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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第16話「特務軍団」前編

 



「諸君らも既に聞いているだろうが、アラスカ中央基地が攻撃を受け、甚大な被害を……いや、壊滅した」


 メイが噂を聞いた翌日。ブリーフィングルームに集められたパイロット達へ、アルティス副長から正式にアラスカ中央基地の壊滅が発表された。

 どうやら、軍上層部は被害が大きすぎて隠しきれないと判断、軍内に限ってだが即時開示を決定したらしい。

 実際、それほどのことが起きていた。


「アラスカ中央基地に配備されていたSAGA(サーガ)は1045機。そのうち、撃破と大破が872機、中破と小破が143機だ。艦艇は飛行艦50隻と海上艦20隻全てが撃沈。基地施設の6割が損壊し司令部要員は9割が死傷。文句のつけようのない大敗だな」


 アラスカ中央基地が被った被害は凛斗達の予想より大きく、基地機能は完全消滅したと言っても過言ではない。

 そして、それによる副次効果も生まれていた。


「現在、アラスカの他の基地が基地機能を代行している。また、ハワイ基地に出向していたアラスカ中央基地所属機は急ぎ帰還させるそうだ。だが本土から増援が来るまでの間、太平洋の防衛能力は確実に落ちる」


 帝国軍はハワイ基地でも大損害を受けたばかり。さらにそれがキッカケとなったのか、反帝国パルチザンの活動も活発化しており、大なり小なり被害が出ている。

 環太平洋エリアの帝国軍戦力は低下、行動の自由度もかなり少なくなっていた。


「そして、この攻撃を行ったのは明けの明星との情報だ。エアーズとアクアだけではなく、ルシファー、サタン、リヴィアタンの3機も確認されている。推察するに、前回の戦闘はアラスカへ行こうとする連中の頭を抑える形となったために発生したと考えられる」


 そしてこの結果を出すためだと考えれば、あの戦闘の理由も理解できた。

 今さらどうこうできる情報でもないが。


「戦法は奇襲、教科書に載りそうなほど鮮やかなものだ。直掩機を排除した直後に全てのハンガーと防衛兵器へミサイル攻撃、そうして生み出した混乱に乗じて戦果を拡大させた。まったく、見事なものだ」


 当人達にとって綱渡りでも、他者から見れば違うこともある。

 特に大損害を被った帝国軍からすれば、普通に考えて過小評価できる相手ではない。


「敵機総数は混乱のため正確には分からないが、概ね30から45の間だと推定されている。いくらか損傷は与えられたようだが、撃墜は確認されていない」


 数の差は圧倒的だった。奇襲という点を除けば、負ける理由など存在しない。

 だからこそこれは異常であり、また当然の結果でもある。


「不甲斐ないと思うかもしれないが、これが現実だ。同時に戦場に存在することができた我が軍のSAGA(サーガ)は最大でも61機、質も含めて常に劣勢であったそうだ」


 戦闘序盤で指揮系統に大損害を受けた結果、帝国軍の抵抗は疎らなものとなるしかなかった。

 中隊編制で戦えた部隊はほとんどない。それどころか、エレメント(2機編隊)を作れなかった機体すら多いのだ。

 機体性能、およびパイロットの技量で優越する明けの明星側が有利にならない理由がない。


「この戦法は最近の日本系パルチザンのものと類似している。この辺りも彼らの連携能力の高さを示したものだと言えるだろう。だが明けの明星はデーモンシリーズを囮として用いることで、より戦果をあげたようだ。また実行者は不明だが、アラスカ中央基地の北部にあった物資保管庫群が内部からの爆破により壊滅した。軍団規模の物資の喪失だ。大陸戦線にすら支障が出るだろう」


