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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第14話「天使の願い」前編

 



「あのさ、メイ?大丈夫?」

「おいメイ、聞こえてるか?」

「なあ、これもうどうにかした方が良いんじゃねぇか?」

「……今度はどうした?」


 4人は今、ガントリーの上で悩んでいた。何故なら……


「おーい、メイー、早く出てきてー」


 メイが丸1日部屋で考え込んだ後、ミカエルのコックピットの中に引きこもってしまったからだ。


「駄目かぁ……」

「どうすんだよ、これ」

「……こじ開けるか?」


 それがもう既に3日目の朝、合計約50時間。メイはシャワーと花摘みの時間以外、常にミカエルの中にいる。食事も全て、あの(・・)レーションで済ませているほどだ。

 整備兵の人によると、ずっとシミュレーターを使用しているらしい。止まっている時間を数えると、1日に5,6時間ほどは寝ているようだ。実際のシミュレーション時間は40時間といったところか。

 体力的な問題がないことだけは分かっているが……それでも、心配なものは心配だった。


『それでいいでしょ。他になさそうだし』

『やっちゃって。メイちゃんのためにも』


 クリスとシアも電話を介して参加している。というか、3日間相談や声かけなどを行い、普通の行為では意味がないことを知っている。

 なので、2人は強制執行にGOサインを出した。


「じゃあ、お願いします!」

「おうよ!嬢ちゃん、恨むんじゃねぇぞ」


 既に話は通してある。

 整備兵の権限でシミュレーターは強制的にシャットダウンされ、コックピットハッチが開かれた。


「……え?」

「引っ張り出して!」

「分かってるぜ」

「おうよ」

「……了解」

「え、ええ⁉︎」

「うがっ⁉︎」


 そして男3人がかりでメイをコックピットから引きずり出す。

 なお、前科のあるトランだけはビンタをくらっていたりする。


「何するの!」

『ねえメイちゃん、何してたの?』

「クリス……その、心配かけちゃった?」

『当然』

「うっ、ごめん……」

「じゃ、部屋まで連行するから」

「おうよ」

「……了解だ」

「え、ちょっと待っ!」


 メイは少し抵抗したが、そのままズリズリと引きずられていった。

 まるで捕縛された宇宙人のような光景だ。地球生まれではない、という意味ならその通りだが。


「自分で歩けるから!」

「そう言われても、ね」

『コックピットに戻っちゃうでしょ?』

『それだと意味ないし』

「うー……!」

「……蹴られないか?」

「大丈夫だろ、多分」


 そうしてやってきたのはメイの部屋だ。この部屋は中に人がいない場合に限り、クリス、シア、ニーネの3人は許可なしでも鍵を開けられる。

 またプラーベートスペースはカーテンで仕切られているため、男が入っても取り敢えずの問題はない。広げている物は少ないが、念のためメイが取り付けたものだ。


「ねえメイ、また急にどうしたの?」

「それは……話さないとダメだよね……」

「みんなの前で、ね?」


 そしてニーネの手で、パイロットスーツから私服へと着替えさせられた。若干着せ替え人形風の扱いも受けたが、他のことが頭を埋めている今のメイには気にする余裕がない。

 そういうわけで少し時間がかかったが着替えも終わり、外にいた男達は部屋に入る。


「みんな、その……心配かけて、ごめんなさい」


 で、開口1番に謝った。


「問題ないぜ。この間よりは楽だったからよ」

「オレらに被害があったわけじゃねぇからな」

「……心配したことは事実だが」

『メイっていつも極端だしね』

「でも、前回と今回とで変わりすぎでしょ」

『メイちゃん、何があったの?』

「だってリントが……リントが生きてるって、言われたから」


 その台詞を聞いて、全員が納得の表情を浮かべる。メイならばこうなると、理解できているから。

 だが、同時に疑問も浮かんだ。


「けどなぁ、それ信じられるか?」

「……確かに。敵が言ったことだ」

「ただの嘘の可能性もあるぜ?」

「でも、でもっ……!」

「あー、メイは頑張ってるよ。大丈夫、私達は分かってるから」

『うんうん。凄く頑張ってるのが分かるもん』

『そうじゃないと何十時間も続けられないし。それに比べて……まったく、男どもは』

「うっ……」

「げっ……」

「……すまない」


