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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第16話「特務軍団」後編

 



「メーイちゃん!」

「うわっ⁉︎」

「えへっ、ただいま」

「まったく……お帰り、クリス」

「まったく。クリス、帰ってきたのは1人だけじゃないよ?」

「シアもお帰り。大変じゃなかった?」

「全然。乗ってただけだし」

「うん。あ、ニーネちゃんただいま!」

「おかえり。それと、お疲れ様」


 翌日、バーグナー艦長が言った通りクリスとシアが機体ごと合流した。スパイダーの展望デッキで待ち合わせていた4人の喜びは計り知れない。

 輸送艦はハワイからの強行軍だったそうだが、乗っていただけの彼女達に疲労は見えないかった。


「ねえメイ、レックス達は?」

「力仕事に駆り出されてるよ。何か、細かい物があるんだって」

「あ、そうなんだ」

「食料品を厨房に運ぶ、とかかな」

「そうかもね。手伝ってみる?」

「ううん。任せちゃえば良いよね?」

「いいよいいよ。あたし達、女の子だし」

「そうしようよ」


 力仕事をさせられている3人がこれを聞けば、都合の良いことだけを言うな、と怒るかもしれない。

 だが、この場にはいない。それが全てだった。


「それにしても……分けちゃってるんだね」

「うん。どこもこんな感じだよ」

「嫌う人が多いからね、どっちにも。何でそんなにこだわるんだか」

「慣習的には、武装法務隊の方がイレギュラーになっちゃうんだけど」

「兄様もどうにかすればいいのに」

「無理なんじゃない?出来るんだったらとっくにやってるでしょ」

「だよね……」


 そんな彼女達が見つめている先、スパイダーの近くには2隻の輸送艦がいる。

 片方は軍の輸送艦で、これにウリエルとラグエルが載せられていた。他にもミサイル、交換パーツ、水、食料などが渡されている。

 そして、今は接舷していないもう一方が武装法務隊の輸送艦だ。


「武装法務隊のスケジュールは……もう少しでSAGA(サーガ)を載せるみたいね」

「軍の方が終わってから?」

「そうみたい。搬入口はそこだから」

「あのハッチ?」

「うん。横付けしてくるみたいだよ」

「そう。じゃあ、このまま見ようよ」

「そうしよ。すぐそこに自販機もあるんだし」

「あ、近づいてきたよ」

「あ、やっと?」

「遅かったね」

「隊長は誰になったかな?」


 4人とも見物を続け、接近してくる船を見つめる。

 だから輸送艦が中の荷物を吐き出した時、それに気がついた。


「あれ?」


 武装法務隊はその特異性から、エースパイロットに対する専用カスタマイズが一般化している。それはチューニングだけでなく、専用武装の開発を行うなど、金のかかることだ。

 なので上が何と言おうと、専用機はあまり増やせない。エースでなければ費用対効果が薄いからだ。

 そのため……


「専用機が……2機?」


 1ヶ中隊に2機も専用機タイプが配属されるのは異例なことだった。

 前例があるとはいえ、それは式典でのこと。実戦配備ではもしかしたら初めてかもしれない。


「え、何で……?」

「黒百合の前で交差する剣……っことは、アルマ・キュルト中佐?そんな大物が……」

「もう1機は盾と剣と、あと天使?そんなのあったっけ?」

「無いはずだけど……新しい人かも」

「それなら……ねえメイ、格納庫に行ってみない?」

「え?」

「挨拶は必要でしょ。一応、こっちのエースはメイなんだし」

「でも、キュルトさんは……」

「苦手だっけ?でもさ、必要じゃない?」

「うん……そうだね」


 その後、4人は展望デッキから格納庫の上部デッキへ移動した。

 というのも、メイが未だに嫌がっていたためだ。


「す、すぐ近くはちょっと……」

「メイ、今さら逃げないの」

「だってあの人何だか怖いんだもん」

「ボク達の方も目立っちゃってるもんね」

「仕方ないんじゃない?一応、ワンオフだから」

「それでも、でしょ」

「だって……」


 ある意味では、エンジェルシリーズは専用機と言っても過言ではない。量産試験や武装テストなどの面があるとはいえ、唯一であることは確かなのだから。

 というか、既存機の改修型でしかないジャッジメント専用機タイプに比べ、完全新型のウリエルとラグエルの方が注目度は高かった。武装法務隊ではなく軍所属というのも、そこに加えられるかもしれない。

