表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/104

第12話「南国の風」後編

 



「マイリア、お願いね」

「メイこそ、もう二度と心配させないでくださいね」

「うっ……努力します」

「それで我慢しましょうか。ですが、無理をし続ける必要はありませんからね?」

「……うん」


 翌日、メイはドックの近くでマイリアとレグルトに見送られていた。そして引き継ぎではないが、そう声をかけた。

 卒業扱いではあったが特例なので、日程さえ合えば卒業式には出られる。だが卒業式の頃は海の上にいる予定であり、首席としての役目はマイリアが行うこととなった。

 だがどのみち、本来の首席が卒業式に出席することは無い。


「メイちゃん、頑張ってね」

「負けないでよ?」

「分かってる。クリスもシアも頑張って」

「うん」

「じゃ、そっちも任せたから」

「おうよ」

「むしろ俺らが任されるだろ」

「……言うな」

「実際そうだけど」


 また次の機体の準備のため、クリスとシアがハワイに残ることとなった。

 急ピッチで完成させたガブリエルとラファエルとは違い、次の2機は多少予定より遅れかけている。技術者達は遅れを取り戻そうと必死だ。

 まあこれも、最後の2機のプログラム調整に時間がかかると分かったからこそ取れる態勢でもあるのだが。


「じゃあもう行くね。時間ないから」

「そのようですね。それではレグルト、行きましょうか」

「そうだね。メイ、無理はしないでよ」

「分かってるって」

「じゃ、メイ。しっかりね」

「うん、大丈夫」

「メイちゃん、また落ち込んだらダメだよ?」

「ねえ……何で私ばっかり?」

「メイですから」

「メイだし」

「メイだから」

「メイちゃんだし」

「……泣くよ?」


 心配されているのか、からかわれているのか。まあ、おそらく両方だろうが、笑顔だったメイも若干本気で泣きかける。

 とはいえ、そんなことを気にするほど仲が浅いわけではない。4人に背を向けた5人はドックから橋を渡り、スパイダーの中へ入った。


「んじゃ、オレらは機体の方に行かねぇか?」

「だな。メイ、報告は頼んだぜ」

「大丈夫。多分、そんなに話はないけどね」

「……だとしても、なんだろう」

「メイも、そんなに油断してたら失敗しちゃうからね?」

「はーい。じゃあ行ってきます」


 ガブリエルとラファエルは昨日最終調整を終えてロールアウトしたばかり、最低限の試験飛行までしか行われていない。戦力として数えることは可能だが試験回数が足りず、パイロットに合わせた調整も必要だ。

 というわけで今日は個別の調整、明日と明後日は味方制海制空圏内で2機の実践テストが行われる予定だった。

 そのあたりの話もあり、調整を見学するニーネとアクトとも分かれ、メイは1人で艦長室へ向かう。


「艦長。メイルディーア・ハイシェルト少尉、入ります」

「来たかい。ちょうどいいねぇ」

「ちょうどいい、ですか?」

「そうだよ。ま、これを見れば分かるかね?」


 そんなことを言いつつ、さらに電子タバコを吸いつつではあるが、バーグナー艦長はメイへとあるタブレットを渡した。


「これって……スパイダーのSAGA(サーガ)追加配備数?艦長、これは……」

「嬢ちゃんはこの艦(スパイダー)の最高戦力だからね。このくらいはわたしにだってできるよ」

「ウンディーネを増やしたんですか?」

「前回の戦闘の結果、どうやら明けの明星が巨大潜水艦を持っていることは確定のようだからね。ラファエルも入ったから、都合も良いのさ」

「なるほど……でも、指揮を取る必要はありませんよね?」

「ま、そうなるね。というより、着任したばかりの少尉に取らせたらわたしが怒られるだろう?」

「それもそうですね」


 少尉という立場も、テストパイロットとしての勤務があったから特別に与えられたものだ。建前上はそうなっているし、指揮関連での功績は何もない。


「じゃあ嬢ちゃんなら、この部隊をどんな風に配置する?」

「え?」

「ただのお遊びだよ。それで、どうするんだい?」

「そうですね……では、バトラー4ヶ小隊とウンディーネ4ヶ小隊を8方位に配置、残りのバトラー6ヶ小隊、ウンディーネ4ヶ小隊、シルフィード5ヶ小隊、およびエンジェルシリーズは予備兵力にします」

