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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第22話「舞う天使」前編

 



「うーん……」

「メイ、やっぱり出てこない?」

「うん。派手な銃撃戦っぽかったのに」

「郊外の倉庫だから、話題に上がりにくいんでしょ。もしかしたら、当局が調べることじゃないとか?」

「むしろ調べることだよね?」

「じゃ、途中なんじゃない?でも、ホントにリントがやったんだったら無駄なだけな気もするけど」

「リントは無駄なことなんてしないと思うよ?」

「だってさ、反帝国のテロリストとパルチザンが戦うなんて考えにくいでしょ。効率をドブに捨てるようなものだし?だから、やったのはリントじゃないってこと」

「かな……」


 あれから2日。メイは部屋にやってきたシアと共に、情報収集を再開していた。

 彼女達からしても、あの件は不思議だったためだ。爆弾テロという情報を聞いて駆けつけると、既にテロリストは全員死んでおり、パルチザンに所属する凛斗が近くにいた。明らかにおかしい。

 そんな状況を知れば誰でも調べたくなるものだが、メイ達の本業は調査ではない。効率は悪い方だ。

 ちなみに、昨日は7人揃って艦長室に缶詰となっていた。軍規的には違反でないが、人間的には褒められたことでは無いと、艦長自ら説教&反省会(事務仕事)を執り行ったためだ。


「そういえば、他のみんなは?」

「訓練に付き合ってるはず。今頃シミュレーターの中じゃない?ニーネとアクトの訓練だーって、クリスがはしゃいでたし」

「え、何それ聞いてない」

「あれ、聞いてないんだ。メイに言わないなんて珍しい」

「今すぐ行ってくる」

「先こっちでしょ。もう少しなんだから」


 シアの言う通り、メイの端末は大きなデータをダウンロード中だ。これを止めるとなると少し面倒で、そのまま終わらせた方が手っ取り早い。

 まあ、既に進行度は90%を超えており、1分と経たずに終わるだろう。


「てか、このデータどうしたの?」

「え?パスワード貰ったから、武装法務隊から取ってきた」

「貰った?誰に?」

「ミーフェル」

「……大丈夫?それ」

「大丈夫みたいだよ。もう5回目だし」

「はぁ……それならまあ良いけど」

「あ、終わった」


 そして2人で内容を確認するも……


「えっと……何もないね」

「テロリストとパルチザンは……うわ、扱い完全に同じだ」

「武装法務隊にとってはそうなんじゃない?SAGA(サーガ)の有る無しで区別したり?」

「普通他にも区別はあるよね?元軍人がいる方が強いとか」

「評価なんてそれぞれなんだし、意味無いでしょ」

「そっか。それで、行っていい?」

「止める権限なんてあたし持ってないけど」

「じゃあ行くね」


 ここで情報収集を一旦止め、部屋から出る。

 格納庫に行くと、ちょうど5人がコックピットから出てくるところだった。


「きゅーけー」

「まったくもう、クリスったら」

「……流石に、レックスの相手は辛いな」

「こっちもだ。狙撃上手すぎだろ」

「みんな、ちょうど終わったの?」

「クリスが言ってたでしょ。休憩だって」

「あ、メイちゃん。そっちは終わったの?」

「メイ、こっち来たのか」

「シアちゃんとは飽きた?」

「ちょっとクリス、それどういう意味?」

「えー、分かんない?」

「クーリースー?」

「まあまあシア、そんなに怒っちゃダメだって。クリスも、からかいすぎないの」


 そんな風に騒げるのは、子どもの特権だ。周囲にはほぼ受け入れられており、微笑ましく見守られている。

 もちろん、軍人として仕事もしているのだが。


「ねえ、どんな感じだった?」

「こっちか?変わんねぇよ。アクトのニーネが上手くなっただけだぜ」

「それだけ?」

「それだけと言えばそれだけだ。追加があれば別だが」

「ふーん」


 詳しい内容を聞けば、具体的にどこが上手くなったか話してくれるだろう。

 だがその前に、手に端末を持ったクリスが声をかけてきた。


「あ、メイちゃん、これ見た?」

「もしかしてまた?」

「うん、明けの明星の話」

「また輸送艦隊がやられたみたい。ここのところ派手だよね」

「しかも、救援要請を出せなかったらしいし」

「防ぐのって無理なのかな?」

「難しいだろ」

「レコーダーの解析結果を聞いたけどな、魚雷と空襲で一気に潰されたってよ」

「……壊滅まで5分とかかっていないらしい」

「そうなんだ……って、みんな知ってたの?」

「ま、あいつのことだ」

「気になるから」

「つい、ね」

「ズルい」

「……そう言われてもな……」


 明けの明星の輸送艦隊狩りは何度も繰り返され、被害は増える一方だった。対策をしても先にやり方を変えられ、減らすことはできていない。

 物資は直接宇宙から投下することもできるが、土地が広いアメリカやオーストラリアに降ろす方が楽だ。1度に大量の物資を投下する必要がある以上、精密降下はコストに見合わない。