 とはいえあの人混みに混ざろうと思うほど、というか祭り上げられたいと思うほど、偶像(アイドル)になりたいわけではない。

 だがそんなことをしている間に、残念ながらメイの抵抗は無効化された。


「だってじゃなくて、メイちゃん。もうここまで来ちゃったんだから」

「でも……」

「ねえメイ、こっち来てるよ」

「え⁉︎」

「ええ、来ましたよ。久しぶりですね、メイルディーア・ハイシェルト。いえ、ハイシェルト少尉と呼んだ方が良いですか」


 上部デッキへ後から入ってきた、20代半ばくらいの女性士官によって。一見すれば温和そうな人物だが、内面は冷徹な女帝であることをメイは知っている。

 そしてそんな彼女が目の前に来たことでメイも覚悟を決めたのか、目の色を変えた。壁を作る方向に。


「……お久しぶりです、アルマ・キュルトさん。ここではキュルト中佐とお呼びした方が良いでしょうか?」

「そうですね、その方が好ましいでしょう」

「ではキュルト中佐、小官に対し何用でしょうか」


 メイはキュルト中佐を嫌っているわけではないが、非常に苦手としていた。

 何もかも冷徹に切り捨てることのできる彼女は、甘いところの多いメイにとって非情にしか見えない。過去のこともあり、全ての人間を敵か味方かの2つに分けるとすれば、ほぼ確実に敵と認定する相手だ。

