目覚め
「ん…」
ゆっくりと意識が浮上する。
暖かいふかふかの布団が目覚めの邪魔をする。
もう一度寝てしまおうか…
眠気に逆らって目をうっすら開ける。
「…ココどこ?」
目に飛び込んできたのは高価そうな机。
慌てて飛び起き、辺りを見回す。
部屋にあるものは…机、椅子、本棚、タンス、そしてこのベッド…
シンプルで物が少ない。
ベッドから降りて、色々と調べてみる。
机の上には羽ペンと紙。タンスには高価そうな服…
「お目覚めになられましたか?」
突然声をかけられて飛び上がる。
探索に夢中になりすぎて人の気配に気がつかなかった。
ゆっくり扉の方を向くと、執事さんがにこやかに笑っていた。
「ご主人様がお呼びです。付いて来てください。」
「…。」
口の中がカラカラで声が出なかったので小さく頷く。
歩き出した執事さんの跡を追って歩く。
屋敷の中はとても広く、豪華だ。
シャンデリアや、へんな絵画が飾ってある。
迷子になりそうだ。
「ご主人様、お連れ致しました。」
「入れ。」
「失礼いたします。」
扉を開け、入るように促される。
そろそろと入り、椅子に座る男の人を見上げる。
「お前が夜桜紫音か。」
「…は、い…」
かすれ声で返事をする。
頷くだけじゃ悪いと思ったからだ。
窓から差し込む太陽の光で顔は見えない。
でも、なんだか怖い。
「お前の母親の父だ。お前のことは聞いている。今日からお前はうちの家族だ。」
「…家、族」
「そうだ。自由にしてていいぞ。夕食は7時、昼食は12時、朝食は7時だ。何か欲しければそこにいる執事に言えば良い。生活面のこと、勉強を教えてくれる。」
「分かり、ました…」
「取り敢えず今日は休みなさい。沢山のことがあって疲れただろう。」
「…はい。」
「お前の父さんと母さんのことは残念だったな。」
「…はい。」
一礼をして部屋を後にする。
執事さんと最初に居た部屋に戻る。
「紫音お嬢様、こちらの部屋にあるものは全て貴方様のものなのでご自由にお使いください。では、自分はこれで。何かあったらそこのベルでお呼びください。」
そう言って、執事さんは部屋を出て行ってしまう。
ばふっ、とベッドに顔を埋める。
お日様と洗剤のいい匂いがする。
なんだか…優しそうな人だったな…
お母さんからは本当の事を聞かされていなかったのだろう。
聞いていたらまず私の事なんて引き取らないだろうし。
…どうしてここに居たのだろうか?
自分の足でここまで来れるはずないし…あの業火の中から私を救い出せる訳もない。
何があったのだろうか…
思い、出せない。
ノイズがかかって何も思い出せない。
殺して、業火の中歩いて、教会に行って…
教会に行って…何があったんだっけ?
まぁ、過ぎたことだ。
もういいだろう。
ふかふかのお布団に体を沈めて微睡みに落ちていく。
これから、私どうなるんだろう。
あれ、紫音生きてる……?




