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少年少女の人型機甲戦闘機戦記 - Strong Armys of GigAntes  作者: ニコライ
第1部

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第8話「天空の雲」後編

 



「諸君、よく集まってくれた」


 その日の午後、スパイダーの一角にあるブリーフィングルームに多くの人が集まっていた。集められたのはSAGA(サーガ)パイロットだけだが、それだけなのに100人近くいる。

  海上空母でもこんなに乗らないので、メイ達は非常に驚いていた。


「初めての者もいるから自己紹介をしよう。自分がこの艦の副長、ドラコ・アルティス少佐だ」


 そして前で話しているスパイダーの副長は、鋭い目を持った男性だ。

 明らかに一筋縄でいかなさそうな感じで、艦長とは向きが違うだけの同類なのだろう。メイ達は、こういった人に怒られることだけは避けたい、と思っている。

 また、この話を聞く必要がない者は新入り、メイ達の方を興味深そうに見ていた。だが副長はそんなことを気にすることなく、話を続ける。


「これより、この艦の今後の予定について、詳細を説明する。とはいえ、もう既に聞いている者も多いだろう。我々の目的地は……日本だ」


 それはメイの予想通りだ。

 希望が叶えられそうなことが分かり、彼女の期待は次第に高まっていく。


「日本には大陸戦線の補給経路として重要な地域だ。だが同時にテロリスト、およびパルチザンが複数存在している。そちらの討伐も任務の中に入っている。なお、テロリストはSAGA(サーガ)を所有していないため、今回の任務の主目標はパルチザンになる」


 帝国軍に占領されたその日から、パルチザンの活動は始まった。


「日本にパルチザンは5つある。だが、別個の組織とは考えるな。元は国防軍であり、強固な指揮系統、通信系統を持っていると予想されている。所属する艦隊、方面軍の違い程度だと考えておけ。また、世界有数の防諜能力を持っていた日本国防軍の影響で、パルチザンに関しての情報はかなり少ない。留意しろ」


 日本国防軍の中で余力が残っていた部隊が中心となり、日本各地にある古い軍事拠点や廃鉱山、秘匿されていた基地などを拠点化したのが日本のパルチザンだ。

 SAGA(サーガ)は人と比べれば大きいが、山や海と比べれば小さい。多数の山地や島がある日本では、帝国軍も容易には発見できなかった。

 またパルチザンは徹底したゲリラ戦を仕掛けており、その被害も馬鹿にできない。


「そして高い練度を誇る彼らは強く、被害は大きい。特にここ数年、補給基地や補給部隊が優先して狙われている。日本駐留軍どころか、大陸戦線に影響が出るほどだ。日本駐留軍は殲滅をしようと部隊を展開しているが、戦果はほとんど上がっていない」


 帝国軍は南北アメリカ大陸、日本、オセアニア諸国、東南アジアを制圧しており、現在の最前線はユーラシア大陸の東側、昔はロシアや中国と呼ばれていた地域、ユーラシア共同体と中華アジア連盟の東端にある。この2国は大陸国家らしく物量を前面に押し出しており、いくら国力の差が大きいとはいえ帝国軍も攻めあぐねていた。

 それに加えて後方基地となる日本での補給破壊が起きている。その結果として戦線は膠着、一部では押し返されてもいた。


「それぞれの組織について説明していく。まずは日本解放軍、これは日本各地にあった小規模なパルチザンを統合した組織で、1つの地域における規模は小さいながらも、総戦力は最大だと考えられている」


 複数の組織が合わさった存在とはいえ、元は同じ国防軍。1つの組織として動くことに何の問題もない。他のパルチザンの勢力圏にも拠点がいくつかあり、共同戦線もよく行っている。

 脳や神経に例えると理解しやすいかもしれない。


「次に独立党。関東地方に展開するパルチザンで、我が軍と激しい戦闘を繰り広げている。独立党の消耗も激しいはずだが、しっかりとした補給ルートを持っているようだ」


 関東地方、首都最終防衛線の残存兵達が立ち上げた独立党は、無念を晴らそうと戦意が最も高い。

 そのため最も激しく戦っていることから、両腕に例えられている。


「続いて伊吹、中部地方を拠点とするパルチザンだ。SAGA(サーガ)の保有数が最も多いと予測されており、第10世代機と見られる機体も相当数確認されている。恐らく、新規製造を行っているのだろう」