 そのため、諸島部への輸送は未だに艦隊が主流だった。


「もう逆を考えろよ。いっそ護衛を増やしちまおうぜ」

「リントが相手だよ?」

「あー、下手な数だと……」

「……まとめて殲滅される、な」

「でも、多すぎるとコストが高いよね?」

「そんな規模の艦隊、まとまる気がしないんだけど」

「輸送艦隊としては多すぎかな」

「じゃあどうすんだよ」

「うーん……諦める?」

「宙から精密誘導、かな」

「いっそのこと、パルチザンを壊滅させたり?」

「……それが出来ているなら、こんなに長引くわけがない」

「それもそうか」

「え?」


 対策と言うにはたわいない、雑談レベルの話し合い。

 だが、メイにはそれが引っかかった。


「メイ?」

「おい、どうした?」

「何となく気になって……気のせいかな?」

「そんなこと言われたら余計気になるぞ」

「メイちゃん、教えて」

「ごめん、具体的は分からなくて……」

「んだよ、使えねぇ」

「……知らないからな」

「トラン、1人で勝手にやれ」

「は?……あ」


 トランが目を向けた先。そこには獲物を見つけた肉食獣の目をした者が3人、苦笑いが1人。

 そして、男2人が立ち去り、残った1人が制裁を受けた後。


「あ、そうだ。メイ、美味しいケーキ屋の話を聞いたんだけど」

「え、本当?行きたい」

「ボクも!」

「大丈夫、ちゃんと4人で予約してあるから。次の休暇で、ね?」

「そんなところで仲間外れにはしないって。心配しすぎ」

「だって聞いてなかったし」

「じゃあ、その日は……」

「おーい、嬢ちゃん。ちょっと良いかい?」

「あ、はい!」


 次の休暇についての話をしていたが、整備兵に呼ばれ、メイはミカエルの所へ走った。

 注目されているとも知らずに、だが。


「悪いな、嬢ちゃん。話の途中に」

「いえ、大丈夫です。それで、何の用ですか?」

「ミカエルの調整の話になるな。壊された部分を直したついでに、各部の設定を変えられるようにするプログラムを組んでいた。それが終わったから呼んだんだが……」

「それじゃあ、もっとピーキーにしてください。反応性とか」

「即答……まあ出来るが。それで良いのか?」

「そうじゃないとリ、ルシファーに勝てないからです。最高速度はミカエルが上ですけど、反応速度が違いすぎて……せめて追いつけるようにならないと」

「なるほど。とはいえ、今できるのはここまでだな。これ以上には別に設計が必要、時間がかかる。大丈夫か?」

「大丈夫です。ありがとうございます」

「礼は終わってからで良いぞ、嬢ちゃん」


 メイ自身は軽い気持ちで出した要求で、整備兵からしてもほぼ予想通りの回答だが、周囲で聞いていた者達からしたら異なる。

 今のミカエルでも、プラズマスラスターを十全に扱えるパイロットは少ないのだ。それがプラズマスラスター無しでも他者には扱えない機体となる。

 事実上の専用機とはいえ、ここまで好き勝手できるのはメイくらいだろう。技量的な意味でだが、注目を浴びるのは当然だった。もちろん、性能的な意味での心配もある。


「メイ、今よりピーキーって大丈夫?」

「大丈夫。大分余裕できたし、リントに勝つには必要だから」

「でもさ、メイちゃんってリント君に勝ちたいの?」

「アレじゃない?リントに追いつきたいって乙女心」

「だって、この間負けちゃったから。私も負けず嫌いだし……意地かな?」

「それだけ?」

「うん、これだけ」

「あっそ」

「へえ」


 負けの方が多いとはいえ、凛斗と張り合えるのはメイだけだった。競い合うことも好きなため、自分から勝負をしかけた回数も数十に及ぶ。

 ただし、その過去は解答が言葉通りということを意味しない。そして、親しい者は半信半疑だということも。


「それより次の休暇の話、他にどこ行く?」

「やっぱりショッピングモールでしょ。そして服を買う」

「一昨日買ったばっかりだよ?また行くの?」

「むしろ毎回行きたいんだけど。そうだ、メイは欲しくない?リントに見せる下着」

