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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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23/104

第12話「南国の風」前編

 



「ん、美味しい」

「こっちも。良い感じ」

「あ、それちょうだい」

「もちろん」


 あれから約1週間後。

 ハワイの、それも真夏の強い日差しの中、クリスとシアとニーネの3人はアイスを食べながら雑談していた。


「でも、よくやるよね」

「レックスもトランも勝ち目なんてないのに」

「それ、頑張ってるのに可哀想だよ?」

「メイが凄いだけだけど」

「それを言ったら終わりでしょ」


 そして、そんな3人の視線の先には……


『まだまだー!』

『来んじゃ、っ⁉︎』

『トランッ!』

「……メイ、それでは2人の練習にならない」


 ラファエルが後ろから真っ二つにされ、ガブリエルもプラズマ収束砲で消し飛ばされる光景があった。もちろん、これはシミュレーターの映像だ。

 ガブリエルとラファエルは機体こそまだ最終調整中だが、シミュレーターは完成している。なのでパイロットの訓練に利用され、メイはミカエルで仮想敵役(アグレッサー)を担っていた。


『え、ダメ?』

「……当然だ。慣れなければ戦力にならない」

『でも、ミカエルに反応できないと連携もできないよ?』

『けどな、戦いにならないと訓練にはならないぞ』

『オレらもまだ慣れてねぇんだよ』

『えー、最低限はできてるよ?あとは経験だと思うけど?』

「……その経験が、だ……3人も何か言ってくれ」


 なおこれには、メイのストレス解消というのも多分に含まれている。

 同じエンジェルシリーズとはいえ、コスト無視の完全近接特化型SAGA(サーガ)であるミカエルを抑えるには、たった2機では足りなさすぎた。


「今のままで良いんじゃない?」

「どっちにしろ、アレと戦えないといけないんだから」

「それにメイちゃんも本気じゃないもん」

『だよね』

『味方がいねぇ……』

『どうすんだ……?』

「……自分は味方だ。だが……」

『そんなことより、早く再開するよ。時間は有限なんだから』

『了解』

『へーい』

「しっかりね」

「頑張れ〜」

「メイちゃん、やっちゃえ」

「……すまない」


 というわけで再度戦闘が行われる。舞台は変わらず海上、ガブリエルとラファエルの2機でミカエルに対峙した。

 なおラファエルは水中戦用機だが、設計段階で空中戦も想定されているため、問題は無い。


『私はいつでも良いよ』

『なら……』

『遠慮なく……』

『『行け!』』


 なのでタイミングを合わせ、2機で同時にミサイルを斉射した。

 近接向けの機体なので数は少なめだが、合わせて34発のミサイルがミカエル目掛けて飛んでいく。


『まだだ!』


 さらにガブリエルはブリューナクを起動。翼から分離した合計8基の飛翔体がミカエルへ突撃をかける。


『行くぜ!』

『おうよ!』


 そして2機は長剣型クルセイダーと斧槍型クルセイダーを構えて突っ込んだ。プラズマスラスターが無いとはいえ高速機、速度でミカエルに劣っても十分すぎる戦力。

 だが……


『甘いね』


 その程度でミカエルが、メイがどうこうできたりはしない。

 ミサイルはビームガトリングと迎撃ビームバルカンで全て撃ち落とされ、ブリューナクも突撃槍型は2つとも大刀型クルセイダーで切り裂かれた。

 銃剣型の方も牽制射のみ……いや、既に3基がビームライフルで落とされている。


『ほら!』


 そしてミカエルはビームライフルを捨てると、ショルダーシールドの裏から引き抜いた3本のビームスローイングダガーを投げた。

 その狙いは正確で、3本の内2本はラファエルに、特に1本はコックピットを直撃し、撃破する。


『またかっ!』

『レックスも』


 さらにミカエルは回転すると、斬機大刀をガブリエルへ向けて投擲した。

 それがまた正確に腹部に突き刺さり、ジェネレーターが爆発する。


『こんな感じ?』

「……やりすぎだ」

「メイちゃん、やっぱり凄いね」

『機体との相性良すぎんだろ……』

「反応速度が段違いだし」

『そっちでもこれくらい出来るでしょ?』

『あんな無茶苦茶な軌道出来るわけねぇよ……』

『えー?』

「メイ、あまり虐めすぎるのもよくないから」

『そうだね……じゃあ、無人機と戦う方にする?』

『それにしてくれ!』

『それじゃねぇと無理だ!』

「……頼む」

『はーい。クリス達も設定手伝って』

「良いよ」

「了解」

「任せて」


 そうしてクリス、シア、ニーネとアクトを中心に設定が作られていった。

 なお、シアとニーネが若干黒い笑みを浮かべているが……メイ以外は気づいていない。そしてメイはそれを面白がった。


「ここをこうすれば……メイ、こんな感じで良い?」

『うん、大丈夫。ありがと。じゃあ始めるよ』

『おい、説明は無しかよ』

『聞いちゃうと対策しちゃうでしょ?私だって細かくは知らないし』

『悪くねぇけどなぁ……』

「……メイ、始めるぞ」

『お願い』


 そうして、気づいていないアクトがボタンを押す。

 すると……


『おいおい……』

『何だこりゃあ……』

『あ、こうなったんだ』


 100機を超えるSAGA(サーガ)が3人を待ち構えていた。

 全てバトラーとエアロ、もしくはシルフィードで、空戦能力に問題はない。


『リントとやった時は200機だったから大丈夫だよ』

『無理を言うなよ!』

『オレらをリントと一緒にすんじゃねぇ!』

「……その通りだ。だが、もう始まるぞ」

『げっ』

『さっさとやるぞ!』

「メイちゃん、頑張れー!」

「やっちゃえ!」

「ファイトー!」

『うん!』


 そして始まった瞬間、シルフィードからミサイルが放たれる。ガブリエルとラファエルもそれに対抗、迎撃のためにミサイルを放った。

 それと同時に突撃。ミサイルを回避し、各種クルセイダーを構えてシルフィードの群れへ突撃する。


『落ちろ!』


 ガブリエルもラファエルも近接戦型なので対多戦闘は辛い。とはいえ最新鋭機、やりようはあった。

 ガブリエルは右のビームブーメランを抜き放つと投擲、楕円軌道を取ったそれはバトラーやシルフィードを何機も切り裂く。さらに盾の下のロケットアンカーを放って1機を捕獲、引き寄せて長剣型クルセイダーで貫いた。

 そしてブリューナクで次々と敵を切り裂き、撃ち落としていく。


『おらぁ!』


 ラファエルは残ったミサイルを発射、斬機斧槍から右手を離すとビームライフルを抜き、敵機を撃ち抜く。

 さらに盾の下のビームガトリングを掃射し、敵群に穴を開ける。そしてそれから避けるため編隊を崩した機体から、斧槍型クルセイダーで両断していった。

 両機とも獅子奮迅の活躍だ。だが……


『ふふっ、遅い遅い!』


 ノリノリで敵群に突撃をかけるメイほどではない。プラズマスラスター全開、しかも急角度の方向転換を繰り返すミカエルに銃撃は当たらず、1機ずつ順番に切り裂かれていった。