 例えるならば心臓と血管。SAGA(サーガ)を造り、他を支えている。

 だから戦闘力が低いかと思えば大間違い。総数は把握されていないが、第10世代機が相当数存在し、帝国軍も容易には手を出せない。


「次は関西防衛軍だ。こちらは逆に艦艇の保有数が多く、飛行戦艦が前線に出ることもある。戦う可能性は低いが、注意せよ」


 瀬戸内の秘匿された造船所を抑えているとされる彼らは、例にするなら両足だ。

 飛行戦艦は単独では非力だが、艦載SAGA(サーガ)との連携で高い戦闘能力を発揮する。他のパルチザンのSAGA(サーガ)を載せ、1ヶ所に戦力を集めることもある。

 また潜水艦も多数保有していて、補給破壊にも一役買っている。


「そして……明けの明星、これが今回のターゲットになる」


 凛斗達のいる組織であり、メイ達の目標。


「はっきり言うと、こいつらは異常だ。SAGA(サーガ)保有数は最も少ないと見られているが、性能と練度は最も高い。ここ数年で活動が活発化し、太平洋上の補給部隊や補給基地が甚大な被害を受けている。明けの明星の活動が他のパルチザンに方針変更を()いた可能性もある。そして……活動中の拠点を捕捉できたことが1度も無い。発見したもの全てが逃げられた後だった」


 日本系パルチザンの影の立役者であり、帝国軍へ最も損害を与えているパルチザン。


「これは日本国防軍諜報部の大半を抱えているためとも言われているが、真偽は定かではない。日本系パルチザンの中でも、最も情報が少ない組織だ。また未確認ながらも、かなり大型の潜水艦がSAGA(サーガ)の母艦となっているという情報もある」


 そして最も秘密の多い組織だ。

 蒼龍のことも、SAGA(サーガ)のことも、帝国軍はほとんど知らない。


「明けの明星は独自開発と思われるSAGA(サーガ)が主力となっている。それがこれだ」


 その2種類のSAGA(サーガ)が、前方に空中投影された。

 戦闘中に取られた映像のようで、多少ボヤけている。だが最新技術により、隣には実機とほぼ同じフォルムのCG映像が出されていた。

 そして、メイはその機体を睨みつける


「空中戦闘用SAGA(サーガ)、コードネームはエアーズ。水中戦闘用SAGA(サーガ)、コードネームはアクア。どちらも日本国防軍の系譜を引いた可変型SAGA(サーガ)で、第10.5世代機だと推定されている。他の日本系パルチザンも少数は運用しているようだが、主力としているのは明けの明星だけだ」


 エアーズはコクロウ、アクアはハクゲイの帝国軍での呼び名(コードネーム)だ。

 明けの明星の防諜能力の高さは、こういった所でも生かされていた。


「そして1週間前、エアーズがここで確認された。そのためこの明けの明星こそが、ハワイ基地攻撃の実行犯だと考えられている」


 まあ、気づかれずにハワイまで足を伸ばせるパルチザンも彼らだけなので、機体を見なくても分かるのだが。

 それくらいは帝国軍も知っている。明けの明星も、手段は隠しても結果は隠していない。


「連中の最大の戦果はこれ、第12世代概念実証試験機ルシファーの強奪だろう。同時に兄弟機、デーモンシリーズのデータも奪われたと予想されている。ハワイ基地攻撃は陽動にすぎないというのが、我々(・・)の見解だ」


 事実、ほぼその通りだ。1つだけ足りないのは、目的が人員回収であったことくらい。

 まあそれを言ってしまうと、ルシファー強奪の方がついでになりかねないのだが。


「そしてこのルシファーが2日前、日本にて確認された。その結果……」


 そのルシファーが確認されたのは、元々中規模な補給基地があった場所。

 今現在、そこは……


「ルシファー1機により60機のSAGA(サーガ)が破壊され、補給基地が壊滅した」


 焼け野原、完膚なきまでに破壊され尽くしていた。

 戦力と成り得るものは全て破壊されている。


「これを皮切りに、既に3つの補給基地が破壊され、3隻の輸送艦が護衛部隊ごと殲滅されている。破壊されたSAGA(サーガ)は既に200機以上、その内戦闘での撃墜は約80機だ。機体の基本性能も考えられるが、パイロットの影響もある」