「なるほど。だけど、それを常にってなると辛いものがあるんじゃないかい?」

「あっ……」

「指揮に関してはまだまだみたいだね。ま、最初はそんなものだよ。気にする必要は無い」

「はい。では、艦長ならどうされるつもりですか?」

「わたしかい?そうだねぇ……警戒はバトラー2ヶ小隊とウンディーネ2ヶ小隊、それとシルフィード1ヶ小隊にさせるかね。3交代と即応を含めれば、ちょうど良いくらいにならないかい?ジャガー級も4隻に増やしてもらえたんだからね」

「なるほど……勉強になります」

「精進することだよ、嬢ちゃん。努力に裏切られることはない」

「はい」

「よろしい。そうそう、もう退室して構わないよ。時間を取らせて悪かったね」

「了解です、失礼します」


 そう言われて艦長室を出たメイはスパイダーの上部甲板、展望デッキとも呼ばれる場所に来た。

 そして柵にもたれかかり、海を眺め……


「はぁ……」


 ため息を吐く。


「無理するのも……疲れちゃうね」


 あれから約1週間。立ち直りはしたが、完全に元通りになったわけではない。

 人前ではそう見せていただけだ。


「マイリアは分かってたみたいだけど……クリスとシアも気づいてたりするのかな……?」


 とはいえ、マイリアにはバレていたようだが。


「レックスとトラン、あとレグルトとアクトには気づかれてなくて……ニーネはどうなんだろう?」


 ただし最も離れた場所にいる1人を除いて、男衆は誰も気づいていない。残る女子3人も、気づいているかは微妙だ。


「隠さないと……心配させちゃうし……」


 その程度には、上手く隠せていた。


「頑張ってる、けど……ねぇ、リント……」


 だが1人になると時々、こんな感じで黄昏る。前のように負の連鎖に入ることはないが、思考のほとんどは意味を成していない。

 そして、だからなのだろう。接触するまで背後の人影に気づかなかったのは。


「なーにやってるんだか」

「はひっ⁉︎」


 触れられた瞬間、メイは飛び上がりそうなくらい驚いた。というか実際飛び上がった。

 まあ同性とはいえ、いきなり臀部を触られればそうなる。


「な、何するんですか!」

「黄昏られてるのが邪魔、ってところかな。それに、お姉さんの役割も果たさないといけないし」

「お姉さんってまたですか……レイカさん、そういうことは……」

「そんなのだと、ハワイで1人死んだのも当然なんて言われるよ」

「っ!」


 凛斗を侮辱されたように聞こえ、反射的に手が出てしまった。メイは後悔するも、体は止まらない。

 だが、それは受け止められた。凛斗のような技の鮮やかさは無い。だが堅実に、手のひらでメイの拳が受け止めている。


「仮定の話だから。そう怒らない」

「仮、定……そう、ですか……ごめんなさい」

「大丈夫。怒りで我を忘れた拳なんて勘定には入らないよ。それより……やっぱり、悩んでるか」

「……分かるんですか?」

「当然。最前線にいたこともあるからね。上官、同僚、部下の死を何度も見てきたし、死にかけたこともある。それに……」

「それに?」

「……妹をテロで亡くしててね。軍に入ったのも、そういう理由なんだけど」

「それ、は……」


 共感できる。できてしまう。

 似たようなことがあったから。


「ま、メイが気にすることじゃないよ。あたし個人の問題なんだ」

「でもレイカさん、私は……」

「でもまあ、この艦(ウチ)の最高戦力がそんなんなのは気が引けるね」

「うっ……ごめんなさい」

「っと、これはあたしの失言か。悪いね」


 戦闘能力的には元に戻ったと言えるが、安定性は無いと言える。

 それはメイも自覚しているため、少し落ち込んだ。


「メイ。それって、そんなに気にしないといけないことかい?」

「え?」