 アラスカ中央基地は基幹基地の1つ、集積された物資の数は膨大だった。具体的に言うと、全ての日本系パルチザンが1年で使う物資を合計したものより少し多いほどである。

 現在の大陸戦線で使われている物資はその十数倍になるが、影響が出ないはずもない。


「理解しているだろうが、明けの明星は厄介な敵だ。遺憾ながら、我が艦でも侮って返り討ちにあった者も多い。改めて忠告する、侮るな。ここまでで何か質問は?」


 総じて言えば、結論は変わらなかった。明けの明星を侮ると命に関わる、それを共通認識にしなければならない。

 それが前線だけだとしても、広めきれるのかという問題はあるが。


「具体的な補充計画はありますか?」

「決まってはいるようだが、こちらに情報は来ていない。我々に関係が無いためだろう」

「今後の計画は」

「それはこの後話す」

「敵母艦の座標は?」

「追跡できた部隊が1隊だけいたようだが、10分も経たずに音信不通となったらしい。返り討ちにあったと考えられる」


 大半の情報が開示され、なおかつそれが衝撃的なものだったためだろう。質問は普段より少なめだった。

 いくら噂を聞いていても、動揺しない人間は少ないようだ。


「もう質問はないな?では次の話に移る。艦長、お願いします」

「はいよ。ま、これは仕方ないね」


 そう言って席を立ち、前に出てきたバーグナー艦長。

 彼女はいつも通り電子タバコを咥えているが、今回はそれに不敵な笑みが加えられていた。


「今回の件で明けの明星を危険視する人が増えてね。ハワイの1回だけじゃない、次はここに来るかもしれないって理由だけど、それでも進歩と言えるかね。だもんで、ちょっと編制が変わることになったよ」

「編制が?」

「そう。対明けの明星用の新軍団に編入されることになったよ。とりあえず、特務軍団とでも呼んどこうかね」


 またこれと同時に、艦長の後ろにあるディスプレイには編制表らしきものが映し出された。

 だが、その数は明らかに少ない。追加のSAGA(サーガ)はスパイダー艦載機とほぼ同数だ。


「特務軍団はこのスパイダーの他にハリケーン級とアトラス級が2隻ずつ、護衛艦も定数通り配備されることになってる。母港はこのグアム基地だ。まあ、とりあえずで集められた戦力だよ。どうにも……月の上層部は現状を理解できていないのかね」


 どうやら上層部は明けの明星について、不意打ちで駐機状態のSAGA(サーガ)を破壊したのみ、正面から数で押せば負けることはないと考えているようだ。

 確かにSAGA(サーガ)は簡単に量産できる。だが基地は壊滅、パイロットや整備兵も大半が死傷しており、その損害はSAGA(サーガ)の比ではない。新しくパイロットや整備兵を増やすには、年単位の教育が必要なのだから。

 むしろ基地の爆破を過大評価し、武装法務隊の歩兵部隊をいくつもアラスカに送っているほどだ。確かにアラスカにもパルチザンはいるが、そして爆破したのは彼らだが、脅威度評価を間違えている。