 恐ろしいのはこれをたった2日、ルシファー1機だけで成し遂げたことだ。そして、それが出来てしまうパイロットも恐ろしい。

 ルシファーの右肩にある日本刀と獅子が、それを示している。


「四本の日本刀の中心で吠える獅子。このパーソナルマークを持つパイロットは明けの明星の中でも特級クラスのエースだ。交戦経験を持つ日本駐留軍パイロットの間では金獅子と呼ばれている。初の確認は5年前。その後1年の間に、確認できただけで我が軍のエースが4人、武装法務隊のエースが1人落とされている。その後、3年半ほど前に武装法務隊との闘いで乗機が中破、それ以降は確認されていなかったが、このために隠れていた可能性がある」


 以前は帝国軍より1.5世代下の機体に乗っていたが、当時からその戦闘能力は示されていた。3対1では容易く殲滅するような、明けの明星の2番手だ。

 そして、そんなパイロットが最新鋭機に乗った場合の結果がこの被害だった。


「だが、明けの明星には黒槍をはじめ、金獅子以上の腕を持つパイロットが複数存在する。この圧倒的すぎる戦果は、ルシファーの機体特性による面も大きい」


 しかし、要因は他にもある。


「ここに資料映像がある。これはルシファーのテストパイロットだったリント・ケンザキ中尉のシミュレーション訓練の様子だ」


 ルシファーとミカエルの機体特性は、高速性を除いてほぼ正反対と言って良い。


「ルシファーはビームボーゲンと呼ばれるビーム砲を全身に50門も持ち、理論上では各個に照準を定めることが可能だ。この映像の中でケンザキ中尉は複数門で1機を狙っているが、それでも同時に10機から20機を撃ち抜いている」


 ルシファーは対多射撃戦向けの高速機。

 複数機を相手に、有利に射撃をすることができる。


「ケンザキ中尉はルシファーを用い、そこにいるハイシェルト少尉のミカエルと合わせ、シミュレーションとはいえ200機のバトラー相手にたった2機で勝利した。被弾はしていたが、どちらも中破程度に留まっている」


 ミカエルは対個近接戦向けの高速機。

 1機ずつ、圧倒的な近接戦闘能力で排除する。


「これはそういった機体だ。さて、ハイシェルト少尉」

「は、はい!」

「ルシファーが帝国軍へ与えた被害だが、ルシファー1機で出せるものだと思うか?」

「思います。ルシファーは対多戦闘能力に優れ、また高速で奇襲と強襲に向いた機体です。リン……ケンザキ中尉ほどの腕でなくても、十分に可能だと考えます」


 だからこそ、あれだけの破壊を引き起こせた。


「もう1つ質問だ。貴官にルシファー撃墜は可能か?」

「それは……分かりません」

「何?」

「ミカエルがルシファーに対し、有利な機体であることは事実です。ですが、ケンザキ中尉もルシファーの性能を完全に引き出せていたわけではありませんでした。もし乗っているパイロットの腕と適性が彼以上だったら……」

「そうか」

「ですが」


 だからこそ、ミカエルが選ばれた。


「落としてみせます。私が、全力で」


 そして、彼女が自信を持つ理由の1つでもある。


「誇大妄想は止めろ、ハイシェルト少尉。確定情報だけを言え」

「え、酷い」

「何か文句でもあるか?」

「ありません……」


 だが、怖そうだという第一印象は拭えず、メイは気を落とす。

 とはいえ、助け舟を出してくれた人もいた。


「まあ良いじゃないか、副長」

「艦長。ですが」

「どのみち、ミカエル以外にアレを任せられる機体は無いんだよ。だったら、やらせるしかないだろう?」

「……分かりました。それではこれより、具体的な作戦案を説明する」


 ハワイから東京までの巨大な空中投影図。ミッドウェー、小笠原諸島、伊豆諸島なども含んだ広域の海洋図が映し出され、全員の意識がそちらへ向く。


「第1目標はルシファーの奪還、もしくは破壊だ。第2目標は明けの明星の拠点、もしくは母艦の破壊となる」


 そこで告げられた作戦目標に、パイロットの間で戸惑いが走った。第2目標はどう考えても、先の説明に合致しない。

 だが副長の苦々しそうな顔から、上が出した命令だと分かった。それも、現場を知らなさそうな人物からの。


「敵は普段は通商航路周囲に潜み、待ち伏せをしていると考えられる。そこで、我が艦はこのような進路を取る」


 とはいえ命令は命令、軍人なら従う他ない。

 そう考えたパイロット達が注目する中、副長の説明に合わせ、ハワイから矢印が伸びた。


「まずハワイから北寄りの進路を取り日本の東京湾港湾基地、横須賀港へ寄港する。そこでジャガー級飛行護衛艦2隻を部隊に加え、作戦開始だ。通商航路外を警戒しつつ航行、敵を捜索する」