「必要以上に考えすぎってこと。メイ、君は自分が思ってるほど弱くはないよ。自信を持てないだけだ」

「それは……でも、私……」

「それに、死んだ後も想われるってのは幸せだろうけど、死者に縛られる生者は見たくないだろうね」

「そうかも、しれない、けど……でも、リントなら……」

「それにその彼のこと、友人以上に思ってるんだろう?ん?」

「え、いや……も、黙秘します」

「なら、そうしておこうか」


 からかわれて顔を赤くしつつ俯いたメイ、それを見て笑うキリシマ大尉。

 だが、言葉は続く。


「メイの今の状態はおかしい。それは確実に言える。自覚してるみたいだけど、心配する人は多い。あたしみたいに口を出す人も、だよ」

「レイカさん……」

「人によって、言うことは違うだろうね。ただ1つだけ言えるのは、君の人生を決めるのは君自身ってことだ。頑張りなさい」

「はい……ありがとうございます」

「独り言だよ。気にするかどうかは君次第、だからね」


 そう言って、キリシマ大尉は艦内へ戻っていった。

 メイは再度柵にもたれかかり、海と空を見つめる。


「考えすぎ、なのかな……」


 そして考えた。


「リント……私、どう見える?」


 凛斗のことを、彼との思い出を。


「酷い顔だよね……でも、私……」


 そして、自分のことを。


「でも、さ、リント……元気な方が良いって言ってくれる、よね……?」


 思い出の中で浮かべていた笑顔と今の顔、その違いについて考える。


「だから私、頑張るよ……頑張ればいいんだよね?」


 そして、凛斗とのことを。


「みんなに心配かけちゃったし……」


 そんな風に呟きつつ、メイも艦内へ戻っていく。


「謝るのは……やめておこうかな。恥ずかしいし」


 その顔は、数分前とは違うものだった。
















『おいレックス、そっちはどうなんだよ?』

『無理はないぞ。ただ、脳波測定にもう少しかかるらしいぜ』

「……少しエラーがあったらしい。トラン、そっちもだ」

『げっ、マジかよ』

「けど、予定からはあまり変わってないらしいよ。一応、時間は長めに取ってたらしいし」

『だよなぁ……あと何時間だ?』

「それは……」

「アクト、ニーネ、どんな感じ?」


 格納庫、運び込まれたガブリエルとラファエルに乗り込んだレックスとトランは、整備兵と協力して調整を進めていた。

 そしてその前にいるアクトとニーネへ、格納庫に来たメイが声をかける。


「あ、メイ。もう話は終わった?」

「うん。ちょっと艦長に遊ばれたけど、話はすぐに終わったよ。それで、どんな感じ?」

「……予定通り、らしい。残り2時間、といったところか」

「そっか。レックスもトランも頑張って」

『おう』

『ま、頑張るところなんかねぇけどなぁ』

「そうだけど。でも、必要なところもあるでしょ?」

「……1番は、時間だろう」

『それを言ってたら終わらないぜ?』

「でも、疲れるよね?」

『ま、それもそうか。ありがとよ』


 通信機を繋げているため、乗り込んだ2人とも会話ができる。

 外にいる3人にできることは無いが、それでも仲間としてそばに居たいという気持ちは強かった。


「それじゃあ、私もミカエルの方に行ってくるね」

「メイ?」

『ん?』

「……何かあったか?」

「ちょっと気になったことがあったから。少し調整かな」

「……なるほど」

『行っていいんじゃねぇか?どうせこっちじゃやることねぇだろ』

「うん、ありがと。行ってくるね」


 そう言葉をかけてから、いくつもの整備用機械が取り付いたミカエルへ向け、メイは歩いていく。


「よう嬢ちゃん、どうした?」

「いつも整備ありがとうございます。今、コックピットに入ってもいいですか?」

「おう、問題ないぞ。今は駆動系のチェック中だからよ」

「ありがとうございます」