「そんなわけだから、しばらくは派手に動いたりはできないね。戦力が集まるまでは哨戒程度だ」


 とはいえ、別命があるまでは今までと変わらない。上から変な圧力がかからなかっただけマシだろう。

 今の戦力では軍事的に動けず、ここでは言っていないが政治的にも派手には動けないため、当然の結果ではあるが。


「指揮官はガリウス・グラウデン少将閣下になるよ。今は東京湾港湾基地にいるんだけれど……実は通信を繋いでるから、挨拶でもしてもらおうかね」


 ただし、隠れて準備することは可能だったようだ。そして上司が見ていたと言われて、驚かない人間はほぼいない。

 多少どころではない緊張が走った中でディスプレイに映されたのは、バーグナー艦長より少し年上だろう、壮年期を少し過ぎたくらいの男性だ。


『これ。急に話を振るでない、バーグナー艦長。さて皆の者、ワシが軍団長になったガリウス・グラウデンだ。急な話で悪いが、よろしく頼むぞ』


 だが、そんな彼の自己紹介は概ね好意的に受け止められた。目の前にいる人物と似たノリだからかもしれない。


『それでバーグナー艦長、挨拶だけが目的かな?』

「ま、そんなところだね。それと、グラウデン少将。そっちにいるのが例のミカエルのパイロット、メイルディーア・ハイシェルト少尉だ。嬢ちゃん?」

「は、はい!よろしくお願いします」

『ふむ、君が例の……なるほど、真っ直ぐな良い瞳だ。一瞬とはいえ疑って悪かった』

「え、あ、それは……」

「グラウデン少将、ここには他の部下達もいるんだけどねぇ。気にしてくれないかい?」

『む、そうか?ワシはいつもこうなのだが』

「ったく」

『さて、ワシはまだ忙しいのでな。貴艦のことはバーグナー艦長に一任する。では、また後日会おう』


 そう言って通信を切ったグラウデン少将。見ているパイロット達が敬礼する暇もなかった。

 流石のこれには呆れる者が大半だが……バーグナー艦長は少ない例外の1人だ。


「と、まあこんな人だね。パイロットの扱いはあたしとあんまし変わらないよ。気の良い人さ」

「艦長……」

「っと、関係ないことが多すぎたかい?なら業務連絡でもしようかね。明日、補充戦力としてエンジェルシリーズの2機、それと……ジャッジメントが1ヶ中隊乗ることになってるよ」