 矢印は東京湾へ到達後、房総半島の沖を通り、南東へ向けて動いていく。

 軽い弧を描きながら伊豆諸島や小笠原諸島に沿って移動、硫黄島付近で進路を西に変え、沖縄へ到達するルートだ。他にも複数のルートが記載されており、全て行うつもりなのかもしれない。


「恐らく、我々の方が先に見つかるだろう。だが、敵の数はそう多くない。奇襲をさせなければ、十分に対処可能なはずだ」


 それが最も難しいのだが……全員、やるしかない、という顔だ。


「そして……ルシファーへの対処はミカエル、ハイシェルト少尉に一任する」


 だが副長のこの宣言に、パイロット達は一斉にざわついた。


「副長」

「何だ、ストライド中尉」

「何故彼女なのですか?新入りにこの任務はとても……」

「それは彼女の技量を見てから言え、ストライド中尉。確実に、貴官より数段強いぞ」

「そんな馬鹿な」

「それなら、君はあの暴れ馬を御せると言うのか?」


 意見は色々とあるだろう。だが返答はこの一言で終わる。

 事実として、アレを十全に扱える人間はほとんどいない。この艦にはメイだけだ。


「データを見ただけだが、アレを操れる人間は少ない。莫大なコストをかけた試験機だからなのか、開発者が狂っているからかは知らないが、異常な性能を誇っている。その唯一の正規パイロットがハイシェルト少尉だ」