「けどよ、2時間後に操縦系のチェックを始める予定だから、それまでには終わらせてくれよ」

「はい、分かりました」


 機体の前のソンソールで操作していた整備兵へ声をかけた後、メイはガントリーのエレベーターを経由してコックピットへ入った。


「ふぅ……」

『メイ、今いい?』

「ニーネ?うん、いいけど?」

『何をするつもり?調整って言ってたけど』

「昨日のシミュレーターで少し違和感があったから。そのあたりかな」

『そうなんだ。手伝いはいる?』

「ううん、大丈夫。簡単なところだから」

『それなら、もう大丈夫みたいだね』

「?調整の手伝いが要らないってだけだけど?」

『そうじゃないよ。リントのこと、あの後もずっと気にしてたんでしょ?いや、今もかな』

「……やっぱり、気づいてた?」

『うん。シアも気づいてたよ。クリスも……多分、薄々察してたんじゃない?』

「そっか……」

『でも、もう心配いらないみたいだし、安心したかな』

「……ありがと」

『随分と考え込んでたみたいだし。やっぱり、レイカさんに相談しておいてよかったね』

「え?」


 唐突にそんなことを言われ、メイの目は点になった。


『あれ?レイカさん、言ってなかった?』

「全然。でもそれって……?」

『あちゃ、やっちゃった。レイカさんに少し説明して、メイのことお願いしたんだけど……いや、だから成功したのかな?ねえメイ、話はいつくらいだった?』

「艦長との話が終わった後に……そっか、だからあんな風に話してたんだ」

『どこか変わってたりした?』

「少しだけ。ちょっと強めの言い方だったかな」

『そうなんだ。やっぱり、相談しておいて良かった』

「そうかも。みんなだとあんな風にはできないし」

『その言い方は酷いよ?』

「事実だもん。でも、ありがと」

『どういたしまして。友達だから当然だよ』

「そっか……ふふっ」

『メイ?何かあった?』

「ううん、何でもないよ」


 通信は音声のみ、目は相手を捉えていない。

 だから嬉しそうな顔は誰にも見えないのだが、メイは恥ずかしそうに俯いた。


「もう調整を始めるから、通信は切るね。ちょっと集中したいし」

『了解。じゃあ何かあったら……』

「もう大丈夫だよ」

『分かってるけど、一応ね。でも、無理はしないでよ』

「うん」


 そうしてメイは通信を切ると、特に意味もなく目の前の黒いメインモニターを見つめる。


「気づいちゃってたんだ……」


 隠しているつもりだったが、バレていた。かけられた言葉も、それを考えると意味は正反対になる。

 だが、それが嬉しいことであるのも事実だ。


「でも、良かった……言ってくれる友達がいるのって、言ってくれる人がいるのって、こんなに嬉しいことなんだね」


 メイのような立場だと、口先だけの者が友達を騙る場合もある。

 だからこそ、本音で心配してくれる者がいることが嬉しい。


「リント……私のこと、まだ心配?……でもみんながいるし、もう大丈夫だから」


 それが彼女の、まぎれもない本心だった。












・ウンディーネ

SG64-T02E

 全高12.3m。エレメンタルシリーズの1機で、帝国軍の第10世代主力水中戦用SAGA(サーガ)。メーザー兵器と魚雷は、ビーム兵器とミサイルに換装することも可能。

 バトラーを水中戦用にするよりは製造コストが低いため、エレメンタルシリーズの中で唯一主力として扱われている。

武装

___メーザーライフル×1

___メーザーソード×2

___実体盾×1

___迎撃ビームバルカン×1

___4連装小型魚雷発射管×2

追加武装

___手持ち式連装魚雷発射管

___運搬式大型魚雷発射管

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