 誰かをからかいつつも、責めることなく笑い合う。

 そういったいつもと同じやり取りのおかげで、メイも少し笑顔になった。


『理由は分かったけど、無理しちゃダメなんだからね?』

「うん、分かった。もうやり過ぎないから」

「ちゃんと守ってよ?また引っ張り出すのって大変だから」

『メイはアレだし、ちゃんと守るか微妙じゃない?』

「ちょっとシア!」


 そんなことを言われつつも、笑顔は絶えない。いつも通りだ。


「それで、この後はどうすんだ?」

「あ、どうしよっか……」

「そういえば、メイのこと以外何も考えてなかったね……」

『じゃあさ、こっちとシミュレーター繋いでみようよ』

「え、できるの?」

『そうらしいね』

「……6000km以上離れているぞ」

『基地にいるならできるんだって。実験は終わってるって言ってたよ』

『だから、2対2でやってみない?』

「なるほど」

「良いんじゃねぇか?」

「艦長の許可はいるはずだし……でも、良いかも」


 現在、スパイダーは補給と報告のためにグアム基地に寄港している。そのためハワイにいる2人とも通信しやすいのだが、どうやら大容量機密通信もできるそうだ。

 なのでメイは部屋から出ると艦長室へ向かい、バーグナー艦長から許可を貰ってから格納庫へ戻った。

 格納庫ではガブリエルとラファエルの前で整備兵が色々とやっている。どうやら接続に手間取っているようだが、顔を見るに難しい状態ではないらしい。

 画面の向こうの2人も同じ感じだ。


「どんな感じ?」

『良い感じかな』

「やれそうだぜ」

『もう少しだって』

「あとは向こうの腕次第じゃねぇか?」

『へえ、そういうこと言う?』

『シアちゃん、やっちゃおっか』

「おいトラン」

「いいじゃねぇか。本気の方が面白いんだからよ」

「まったく」

「……こいつは」

「頑張りすぎないでね?」


 そんな感じで待ち、準備が終わると4人はコックピットへ乗り込む。


『システムとの接続確認、と。上手く機動してるぜ』

『こっちもだ。問題ねぇぞ』

『あたしの方も問題なし』

『ボクも。いつでもいけるよ』

「こっちも大丈夫。オールグリーンだから」

「……シミュレーターシステム、全て正常だ」

「じゃあ、始めよっか」


 その言葉とほぼ同時にシミュレーターが起動、 SAGA(サーガ)4機の戦場が作られる。

 場所は海の上、所々に背の高い岩礁が存在する無人島地帯。どうやら、ハリケーン級飛行戦艦のカタパルトから発進する形のようだ。


『アレックス・アリースト、ガブリエル、行くぜ』

『トランファード・マックスレイ、ラファエル、出るぜ!』

『クリスティーナ・ハイディスタン、ウリエル、いっきまーす!』

『スティーシア・ファルゲンスト、ラグエル、行くよ!』


 そうして飛び立った4機のうち、新型2機の方が注目は強く……その特異性に目が向けられる。


「小さいね」

「……小さいな」

「6割って感じ?」

『そうだよ』

『小型化の試験機って話だし、そこはね』

「それじゃあ、やっぱり速いの?」

『うん。プラズマスラスターは無いけど、使ってないミカエルに負けないくらいだよ』

「……速いな」

「遅いね」

『ミカエルと比べたら遅いけど、十分速いって』

「そう?」

『ダメだ、メイのやつ毒されてるぞ』

『いつの間にスピード狂になってんだよ』

「はぁ……メイ?」

『ねえメイちゃん、ワザとだよね?』

「うん」


 こんな風にふざけていても、この部隊のリーダーだ。

 まだ残っていた細かな設定を中心となって決め、開始の号令も彼女が行うことになった。


「それじゃあ……会敵まで60秒、時間到達と同時に射撃開始。これで良い?」

『いいぜ』

『もちろん』

『おうよ』

『いいよー』

「……こちらも問題ない」

「シミュレーター機能も、データ収集も、両方とも準備は終わってるからね」


 そしてこんな風に話していれば、すぐに時間が来る。


「開始!」

『行くぞ!』

『発射ぁ!』


 時間になった瞬間、ガブリエルとラファエルはミサイルを斉射した。

 機体サイズの影響で、ウリエルとラグエルより搭載数は多い。それを生かした戦い方だ。

 だか、当人達もそれくらいは理解している。


『シアちゃん!』

『もちろん!』


 ウリエルが両手に持つものは連射のできるビームサブマシンガン。ラグエルが両手に持つものは取り回しの良いビームカービンライフルで、盾の下にはビームマシンガンもある。副次効果だが、ミサイル迎撃に向いた武装だ。