 こんな無茶な真似、実戦では絶対にやらないだろう。だが今は訓練、無茶をしても問題は無い。


『メイのやつ、上手くなってねぇか?』

『なってるぜ、確実にな』

「早くない?」

「早い早い。もうリントより強いかも」

「凄いよね」

「……実戦経験、か」


 そして、着実に実力を上げていた。

 前の戦いの通り、今はまだルシファーに、凛斗に勝てるほどの強さではない。だが少なくとも、制限をかけていた凛斗よりは強くなっている。

 そして、今後は……


『ボサッとしないで!』

『そ、そうだな!』

『おうっ!』


 とはいえ、今そんなことを気にしている人間はいなかった。そんな分からない先のことばかりを考える者がいないからだ。

 そして、気にしていられる状況でもなかった。


『うおっ⁉︎』

『危ねっ!』

『油断しちゃダメ!』


 ビームがラファエルの肩を掠め、装甲をえぐり取られる。ガブリエルも危うく被弾するところで、かなり危険だった。

 なお、ミカエルは掠めるどころか、盾で防ぐものすらほとんど無い。


「……安定さはメイが圧倒的か」

「だね」

「レックスもトランも危ないところが多いし」

「あ、また」

「ギリギリセーフ、かな?」

「……いや、サブスラスターが1つ壊れた」

「あ、ホントだ」

「でもさ、見てるだけなんて暇だし……あー、あたしもシミュレーター欲しいなー」


 元々実力はメイが頭1つ分以上上回っていたが、近頃はより差が開いていた。

 だからこそ、なのかもしれない。他の面々もシミュレーターを欲しがるのは。


「うんボクも。早く欲しいよね」

「機体を作ってるなら、シミュレーターも作ってくれても良いのに」

「というか……シルフィードだと危なくない?」

「うんうん」

「……気楽だな」

「そういうアクトは欲しくないの?」

「……欲しい。だが、狙撃の練習はいつでもできる」

「そればっかり。生身とSAGA(サーガ)じゃ感覚違うんでしょ?」

「……基本は同じだ」


 ミカエルはプラズマスラスター全開で突っ込み、大刀型クルセイダーで2機を纏めて切り裂く。さらにビームガトリングで薙ぎ払いの牽制射、ビームライフルを抜き放つと3連射で3機を撃ち落とした。

 ガブリエルとラファエルは協力し、戦闘を継続する。というか、ロケットアンカーで捕獲した敵機を斧槍型クルセイダーで切り裂いたり、ビームガトリングで追い込んだ機体を長剣型クルセイダーが貫いたり、ブリューナクとビームライフルのクロスファイアで数機纏めて撃ち落としたりと、割とやりたい放題やっていた。


