嘘
「ん…?」
大きな物音で夢世界から引き剥がされる。
どこからか焦げ臭い匂いがする。
何やらリビングの方が何やら騒がしい。
しょぼしょぼと寝不足を訴えてくる目をこすりながらベルを抱いて暗い廊下を進む。
リビングからは暖かい光が漏れている。こんな時間までお父さんとお母さん…何してるんだろう?
興味本位でこっそり覗く。
するとそこには知らない人が剣をお父さん達に突きつけていた。
お父さんとお母さんは身を寄せ合い、カタカタと青白い顔をして震えていた。
「お父さ…」
「寝室に娘がいる!!そいつでいいだろ?だから、オレ達は見逃してくれ!殺せればなんでもいいんだろ?!」
お父さんの口から出たのは衝撃的な言葉。
…私を身代わりにしようとしている?
幼いながらにこれくらいは分かった。
私を身代わりにして、自分達は生き残ろうとしているんだ。
ギィ…と音を立てて扉が開く。
三つの視線が一斉に私をとらえる。
お父さんとお母さんはギョッとした顔をして硬直する。知らない人は面白そうな顔をして舌なめずりをしている。
「…ねぇ、今のどういうことなの?」
「え、あ…その…」
私が尋ねればモゴモゴと歯切れの悪い返事を返される。
知らない人は腹を抱えて笑い出す。
「ハハッ!お前、愛されてなかったんだな!ギャッハッハッハ!!」
汚い笑いをしながヒーヒーと苦しそうな息をする。
その拍子に持っていた剣を落とす。
「…お母さん、お父さん、私のこと嫌いだったの…?」
「…ええ、そうよ!嫌いだったわよ!」
もうどうでも良くなったのか、お母さんが吐き捨てるように喋る。
「あんたの事なんか始めから愛してなんていなかったし、ご飯だって作ってあげたくなかった!へんな容姿してるし!そのせいで村の人からは嫌われるし…!でも、あんたがいるおかげで政府から援助金として毎月うちにお金が入ってくるの。そのお金で遊び歩くの!つまり、あんたは私たちの《お財布》だったって訳よ!適当に扱っても良かったんだけど、逃げ出されたら面倒だし。だから、嘘の笑顔と嘘の愛であなたを育てたのよ…ふふっ、アハハッ!気がつかないなんて馬鹿ね!」
狂ったように高笑いするお母さん。
私は…お母さんとお父さんのお財布…?
お金のためだけに私を育てたって事…?
今まで偽物の《アイ》だったって事…?
あぁ、だからか…時々あんな冷たい目で私を見つめるのは…そういう事だったんだ。
パッチリと頭の中でピースがハマる。
よく分からない感情が体の中を駆け巡る。
怒りでも悲しみでもない。
よく分からないドロドロとした感情に身を任せて床に転がっていた剣を拾う。
「おい…何をする気だ…そ、それを離せ…!」
「いや…やめて…!来ないで!“化け物”!!」
化け、物か…
私にピッタリの名前だなぁ…
仲良く壁に寄り添って震える両親に剣を振り下ろす。
ビシャリ、と赤い血が頬にかかる。
温かい…これが《温もり》って言うんだ…
「ヒッ…!」
さっきまで汚い笑い声を上げていた男が短く悲鳴をあげて後ずさる。
「アンタさえ来なければ…!」
私はシアワセのまま死ぬことが出来たのに。
こいつのせいで私は…!
剣を振り落とした次の瞬間、そいつの頭が床に落ちた。
遅くなりました…