 そして、キュルト中佐もそれは織り込み済みだった。


「相変わらずですね。まあ、私にも至らぬ点があるからなのでしょうけど」

「……それでは、帰ってもよろしいでしょうか」

「いいえ、それは許可しません。話がありますから」

「その命令に服する義務はありません、キュルト中佐。貴女と私は所属組織が違います」

「大人からの忠告は素直に受け取った方が良いですよ、ハイシェルト少尉。それに今の私には、帝国軍としての階級も与えられています」

「……それも皇太子殿下の指示ですか?」

「ええ、もちろんそうです」

「分かりました」


 どうやら、命令系統についての問題は一切無いようだ。おかげで多少は警戒を弱められる。

 とはいえ、安心しきれないこともあるのだが。


「作戦については艦長に任せていますが、貴女達と組むことが多いでしょう。よろしくお願いしますよ」

「連携を乱されるだけなのでやめてください」

「抜け抜けと言いますね」

「事実です。それとも、2つも世代が上の機体と同格だと思うのですか?キュルト中佐は」

「貴女程度が私より腕が良いと言うのですか?ハイシェルト少尉?」


 やはりメイの予想通り、キュルト中佐達の目的はルシファーらしい。軍が手を焼いている相手を武装法務隊が討つことで、力を示したいのだろう。

 それは、軍としては受け入れがたいことだ。それにメイには、ルシファーの相手は自分がする、という独占欲もある。

 前者はどうでも良いが、後者の理由で受け入れられなかった。


「まあいいです。その辺りの判断は艦長に任せましょう。恐らく、私になるでしょうけど」

「その認識は改めてください。ルシファーに勝てるとすれば、私だけです」

「必要以上に自身を持つのは傲慢ですよ。貴女は2回も負けているのでしょう」

「専用機だとしても、第10世代のジャッジメントでルシファーに勝てると思う方が傲慢です」

「強情ですね。では、私は帰りましょう。ですが、彼女には会っておきなさい」

「彼女……?」


 その言葉に疑問を持った瞬間、衝撃が腹部を襲った。咄嗟に踏ん張ったため倒れはしなかったが、驚いたことに変わりはない。

 キュルト中佐と話をするために顔を上に向けていた影響で、襲撃者にはそれまで気がついていなかった。


「せんぱーい!」

「うわっ!って、ミーフェル⁉︎」

「はい先輩!お久しぶりです!」

「久しぶり……だけど何でここに?」

「殿下のおかげです!先輩と同じ早期卒業にしてもらいました!」

「殿下って……もしかして皇太子殿下?」

「はい!」


 武装法務隊の権限を強めたのは現在の帝国皇太子で、最も強い後援者でもある。そんな人物が関わるということは、ミーフェルは武装法務隊として補充されたということになる。

 なお、キュルト中佐は既に上部デッキを去っていて、ここにいるのは5人だけ。そして、こうなったミーフェルが話を聞くのはメイだけだ。


「だから専用機を貰えたの?」

「あれ、何で知ってるんですか?」

「勘だけど……」

「流石です!」

「相変わらずだね……」


 相変わらずの反応に若干呆れつつも、少し考え込んだ。

 自国の皇太子とはいえ、目の前の後輩がそんな人物と親しい関係にあるとは思ってもいなかったためである。

 なお、自分が第1皇女マイリアととても親しい間柄であることは忘れている。


「1年も早くって異例だよ?それにパーソナルマークまで貰えるって……腕は良かったけど、そこまでだった?」

「全然です。先輩と一緒にいたいって頼んだのはわたしですけど、他は全部殿下が決められました。それに、先輩の方が凄いですよ。ワンオフ機なんですから!」

「え、そうかな?」

「そうです。だって学生なのに実力で専用機持ちになったんですよ?わたしみたいなコネじゃなくて」

「ありがと……でも、ミカエルって本当は試験機だから、ワンオフ機ってわけじゃないけど」

「テストパイロットってだけで凄いです!」

「そ、そっか」


 褒められて悪い気はしない。ただメイからすれば、ミーフェルの押しが強いところはどうにかしてほしい。

 ちなみに、メイ以外の3人は彼女達だけでおしゃべりをしている。そしてメイはそれを羨ましげに見ていた。

 会話の熱意に偏りがあると少し辛い。


「そういえばミーフェルのSAGA(サーガ)って、ジャッジメントにしては少し変わってたけど、どんなコンセプト?」

「アルマさんが近接型なので、サポートできるように射撃型にしました。先輩のミカエルもそうですから」

「そっか」

「でも、先輩の足を引っ張るかも……」

「あ、それは……ねえミーフェル、キュルト中佐に合わせて戦うるの?」


 今は先輩と後輩の再会をしていられるが、彼女達は軍人だ。そのため、戦場でどうするのかはメイも気になるところだった。

 キュルト中佐としていた話をミーフェルが聞いていたかは分からないが、忠告はするべきだろうとメイは考えていた。たとえ受け入れられなかったとしても。