「え、あ、それは、その……」

「凄いの売ってる店も知ってるけど?」

「す、凄いの……」

「はいメイ、そこまでにして。シアはメイで遊んでるだけなんだから。クリスの教育に悪いでしょ」

「ねえ、ニーネちゃんも言うの?」

「わ、私は、その、あの……」

「うわー、何このメイ可愛いんだけど」

「これ見たら気持ちも分かるけど」

「メイちゃん、」


 直前の会話を気にするそぶりもなく、顔を真っ赤にしたメイをからかう3人。メイはこうなると回復まで長い。

 ただし、意外とちゃっかりしていたりする。


「あの、シア。後で教えてくれる?

「あはっ、もちろん」











「また襲撃されたのかい」

「はい、20分ほど前に残骸が確認されました。おそらく、襲撃は1時間前かと」

「早いねぇ。見習ってほしいくらいだよ」


 所変わってスパイダーの艦長室。ここではバーグナー艦長とアルティス副長が話し合っていた。

 議題はやはりというか、明けの明星のことだった。


「艦長」

「冗談でも、見習える手際なのは本当だよ。ここまでの作戦能力を持ってる部隊なんて、帝国軍でも100個に満たないかもしれないね」

「確かにそうかもしれません。しかし」

「固いこと言うもんじゃないよ。事実は事実として認めるべきだ」

「そういう意味ではありません。どこで聞かれているか分からないからです」

「ま、そうかもしれないけど……そう心配することじゃないよ」

「もう確認済みでしたか」

「当然だろう?それの関連で、武装法務隊の方はどうだい?」

「ここだけでなく、艦内のどこでも変わりません。キュルト中佐だからかと」

「指揮権へ介入するような性格じゃないかい。ま、そっちの方が楽で良いんだけどねぇ」

「艦長」

「事実じゃないかい。後ろから監視されるのは戦意を落とすだけ、督戦隊なんてものは不要なんだよ」

「それを分かっていない者がいるからこそ、反発があるということですか」

「そんな単純なものじゃないよ、これは。色々と政治的な裏があるみたいだ」

「なるほど。しかし厄介なことです」


 軍にとって、指揮系統が違うにも関わらず指揮に割り込んでくる武装法務隊はあまり好ましくない存在だ。別々に行動しているならともかく、共同戦線は嫌う傾向にある。

 同様に、武装法務隊にはエリート意識が強く他を見下す者もいるのだが……幸い、そういった面々はスパイダーには乗り込んでいなかった。メイとキュルト中佐は個人的に仲が悪いだけだ。

 とはいえ、警戒しないという選択肢は無いのだが。


「にしても明けの明星と武装法務隊、因縁でもあるのかね」

「艦長?」

「メイルディーア少尉達が最近、日本のことについて調べてることは知ってるかい?明けの明星についてもだけど、パルチザンやレジスタンスも。ログが派手に残ってるからねぇ。一昨日のも、元はそっちが原因らしいよ」

「知りません。しかしハイシェルト少尉が、ですか。家を頼ろうとしないのは本当なのですね」

「あの家は長男までしか表に出さないせいで、知らない人も多いけどね。それと、ハイシェルト家は武装法務隊との繋がりが強すぎる」

「家に聞いても、不都合なことは隠されそうですな」

「それに実際、武装法務隊が怪しいのは本当だよ。知ってるだろう?」

「もちろんです。武装法務隊と現地の統治機構の間が怪しい動きがある、そういう噂は広まっています。事実が確認されたことはありませんが」

「もっとも、それだけじゃないんだよ。ああそうそう、マイリア皇女殿下についての最近の噂を聞いたことは?」

「そういえば……最近、地球を中心に様々な所へ訪問されているとか」

「極秘だとかで、一般には噂すら流れてないけどね。ただどうやら、東京湾港湾基地にも来てたらしい」

「本当ですか?」

「あくまで噂、真偽は定かじゃないよ。けどまあ、多分本当だろうね。それと武装法務隊のシュタットフェルト少尉がメイルディーア少尉に、武装法務隊の情報を渡してるようだよ」