 さらに小型機ゆえの機動性の高さ、加速性の良さを生かし、迎撃しきれなかったミサイルも全て回避する。

 そして反撃のミサイルも放った。


「……やはり、速いな」

「でも、ミカエルに追従するには足りないよね」

『おいメイ、無茶言ってんじゃねぇよ』

『ミカエルがおかしいんだぞ?』

「分かってるよ?でも、1人でずっと戦うのは……」

『メイちゃん、寂しがり屋だっけ?』

『そうでしょ。この間までのも半分は寂しいからだし』

「それに、甘えん坊って感じもあるよね」

「好き勝手言わないで!」


 だが、それらのミサイルはブリューナクとビームガトリングによって全て撃ち落とされる。

 両者がほぼ同時に放った第2波も全て迎撃され、戦闘は近接戦へ移行した。


『行け!』


 そのため、先に仕掛けたのはガブリエルだ。

 エネルギーチャージの完了したブリューナクを展開、銃剣型の射撃を援護に、突撃槍型にウリエルを狙わせた。

 近接戦向けとはいえ、ラグエルはウリエルを援護する機体、前線を張る機体から落とすのは間違いではない。

 だが……


『しっ!』

『やぁ!』


 ウリエルとラグエル、それぞれが投げたビームスローイングダガーが1基ずつ貫いた。


『マジか⁉︎』

「……凄いな」

『メイちゃんはできるよね?』

「先読みと投擲と……あれは流石に難しいかな。出来なくはないけど」

「メイでも難しいって……」

『マトモにやってらんねぇなぁ。おいレックス』

『おう、分かってるぜ』

『んじゃ、やっちまうか』


 ガブリエルは長剣型クルセイダーを、ラファエルは斧槍型クルセイダーを構え、突撃する。

 近接戦における最大威力はこの2機の方が上、それを生かせればレックスとトランの勝ちだ。相手も近接戦型である以上、勝機はデーモンシリーズの時より得やすい。

 だが逆に言えば、生かさせなければクリスとシアの勝ちになる。


『シアちゃん!』

『任せなさい!』


 そのため、ラファエルへラグエルのビームロケットアンカーが襲いかかった。

 これはガブリエルのロケットアンカーと同種のものだが、先端がビーム刃で覆われている点が異なる。完全な破壊用で、捕獲など考えていない。


『甘めぇよ!』

『このっ!』


 だがラファエルも呼んでいたようで、ビームロケットアンカーの片方は避けられ、片方は盾で防がれた。


「攻撃専用なんだ。距離は短そうだけど……」

「盾の下だし、同時使用は難しい?」

『そんな感じ。どうしても距離がね』

『だよな。俺も使い勝手には苦労してるぜ』

『だか、らっ!』


 そんなパイロット同士の会話中でも容赦はしない。

 ラグエルはガブリエルへ向け、ビームブーメランを投げつけた。


『っと』

『避けるな!』

『避けるぞ⁉︎』


 とはいえレックス自身もビームブーメランを使うため、軌道はおおむね分かっている。

 両方とも避け、ビームライフルの照準を合わせ……


『組み合わせるしかないね。クリス!』

『うん!』

『マジかっ⁉︎』


 急激な軌道変更をしたビームブーメランが翼端を掠めた。ビームブーメランをウリエルが掴み取り、再度投擲したためだ。

 ビームブーメランはビームで全体を覆うことで揚力を得て飛翔し、敵機を切り裂く。だが受け取る瞬間はビームを解除するため、設定を変えれば味方に渡すことも可能だ。

 クセが強いため、想定はされていなかったが。


「あんなこともできるんだね」

「……システム次第、と言うべきか?」

「連携次第でもあるんじゃない?」

『練習したもんね。だって……』

『オレを忘れんじゃねぇ!』

『うわっ⁉︎』


 会話に入れず苛立ったのか、ラファエルがビームガトリングをぶっ放しながら斧槍型クルセイダーで斬り込んできた。

 ウリエルは全て避け、ビームサブマシンガンで連射する。だが同時にラファエルは斬機斧槍を捨て、ビームソードを手に取り……


『ぐっ⁉︎』

『きゃ⁉︎』


 投擲。ラファエルの翼が穴だらけになるのと、ウリエルの頭部が貫かれるのはほぼ同時だった。

 メインスラスターが大破したラファエルは飛行不可能となり海に落ち、ウリエルもメインカメラがやられたため戦力外となる。


「そこまで。トランとクリスは終わりだよ」

『はーい』

『ちっ、やっぱり速ぇな』

『ちゃんと頭に当ててたのに』

「……トランの投擲は見事だった」

「クリスは惜しかったよ」

『うん……頑張れば避けれたよね?』