 だが……


「はい。同じ部隊なので、そういう風に戦えと殿下に」

「それで、私と一緒に戦うの?」

「はい。先輩、良いですよね?」

「ダメ」

「え?」

「足を引っ張るというか……ジャッジメントだと、ルシファーには絶対に勝てないから」

「先輩……」

「ごめんね。でも、事実だから。キュルト中佐は信じてくれないけど……」

「分かりました」

「え?」


 そう頷かれ、メイは呆然とした。まさかこんな簡単に受け入れられるとは思っていなかったから。


「説得……はできるか分からないですけど、わたしもアルマさんに話してみます」

「え、嬉しいけど……それで良いの?」

「だって先輩が心配して言ってくれたことですから。わたし、先輩を信じてますから!」

「……ありがと」


 自分のことを信じてくれる。その信頼が嬉しくもあり、また苦しくもあった。

 彼女が心に浮かべる人物とは、信頼の仕方が違うのだから。


「あ、終わった?」

「いつもより時間かかって、ここもらいっ!」

「あ、やられた。まあ、ミーフェルだとね……代わりにここかな」

「クリスもシアもニーネも……私に全部押し付けて何やってるの?」

「ゲーム!」


 そういう意味じゃない、そう叫びかけた口を閉じつつ、メイは抗議の視線を向けた。

 いつの間に持ち込んでいたのだろうか。3人は投影型のゲーム機で遊んでいた。TRPGに似たものだ。


「まったく……それで、この後はどうするの?」

「どうしよっか?」

「これでそのまま遊んじゃわない?メイの部屋で」

「レックス達も呼べば、良い感じの人数になるし」

「あ、先輩ごめんなさい……これからまだ行かないといけない場所があるんです。アルマさんに言われてて……」

「そっか、じゃあまた後でね。私の部屋はこの番号だから、好きに来ていいよ」

「はい!ありがとうございます!」


 そうして勢いよく去っていったミーフェル。勢いがよすぎて壁に衝突しかけたが、そこをメイは見ていなかった。

 先に話しかけられていたからだ。


「メイ、良いの?」

「何が?」

「ミーフェルが武装法務隊に入ったんだったら、キュルト中佐と関わることが増えるかもしれないよ?」

「それは嫌だけど……ミーフェルは悪い子じゃないから」

「メイが良いならいいんだけど」

「ニーネ?どうしたの?」

「何でもないよ。けど……何だか、嫌な予感がしたから」


 その後4人は場所を移し、メイの部屋の前に集まる。

 それとほぼ同じタイミングで、レックス、トラン、アクトの3人が帰ってきた。


「っ、あ゛ー、疲れたなぁ……」

「アレ重すぎんじゃねぇか?」

「……周囲にはあの倍持っていた人もいた。あのあたりは慣れだろうが」

「おかえり。やっぱり大変だったんだね」

「たり前だろ。無茶苦茶数が多いんだぜ?」

「オレらだけじゃ足りねぇよなぁ。人で足りなさすぎだっての」

「だってボク達女の子だもん」

「力仕事なんてさせないでよ」

「うわ、酷ぇこと言うなこいつ。都合の良い時ばっかりよ」

「なに?文句でもあるわけ?」

「手伝ってた連中に男も女もねぇんだよ」

「もう、2人とも。それで今日は何で動員されたの?いつもと違うよね?」

「……食堂への搬入口が故障した、と言っていたな」

「あ、そうなんだ。お疲れ様」

「……疲れはした。だが、あの2人も口ほど疲れてはいない」

「分かってるよ。ただの遊びだもんね」


 そんなじゃれ合いを挟みつつ、7人で部屋に入る。


「さてと、ゲームでもやらない?ちょうど集まれたんだし」

「うん、やるやる!」

「やろうぜ」

「何やるんだ?」

「同じので良いんじゃない?とりあえずはさ」

「賛成。3人だけで遊んでたもんね。私に押し付けて」

「メイちゃん、その……怒ってる?」

「少し」


 なおアクションゲームになった途端、メイの動きが激しくなったことをここに記しておく。












・アルマ・キュルト専用ジャッジメント

 近接戦向けのチューニングとカスタマイズを受けたジャッジメント。

 パーソナルマークは「黒百合の前で交差する剣」。日本系パルチザンからは「帝国の悪魔」と呼ばれている。

武装

___ビームサブマシンガン×2

___小盾×2

___手持ち式ビームソード×2

___固定式ビームソード×2

___ビームショートソード×8


・ミーフェル・シュタットフェルト専用ジャッジメント

 遠距離戦向けのチューニングとカスタマイズを受けたジャッジメント。

 パーソナルマークは「盾と剣を構えた天使」。

武装

___ビームライフル×2

___高出力ビーム砲×2

___ランチャーシールド×2

___6連装小型ミサイル発射管×2

___8連装小型ミサイル発射管×2

___ビームマシンガン×2

___ビームソード×2

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