「ジャッジメント⁉︎」

「スパイダーは軍の艦だぞ……」


 ジャッジメント。それは武装法務隊専用のSAGA(サーガ)で、軍で使用している機体よりも性能が高い。それだけでも、軍人に嫌がられる理由になる。

 また軍人と武装法務隊員が互いの権限やら何やらでいがみ合うことは多く、そうでなくとも武装法務隊に首を突っ込まれることを嫌う軍人は多かった。


「そう慌てなさんな」

「ですが艦長!」

「少なくとも、今回はわたしの完全な指揮下に入るんだ。独断専行は許さないから、好き勝手にやらせはしないよ」

「それなら……」

「まだマシか」

「話はこんなところだ。解散しな。っと、嬢ちゃん達は残りなよ」


 そのためブリーフィングルームから人が去っていく中、メイ達5人と艦長だけが残る。


「さて嬢ちゃん、もう2人の訓練はどんな感じだい?」

「問題ありません。ご存知の通り昨日は模擬戦をしましたが、私達とも連携はできていました。十分、戦力になると思います」

「そうかい。そっちのは?」

「大丈夫だろ。オレやレックスと引き分けになってるぜ」

「ちょっとトラン」

「構わないよ。わたしもそんなに気にする方じゃないからね。言ってなかったかい?」

「すみ、じゃなくて、ありがとうございます。そうだ艦長、グラウデン少将閣下と親しげな話し方でしたけど、知り合いなんですか?」

「あー……ま、話たってどうってことのない情報か。グラウデン少将はわたしが中尉の時に直属の上司だったってのと……一応、元恋人でね」

「そうなんですか?」

「それだったら……」

「もう縁切れだよ。わたしもあいつも別の人と結婚して、子どももいる。仕事仲間として呑みに行ったことはあっても、よりを戻そうとしたことはないね」

「……なるほど」

「プライベートはこれでお終いだよ。他に質問はないかい?」

「はい、ありがとうございました」


 そう言われ、特に用事もないので、メイ達はブリーフィングルームを出た。バーグナー艦長も同様に部屋を出たが、その後の向きは逆だ。

 なので自分達の部屋の方へ向かっていた時、ふと思いついたようにニーネが口を開いた。


「ねえメイ」

「なに?」

「そうえばさ、化粧水とかちゃんと使ってる?肌荒れてない?」

「え、あ……」

「忘れてたわたしも悪いけど、メイも気にしないとダメでしょ。女の子なんだから」

「うん……ごめん」

「まったく。それだ、どれだけ忘れてた?」

「……ずっと、かな」

「それって1ヶ月?それだけ忘れてるのに荒れてるように見えないのは凄いけど……」

「少しはやってたから……」


 癖になっていたものもあり、完全にゼロというわけではない。ただ、9割ほど省略していたのは確かだ。

 見た目がほとんど変わらないのはアレだが、ニーネが心配するのも当然だった。実際、よく見れば荒れなどを見つけることができる。


「じゃあさ」


 2人が立ち止まったそこはちょうど、ニーネの部屋の前。


「わたしがやろっか」


 そのため、彼女がそう言ったのも当人としては当然のことだった。ここ最近のことで、メイの自己管理は疑問を持たれているのだから。

 ちなみに、この話題になった瞬間にレックス、トラン、アクトの3人は逃げた。なので周囲にメイの味方はいない。


「え?」

「大丈夫。わたしもちょっと上達したから」

「ちょ、ちょっとニーネ?」

「ほら、入って入って」


 そのため抗いきれず、メイは背中を押されて部屋に入る。そしてその様子に、同室の女性整備兵が驚いていた。

 そんな彼女に対し、メイは希望を見つけたように見るが、ニーネもまた運が良いとばかりに見ている。そして動くのはニーネの方が早かった。


「あ、あの……!」

「ちょうどよかった、キルヒさん」

「ん?なに?」

「この子が化粧水をずっと忘れ……」

「よし来た任せなさい!」

「え……ちょっと待ってこの人大丈夫⁉︎」

「大丈夫。腕は確かだから」

「他は?」

「えっと……大丈夫、多分」

「不安になるんだけど……」

「さあさあ、座って座って」

「ひっ、助けて……うわ⁉︎」


 そうして、メイは半ば無理矢理ベッドに座らされ、複数種類の化粧水で綺麗に磨き上げられた。

 いや、それだけで済めばまだ良かった。だが……気に入られたのか、いきなりエステが始まり、さらにメイクまでされた。

 その結果……


「うわ、すご……」

「凄い……」

「素材が良すぎるっていうのも考えものねー」


 ちなみに、全部合わせても2時間はかかっていない、その程度の簡単なコースだったが……元通りというか、かなり向上した。

 女性整備兵のキルヒが言うには、素材が良かったらしい。


「でも渾身の出来。うん、いい感じ」

「凄い綺麗になってるよ、メイ」

「ニーネ、ありがと。でも、凄い上手ですね」

「キルヒさん、こういうの上手だから。わたしもメイクとか時々教わってるし」

「私もしようかな……?」

生徒(実験台)が増えるのは大歓迎だよ!」

「……何か変なセリフが聞こえた気がする」


 そんなことが頭をよぎっても、時々受けさせてほしいと言うほど、メイも驚き、なおかつ感動していた。

 メイがそんな反応を返している間にニーネが紅茶を淹れると、それに呼応してキルヒが机の棚からお菓子を出てきて、この場は女子会場に早変わりする。


「さてと、何を話します?」

「定番?恋バナでしょ。まずはそっちの、メイだっけ、聞かせてくれない?」

「え、わ、私、ですか?」

「そうそう」

「メイには心に決めた相手がいるよねー」

「ちょっとニーネ!」

「へぇ〜、気になるなー」

「あ、いや、その……」


 最終的に娯楽の種を提供する羽目になってしまい、顔を真っ赤にしたメイが見られたのだが、それはまた別の話。












・ジャッジメント

SG65-T08E全高12.0m。

 バトラーと同時期に開発された武装法務隊部隊専用機で、エレメンタルシリーズの特化型より高性能な第10世代SAGA(サーガ)

 高度な大気圏飛行と高い水中機動性を兼ね備えており、武装を変えるだけで宇宙・大気中・水中で自由に戦闘可能。

 また、人によっては専用のカスタマイズ(チューニング+武装変更)が許可される。

空中戦用武装

___ビームライフル×1

___ビームマシンガン×1

___迎撃ビームバルカン×2

___ビームランス×1

___ビームソード×2

___ランチャーシールド×1

___6連装小型ミサイル発射管×1

___8連装小型ミサイル発射管×2

水中戦用武装

___メーザーライフル×2

___迎撃ビームバルカン×2

___メーザーランス×1

___メーザーソード×2

___ランチャーシールド×1

___4連装小型魚雷発射管×1

___6連装小型魚雷発射管×2

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