「多分ね」

「……恐らく」

「撃つ方ばっかり気にしてるから」

『こっちも見ろよ!』

『こっち見てよ!』


 反省会的なノリになっていたが、ガブリエルとラグエルはまだ戦闘中だ。

 注目されていない間に双方ともビームブーメランを失っていたが、戦闘続行に支障はない。


「あ、ごめんね。忘れてた」

『忘れるな!』

「だってクリスの方が可愛いし」

『ちょっと⁉︎』

「……すまない」


 死角を突くような行動を繰り返すブリューナクに対抗し、ラグエルは肩のビーム砲を使用した。

 このビーム砲はリヴィアタンと同じ埋め込み型だが、動きはアレより遅くなっている。そのためブリューナクを狙うには向かず、ガブリエルの移動先へ先に撃つように使われた。


『ウザいぞ!』

『だってそれが目的だし』


 当たりはしないが、牽制としては十分だ。その牽制で出来た隙をビームカービンライフルとビームマシンガンで突こうとする。

 ガブリエルも避けるためそう簡単に当たったりはしないが、動きを制限されていることに変わりはない。


『上手だね、シアちゃん』

「うん。上手く抑え込んでるね」

「……使いこなしているな」

『オレより習熟早ぇじゃねぇか』

「機体が合ってるのもありそうだけど、結構練習してたり?」

『そうそう。クリスと一緒にね。レックスみたいに無様な様子は見せたくないし』

『こいつ……食らえ!』

『ちっ』


 ガブリエルのロケットアンカーがラグエルの右腕、肘付近を捕まえた。


『離せっ!』

『離すか!』


 そのままロケットアンカーを巻き取り、長剣型クルセイダーを突き出す。たとえ左手でビームソードを抜いても、その前に切っ先が貫くだろう。

 だが左手を使うには猶予がある。


『だったら……』

『貫け!』

『これで!』


 ガブリエルのクルセイダーがラグエルのジェネレーターを貫く。

 それと同時に、ラグエルのビームロケットアンカーがガブリエルのコックピットを破壊した。


『引き分けかよ』

『惜しかったね』

『あー、もう少し早ければ勝ててたのに』

『どうせそれでも貫いてたぜ。逃したのは俺の方だろ』

「……そんなところだ」

「そんな感じ。シアは捕まる前にどうにかしないといけなかったかな?」

『あ、やっぱり?』

「ねえ2人とも、楽しかった?」

『まあね。色々と勉強にもなるし』

『うん。こういうのも面白いよ』

「そっか。じゃあ……」


 クリスとシアだけでなく、レックスとトランも同じようなものだった。AI相手だけでなく、1対1ばかりでなく、系統の違う機体を相手にすることで訓練に変化をつけられたのが良かったようだ。

 とはいえ、この後メイの言った台詞が……


「次は私も参加するね」

『『え⁉︎』』

『『げっ』』


 何人かの耳には死神の声に聞こえたのも、仕方のないことなのだろう。












・ウリエル

EXSG73-T04A

 全高8.0m、第12世代SAGA(サーガ)。エンジェルシリーズの4番機。シリーズの中でも特に高速格闘戦用の小型機。そのため加速度はミカエルに劣るものの、機動性はミカエル並み。

 なお小型機なので、コックピットは他のエンジェルシリーズより小さい。

 白地に薄い紫のカラーリング。

武装

___ビームサブマシンガン×2

___手持ち式ビームソード×2

___固定式ビームソード×2

___迎撃ビームバルカン×1

___ショルダーシールド×2

___ビームスローイングダガー×4

___4連装小型ミサイル発射管×2



・ラグエル

EXSG73-T05A

 全高9.5m、第12世代SAGA(サーガ)。エンジェルシリーズの5番機。ウリエル支援用の機体なため、エンジェルシリーズにしては火力が高い。速度や機動性もウリエルに次ぐレベル。

 小型機なのでウリエルほどではないが、コックピットは他のエンジェルシリーズより小さい。

 白地に薄い赤のカラーリング。

武装

___ビームカービンライフル×2

___ビームソード×4

___小型盾×2

___迎撃ビームバルカン×1

___ビームマシンガン×2

___ビームスローイングダガー×4

___ビームブーメラン×2

___ビームロケットアンカー×2

___ビーム砲×4

___6連装小型ミサイル発射管×2

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