しつつ、盾下のビームガトリングを撃ちまくる。

 ウリエルはそのビームの雨を避け、手持ちと固定の4つのビームソードで斬りかかった。

 しかし、斧槍型クルセイダーを上手く操るラファエルには届かず、全て防がれてしまう。


「おー、上手だね。初めてみた」

「いや、それはメイが一方的にやっつけてただけ……」

「……聞いてないぞ」

「酷くない?」


 隣の呟きが聞こえない程度には、メイは熱中していた。

 ウリエルとラグエルが残ったビームスローイングダガーを全て投擲、さらにラグエルはビーム砲も連射する。

 どちらも避けられたものの、これは牽制。回避行動を取った隙に斬り込み、得物を壊しにかかる。


『はっ!』

『やぁ!』

『ちっ!』

『このやろ!』


 だが、ガブリエルもラファエルも格闘戦が得意な機体、盾とクルセイダーでビームソードを防ぎ、反撃の一閃を振るった。


「おお!」

「……上手いぞ」


 しかし、高速性はウリエルとラグエルが勝る。どちらも紙一重でクルセイダーを避け、再度二刀で斬りかかった。


『やぁぁぁ!』


 ラファエルは変わらず、待ち受けている。出力と機動性の違いを考えれば、間違った選択ではない。

 しかし、ウリエルはビームソードを同じ場所に連続して当てることで……


『ちぃ!』

『トラン⁉︎』


 斧槍型クルセイダーの柄を斬り落とした。さらに、追加で振るわれたビームソードは胴体も掠める。

 かすり傷でしかないが、被弾したことは事実だ。


『おいトラン、大丈夫か?』

『問題ねぇよ、かすり傷だ。けど、こいつは使えねぇな』

『なら変えちまえ。行くぞ』

『おう』


 ラファエルはクルセイダーを捨てると右手にビームライフル、左手にビームソードを構え、ガブリエルに続いて突撃する。

 ウリエルとラグエルは迎え撃ち、それまでと打って変わって、壮絶な近接格闘戦が繰り広げられ始めた。


「……激しい、な」

「腕が互角だからじゃない?」


 ガブリエルが振るった長剣型クルセイダーを避け、ウリエルはビームソードで斬りかかる。

 しかし、その側面からラファエルがビームライフルを向けてきたため後退、ラグエルの援護射撃を受けつつ再度突撃した。

 そのラグエルはラファエルとの近接戦から少し離れ、ビーム砲でビームガトリングと撃ち合いつつ、ビームロケットアンカーを放つ。


『やっちゃえ!シアちゃん!』

『任せなさい!』

『やらせるか!』

『落としちまえよ!』


 使い捨て覚悟で放たれたビームブーメランがガブリエルの右足が断たれるのと同時に、ラグエルの左翼が撃ち抜かれた。

 ウリエルは肩部装甲を大きく削られるのと引き換えに最後の突撃槍型ブリューナクを切り裂き、残った銃剣型ブリューナクも撃ち落とす。


「ねえ。これ、ちょっと激しすぎないかな?」

「それだけストレス溜まってたんだよ」

「え?」

「……少なくとも、片方は」

『おらぁぁぁ!』

『はぁぁぁ!』


 そんな戦いはさらに激しさを増し、機体が負う損傷は増えていく。

 レックスとトランがいくらストレスを溜めていようと、クリスとシアも簡単にやられるような相手ではなく、衝突は何度も何度も続いた。

 そして……


「そこまで、かな?」

「みたい。両方ボロボロだし」

「……それに、時間だ」

「だね」


 結局、時間切れで明確な勝敗はつかなかった。しかし、双方ともボロボロだ。

 ガブリエルはロケットアンカーの他、右手と右足を欠損。片腕を無くした結果クルセイダーも投棄しており、戦闘能力の低下は最も激しいかもしれない。

 ラファエルは斧槍型クルセイダーとビームライフル、および左足と右翼を失った。両手こそ無事なものの、バランスの悪化から格闘戦能力はかなりの低下を見せている。

 ウリエルは大きな損傷こそ少ないものの、全身に傷を負っており、サブスラスターの5割近くが動いていない。また、ビームサブマシンガン2丁と手持ち式ビームソード1基を失っている。

 ラグエルはビームブーメランとビームロケットアンカーを全て喪失、他に右足と両翼も失った。後半、2機から集中的に狙われた結果、機動性を大幅に低下させることとなった。


「あー、クソ。あそこでドドメ刺せてればよ」

「無理無理、ボクも分かってたもん」

「大掛かりすぎたぞ」

「避けるでしょ、あんなの」

「お疲れ、みんな」


 もっとも、そんな激戦を繰り広げたパイロット達は清々しい顔だ。

 ただの訓練、友人同士の競争に憎しみが生まれるわけがない。


「で、次は?」

「全員でやらない?アクト、ニーネ、チーム組もうよ」

「あ、良いね」

「……分かった」

「ってことは、4対3か」

「腕が鳴るぜ!」

「でも、メイちゃん1人でも勝っちゃいそう」

「それは言わない方が良い話でしょ」


 そして7人はしばらく休憩し、また訓練を始めた。

 いくらか内容を変えつつも、最近よく行っている習慣。それはこの日も変わらなかった。











「青い星ですね」

「宇宙にいるからそれは当然……」

「そういう意味ではありませんよ」


 そんな友人達のじゃれあいが起こっている中、マイリアとレグルトは宇宙船の中にいた。

 もちろん、2人きりではない。周りには護衛の黒服が、また船外には護衛のSAGA(サーガ)もいる。

 しかし、皇女という立場にしてはいやに少なかった。


「あの美しい星では今も争いが無くなっていないことを嘆いているのですよ。あの星の美しさは(わたくし)達が1番よく分かっているというのに」

「そうだとしても、争いをやめられないのが人だ……そう言ったのはマイリアだよ?」

「そうです。しかし……」

「考えずにはいられない、か。僕もそうだから、仕方ないけど……リントだったら、何て答えるんだろうね」

「どうでしょうね……出来うることなら、メイと共にいて欲しかったのですが」


 それも全て、彼女の目的のため。

 そのためだけに、彼女達は動いている。


「争いは無くならない。それは人の()り方なのですから、当然のことです。前へ進もうとする心を、歩みを、止めることはできません。ならばせめて、不幸を減らすように動く。(わたくし)はそうしたいのです」

「いつも通りだね、マイリアは」

「それは褒めているのですか?レグルト」

「もちろん」

「では、そういうことにしておきます」


 それ以外に理由は無く、それ以上の理由も無い。


「次はラグランジュ1、気を引き締めて参りましょう」

「もちろん」


 彼女達が紡ぐ物語。その終幕はまだまだ先だった。












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