『これで!』

『ラス……』

『もらいっ!』


 最後の1機に対してガブリエルとラファエルがビームライフルを向け、撃ち落そうとする。

 だがそれより先にミカエルの放ったビームスローイングダガーが突き刺さり、撃破した。


「……ガブリエルとラファエルは小破、ミカエルは無傷、か」

「流石メイちゃん」

「というより、2人が不甲斐なくない?」

『ひっでぇなぁ、おい』

「1番頑張っているのはメイだから、その通りじゃない?」

『メイがおかしいんだっての』

「そう?」

「違うと思うけど?」

「違うでしょ」

『だよね。それで、次はどうする?』

『まだやんのかよ』

『やるよね?』

「……いや、終わりだ」

『え、何で?』

「……何時間続けていると思っている」

『3時間でしょ?それくらいなら……』

「……休憩にするぞ」

『はーい。アクトってこうなると頑固だし』


 そしてシミュレーターは停止し、中から3人が出てくる。


「ふぅ……結構キツいぞ」

「おう。でもよ、メイはアレ以上なんだろ?」

「らしいぜ。俺らも数Gはあるのにな」

「メイ、お疲れ様」

「これくらいならそんなに疲れてないよ。いつももっと大変だし」

「凄くね?」

「それだけでも凄いだろ」

「……凄いな」


 ガブリエルやラファエルは、プラズマスラスター不使用時のミカエルより僅かに遅い。にも関わらず、機動性はミカエルの方が上だ。

 襲ってくる慣性は2人の比ではない。


「メイ、ジュースいる?」

「ありがと、シア。これって何?」

「え?エッチな気分になる薬」

「ブッ!ケホッ、カホッ……もう飲んじゃったんだけど⁉︎」

「うそうそ。ただのオレンジジュースだから」

「シア、やりすぎじゃない?」

「だって面白いし」

「シアちゃん、ボクもそれはダメだって思うよ?」

「ごめん、クリスの教育に悪かったよね」

「そういう意味じゃないんだけど……」

「それよりシア、ほら」

「……シーアー?」

「あはは……メイ、怒ってたり?」

「当然!」

「……逃げろー」

「待って!」


 そんなこんなで、唐突に追いかけっこが始まった。とはいえ、この2人なら時々あることだ。

 足の速さ自体は似たようなものなので、決着がつくには時間がかかるが。


「ぶっ通しで訓練しといてまだあれだけできんのかよ」

「無茶苦茶だよな、メイも」

「いつも通りって言えばその通りじゃない?」

「……リントと並んで体力お化けだったな」

「でも」

「ん?」

「元気になってよかったよね」


 あの荒療治で元に戻したとはいえ、いつまたあの状態になるか分かったものでは無かった。

 だが1週間経っても予兆が見えないため、6人とも少しずつ安心し始めている。


「確かに。メイが元気にならないと私達も困るからね」

「元々、俺らの中心はあいつだろ?」

「……自分達のリーダー、だ」

「だな。リントがいねぇってのは辛いけどよ」

「それ言うの?メイちゃんには聞こえてないみたいだけど」

「トラン?」

「あ……すまねぇ」


 メイ本人が言うのは気にならなくても、他者が言ったら気になる可能性はあった。


「大丈夫だぜ。メイならシアにかかりっきりだからよ」

「みたいだけど……でも、心配にならない?」

「……なる。だが、必要以上に心配することでもない。むしろ逆効果だろう」

「そうかな?ボクにはちょっと……」

「ま、そんなのは人それぞれってのじゃねぇのか?おめぇらはそれで良いんだよ」

「じゃ、そっちもそっちで良いけど。でも、ちゃんと気にしててよ?」

「……了解」


 だが意見が違っても、大切な仲間であることに変わりはない。

 メイのことを気にかけているのは全員が同じだった。
















「想定以上に時間がかかりましたね」

「そうだね。少し頑固すぎる人がいたから……」

「そうとも言いますけど」