「そんな試験機で……」

「その試験機が敵の手にあるのだ。アレを数で抑えるなら、100機単位の損害を覚悟しろ。その中に貴官も入りたいのか?」

「……出すぎた真似をしました」


 不承不承といった感じだが、とりあえず認めたようだ。

 というより、明確な推論に対して長々と反論する人間は、戦場で長生きできない。証拠が明確であれば尚更だ。


「一任と言ったが、それは艦長の許可の上での話だ。別にハイシェルト少尉が指揮を取るわけではない。そこを間違えないように」


 まあ、一部誤解があったことも確かだが。メイが単独で戦闘するのであって、指揮権を貰うわけではない。


「敵は強い。それは間違いない。数の利は生かすべきだが、慢心はするな。油断せず対処しろ」


 副長が特に強く言ったこの言葉。だが、心から理解したのはどれだけいるだろうか。

 それだけ、帝国の中には根強い感情が蔓延っている。


「こちらの話は以上だ。何か質問は?」


 この言葉の直後、10以上の手が上がる。副長は1人ずつ選び、答えていった。


「想定される敵機の数は?」

「正確な数は不明だ。だが過去のデータを参照する限り、10機から20機程度である可能性が高い」

「敵機の性能について、何か指標はありませんか?」

「正確性に欠けるが……エアーズ1機にシルフィード1ヶ小隊(4機)が殲滅されたという情報もある。最低でも1ヶ小隊と同レベルだと考えておいた方が良いだろう」

「母艦とはどのような艦ですか?」

「不明だ。大型の潜水艦、という噂レベルの情報しかない」


 とはいえ、情報は非常に少ない。

 上によって止められている情報もあるのだろう。現場にとっては厄介なことに。


「副長」

「キリシマ大尉、どうした?」

「パルチザンとテロリストの関係について、何か情報はありますか?」

「現在の議題には沿わない、が、良いだろう。現状、それについては何の情報もない。パルチザンとテロリストが協力したという情報も無いな」

「ありがとうございます、副長」


 無い物は無いとして、できうる限りの対策をする。キリシマ大尉の質問も、少し外れているがそれに沿わせたものだった。

 とはいえ、彼女は日本人。


「はっ、日本人が」

「お前のお仲間だろうが」

「裏切りそうなやつは後ろから撃った方が良いか?」

「あいつ!」

「このっ!」


 こういった反応があるのも、帝国軍なら普通だ。

 これに対して幾人かが不快感を示し、レックス達及びキリシマ大尉の部下は怒りを露わにする。

 だが……


「それなら、私が後ろから斬ってあげます」

「え、メイ、ちゃん?」


 だが、最も怒っていたのはメイだった。

 いくら敵を作りにくい性格でも、限度はある。


「味方を撃つのであれば、それは裏切り者です。処断に必要な理由が他にありますか?」

「ハイシェルト少尉、勝手なことは……」

「ま、良いんじゃないかねぇ」

「艦長⁉」


 鎮火させようとする副長だったが、艦長はむしろ燃料を注いだ。この様子だと、どうやらいつも振り回されているらしい。

 怒りつつも、メイは副長を少し不憫に思った。


「実際問題、味方を撃つような不届き者はこの艦には要らないからね。斬り捨てられるか、海に捨てられるか、好きな方を選びな」

「くっ」

「ちっ」

「ハイシェルトだからっていい気になって……」

「あのさ、メイちゃん……?」

「ふん」


 封じ込められ、不満を漏らす者がいる。家のことを言う者もいる。

 だがメイは、負け犬の遠吠えとしか聞いていなかった。
















「メイ!」

「メイちゃん!」

「どうしたの?シア、クリス」

「どうしたの、ってそれはこっちのセリフだから」

「あんな風に怒って、どうしちゃったの?」

「心配するよ、あんな風だと」

「ニーネまで……そんなに変だったかな?」

「「「変」」」

「酷い……」


 ブリーフィング終了後、他のパイロット達が部屋を出て行く中、メイ達はその場に残っていた。

 あれだけのことを言って注目されているが、誰も話しかけてこない。人により考え方は様々だとしても、悪い意味で目立ったようだ。


「でも、だって、あんな言い方されたら……」

「そういう問題じゃないよ?……やっぱり、まだ大丈夫じゃないんだ」

「それは……そうかも」


 もう話したことのある人間を除いて。


「いやー、メイ、助かったよ」

「レイカさん……暴論だとは思ったんですけど」

「いいや、アレで正解だよ。スカッとしたね。君には不名誉みたいだけど、ハイシェルトの名前も上手く使うべきだ」

「そうかもしれません……でも、どうして」

「え?」

「どうして、あんなことを聞いたんですか?任務とは関係ないというか、個人的な感じが……」

「まあ、話しても良いかな……友達がテロに殺されててさ。ああいうの、許せないんだよ」

「そう、何ですか……」

「君も分かるだろう?いや、君の方が濃いのかもな」

「それは……」

「ま、そういう理由でも良いんじゃないかい?変に理屈をこねくり回すより、ずっと健全だよ」


 そしてさらにもう1人、会話に加わった。


「艦長」

「気にしないでいいさ。命令以外だったら、意見や反論がある方が好ましい。長々したのは困るけどね」

「了解しました」

「はい」

「で、感情の話だ。でもまあ、特に言うことは無いかね。戦う理由が人それぞれでも、わたしは一向に構わない」

「いいんですか?艦長は……」

「わたしには特に、そういった思い入れなんてものは無いんだよ。だから、考えることはできても、理解はできない。それだけだ、メイルディーア少尉」


 人は人ごとに考え方が違う。想いが違う。願いが違う。それを彼女が自覚するのは、もうしばらく後のこと。

 今はまだ、経験の足りない少女でしかなかった。


「では艦長、先ほどの……」

「わたしはさ、変に部下の対立を煽られることが嫌いなだけだよ。戦場で背中を預ける相手を信用しなくて、どうやって勝つって言うんだい」

「そうですね」

「そんなところさ。じゃ、後は若いもん同士で仲良くやってな」


 人との付き合いは、彼女を成長させる。

 ただし……


「あの人もあの人だなぁ……メイ、この後はどうするんだい?」

「ミカエルの調整に行きます。少しやっておきたいことがあるので」

「じゃあ、お別れだな。こっちは部下達とブリーフィングなんだ」

「変なこと言わないでください」

「その顔の方が良いよ」

「え?」

「そういう顔の方が、君らしい。彼も気にいるんじゃないか?」

「えっ、ちょっ、えぇ⁉」

「おや、カマかけだったのに……本当にいるのか」

「そ、そんなわけじゃ……!」

「なら、片想いってところかな?誰だい?」

「誰でも無いです!」


 どうやら、オモチャとなることは避けられそうにないようだ。












・ジャガー級飛行護衛艦

全長92m、全幅14.1m、全高12.2m

 帝国軍の飛行護衛艦。

武装

___30cm15口径単装ビーム砲×2

___3連装ミサイルランチャー×5

___小型ミサイル発射管×30

___連装対空ビーム砲×12

SAGA(サーガ)用装置

__緊急着艦ハッチ×1

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