「正気ですか?そんなことをしては……」

「士官学校の先輩後輩の仲、それにハイシェルト家のお嬢様相手だ。上官もそこまで気にしないんだろうさ。それに、シュタットフェルト少尉は皇太子殿下のお気に入りなんだよ」

「お気に入り……それほどですか?」

「側仕えが許されるほど、と言えば分かるかい?どうやら、ここにいるのは当人の希望が最優先に働いた結果らしいよ」

「なるほど。それは特に注意が必要そうです」

「性格の良さそうな子だけどねぇ」


 また、そういう理由でミーフェルも警戒対象に入っている。

 当人はともかく周りがどう動くか分からない、表裏なく全てを報告する、といった可能性があるためだ。


「もっとも、そういう子ほど注意しないといけないっていう話もあるよ。だろう?グラウデン少将」

『しばらく何を聞かされているのかと思ったが、そういうことか。相変わらずだなぁ、バーグナー艦長』

「……艦長、そういうことは……」

「勝手にかけてきて、部下との語らいを邪魔しようとする相手に遠慮が必要かい?」

「いえ、しかし……」

『そうキツく言うでない。それを言うのであれば、ワシとお前さんも上司と部下なのだが?』

「そうかもしれません。しかし軍団長閣下、こんな実験部隊の艦長に直接通信を繋ぐとは暇なのですか?」

『暇ではないぞ?だが、この話は必要であろう。しかし他人行儀とは、ワシに対してそう言えるのはお前さんくらいなもんだ』

「気楽そうだねぇ。こっちは弱みの1つや2つ、きっちり握ってんだよ」

『それはこちらもだということを忘れるでないぞ?』

「はっ、そっちが握ってんのは20年前のものだろう?今のわたしには関係ないね」

『ぬう、それではワシが一方的に不利ではないか……』


 グラウデン少将とバーグナー艦長、長い付き合いの2人だからこそのやり取りだ。

 同じ部屋にいるアルティス副長は気が気でなかったが、何も問題は無い。


『仕方あるまい、ワシの負けだ。だが、話は聞いてもらえぬか?』

「それくらいはおやすいご用だよ。で、何なんだい?」

『作戦を繰り上げることになりそうだ。早く対処せよと上から催促されたのでな。もっとも、半年単位が数ヶ月単位に変わった程度であるが』

「明けの明星のことかい。上層部の判断ってもその程度かい。遅いったらありゃしない」

『大陸戦線に出た異常が大きくなり、ようやく気づいたようだ。やはり月に残った連中は現場を一切知らん』

「はっ、そんなの分かりきったことだろうに。上がおかしいのはいつものことだよ」

『それを言ってしまえば、この戦争にも何か違和感があるだろう』

「まあ、確かにね」

「そうでしょうか?間違ったことはないように思われますが?」

『正当防衛ではある。そこから予防戦争に発展させるということも悪くはない。しかし……何か他の意図があるようにしか思えん』

「それは、つまり……」

『いや、謀略といったことではなかろう。単純に、動機の方に何かが混ざっているような気がしてならん』

「いっそのこと、謀略だった方が簡単なんだけどね」

「なるほど……」

『しかし、それを調べることは不可能だろう。武装法務隊に敵性分子と目をつけられる可能性は否定できん』


 母国と敵対したいわけではなく、挙げた話も噂の段階でしかないのだから、反乱分子とされることは誰もが嫌がる。

 とまあ、この話の価値はこの程度だ。長々と話し続けることはなかった。


「ま、そんなあるか分からない未来に怯えることなんてないよ。それで?わたし達はこのままで良いんだろうね?」

『そうだ。戦力が集まりきるまでは動くこともままならん』

「了解だよ。どのみち、哨戒程度しか動く理由が無いんだけどね」

『そのうち仕事を回す。待っていろ』


 通信が切れ、艦長室にはしばしの静寂が訪れる。

 アルティス副長はホッとした顔を見せているが、バーグナー艦長は違う。何かを考えている顔だ。


「副長」

「は」

「このこと、大尉以上には伝えときな。数ヶ月以内に軍団として動きそうだよ」

「了解しました」

「明けの明星と武装法務隊、さらにメイルディーア少尉に皇女殿下……意外と、馬鹿にできない結果になるかもね」

「艦長?」

「何でもないよ。早く行きな」


 今日、この場所で交わされた意見。下された決断。

 これがどのような結果をもたらすか、この時点では誰も知らなかった。












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