 そして同じ頃、マイリアとレグルトがハワイの宇宙港に降り立っていた。

 今回は月に行くこと自体が極秘だったため、帰ってきた今も騒ぎにはなっていない。厳重な警備が秘密裏に敷かれているだけだ。

 なので、彼女達にとって数週間ぶりのハワイの風景がよく見える。遠くには、マスドライバーから放たれたシャトルも見えた。


「ですが、これで準備はかなり進みました。兄上も動いているようですけれど」

「彼らを抑えたこちらが上手(うわて)で動けるからね。これからは?」

「しばらくは地上でいいでしょう。こちらでの準備が少し足りませんから」

「式の後は巡る、ってことで良いんだね?」

「ええ。こちらでの準備にはそれも入りますから」

「それなら、向こう側にも話を通す必要があるけど?」

「そう、ですね……リントがいれば、話はまた別だったのですけど」

「マイリア、それは……」

「分かっています。それに、他に方法が無いわけではありませんから」


 そんな会話をしている2人へ、数人の黒服が近づいてくる。

 だが、彼女達は驚いたりはしない。見知った部下なのだから。


「殿下」

「全て予定通りに。頼みましたよ」

「かしこまりました」

「貴方達も同様です。やることは変わりません。ですが、慎重にお願いしますね」

「は!」

「承知しました、殿下」

「ここに居らぬ他の者達へはどういたしますか?」

「それは(わたくし)から直接行います。場所はありますね?」

「もちろんでございます」

「ではそのように」

「了解いたしました」


 黒服達は離れていく。残っているのは隠れた護衛だけだ。


「さて、まずはメイに会いに行くとしましょう」

「そうしようか。立ち直ったって言ってたけど」

「そこは大丈夫です。あの方法ならメイは立ち直りますから」

「よく分かるね」

「長い付き合いですので」

「流石」

「それに……」


 この2人もメイのことを案じていることに変わりはない。友人の輪の中に入っているのだから。

 とはいえ……


「立ち直ってないとからかいがいがありませんから」

「……ほどほどにね」


 こういった面もあるため、ただ案じているだけとは言えなかったりするのだが。












・ガブリエル

EXSG73-T02A

 全高12.0m、第12世代SAGA(サーガ)。エンジェルシリーズの2番機で、ブリューナクと呼ばれる特殊兵装の試験機。また本格的な量産試作機の第1号で、ミカエルを量産しやすいよう作り直したとも言える。

 ただし、実験的な武装が多く、扱いこなすには技量とセンスが必要。。

 白地に赤のカラーリング。

武装

___ビームライフル×1

___ビームソード×2

___迎撃ビームバルカン×2

___実体盾×1

___長剣型クルセイダー×1

___ビームブーメラン×2

___ロケットアンカー×1

___9連装小型ミサイル発射管×2

___銃剣型ブリューナク×6

___突撃槍型ブリューナク×2



・ラファエル

EXSG73-T03A

 全高11.9m、第12世代SAGA(サーガ)。エンジェルシリーズの3番機。水中戦用機だが、空中戦も可能。水中での抵抗を減らすよう、各所が丸みを帯びて翼が短くなり、コロイド溶液のタンクを装甲下に備えている。

 メーザー兵器はビーム兵器に換装することも可能。

 斧槍型クルセイダーはハルバード型のクルセイダーで、メーザーの刃を纏うことができる。これもビームに変更可能。

 白地に青のカラーリング。

武装

___メーザーライフル×1

___メーザーガトリング×2

___展開盾×1

___迎撃ビームバルカン×2

___8連装小型魚雷発射管×2

___斧槍型クルセイダー×1

___メーザーソード×4

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