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トラゲール!  作者: hana♪
第9章
197/225

扉の先

国王視点です

やっと扉が開いた時にはもう日が沈んでいた。

ボロボロに吹っ飛んだ扉を足でどかし、廊下へと踏み出す。


そこは私の知っている城じゃなかった。

血塗れで窓が割れていて人の死体がゴロゴロと転がっている廊下。

静まり返った城内を一人歩く。

聞こえるのは自分の息遣いと血が滴り落ちる音だけ。

一歩踏み出すたびにグシュリグシュリと音を立てて血を吐き出すカーペット。

転がる死体の中に見覚えのある姿が目に飛び込む。


「…あお。」


そっと膝をついて抱き上げる。

ギギッ、と音を立てて軋む体。酷い有様だ。

肩はずり向け、中の機械が見えてしまっている。真っ白な服は返り血で染まり、腕が片方ない。

なのに…幸せそうに眠っている。


「頑張ったね…お疲れ様。」


そっと頭を撫で、抱き寄せる。

もう温もりは感じない。あの暖かくて優しい匂いはしない。

冷たくて血生臭い。

それでも、あおはあおだ。

頑張って、命を落としてまでもココを守ろうとしてくれた。


死体の中からあおの片腕を探し、くっつけてやる。

少し不恰好になってしまったが無いよりはマシだろう。


口の端から引かれている一本の紅い線を指で消し、壁に寄りかからせる。


どうでも良い敵兵の死体を蹴り飛ばしながらまた廊下を歩く。

グッシュ、グジュリ、と音を立てて跳ねる肉片。

その感覚が気持ち悪い。


一個下の階に下りる。

みんなで笑いあっていたはずの場所はもう無くなってしまった。

荒れ果てた城の中。頭がクラクラするくらい濃い血の匂い。汚ならしく転がる死体。

その中にいる…家族。


「…ゴットマザー」


ダラン、と投げ出された腕。血濡れたナイフが深々と脇腹に刺さっている。

弾の尽きたマシンガンが近くに転がっている。

そっとナイフを抜いて止血をする。どくどくと服を染める紅。

いつもはキッチリまとめている髪が乱れている。

切れたゴム、取れたピンを付け直しいつものゴットマザーに戻してあげる。

血はどうにもならないが…これくらいはしてあげたい。


「…いつもありがとう。お疲れ様、寝てて良いよ。」


優しく抱きしめて床に寝かせる。

血濡れて冷たい床は可哀想なので魔法でクッションを作り出し、その上に寝かせた。


城の中をゆっくりと見て回り、玄関にたどり着く。

玄関付近の壁にはモモが力尽きたようにもたれかかっていた。

きっと前線が崩れた後応戦に来てくれようとしたのだろう。

トレードマークのお面は無く、肩から腹にかけて深い切り傷が出来ていた。他にも銃弾や火傷など酷い怪我だ。

酷い怪我なのに…帰ってこようとしてくれたんだね。

顔だけ見たらただ眠っているようにしか見えないだろう。

頬にそっと手を伸ばす。いつもの温もりはない。

氷のように冷たい頬に私の手が触れる。


「すごいね…モモ、ここまで来れたんだ…偉い、偉い…」


サラサラと柔らかい髪を撫で、体制を整える。

あんな体勢じゃ辛いだろうし。


佳奈の姿が見当たらない。

佳奈は一体どこに…?


「佳奈…」


私の部屋の前に行く。

そこに佳奈はいた。

佳奈の近くに『記憶の花』が一輪咲いている。

きっと佳奈が死ぬ間際に咲かせたのだろう。そんなことに魔力を使うなら自分の怪我を直せば助かったかもしれないのに…


花のそばにかがみ、大きく膨らんだつぼみに手を伸ばす。

リン…と可愛らしい音を立てて花が開く。


『シオン…これ、を見てる…って、ことは私…死ん、でるんだね…』


キラキラと舞う花弁と共に佳奈の声が再生される。

かなり息絶え絶えで辛そうだ。


『ごめん、ね…そばに居、てあげ…られなくて…でも…絶対に、帰って、くる…から。』


弱々しい、だけど自信に満ち溢れた声。

時々咳をする音声が聞こえる。

かふっ、と血が吐き出されるような息が漏れる。

それでも佳奈は喋り続ける。


『私達、が…帰るまで…ココで、待って、て…』


それが佳奈の最後の言葉だった。


何故か涙は出なかった。

もう少しで200話いくね

お祝いしなきゃ

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