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トラゲール!  作者: hana♪
第9章
195/225

月詠 佳奈

佳奈視点です

ガッチガチにガードされた扉を背に佇(たたず)む。

透視で下の階の様子を伺い、魔法を放つ。

ゴットマザーは機械室に行って応戦してくる、とココを離れていった。

なので私はここでシオンのことを守るために残っている。

前に出ても良いのだが、あまり接近戦は得意ではないので足を引っ張ってしまいそうだ。

魔法使いは魔法使いらしく後ろで戦う方がお似合いだろう。

…バンパイアの力を使っても良いのだが。

バンパイアの力を使うと体力の消費が早くなる。だから非効率的だ。

半純潔なのでそこまで強くないし。自分の得意とする魔法で戦った方が効率が良い。

でも、ここまで敵が来たらそんな悠長なこと言っていられない。


「はぁ…」


この扉を一枚挟んだ奥にシオンがいる。

目を覚ましたらこの扉をこじ開けようとするだろう。

開かないんだろうな…開いたとしても時間がかかる。

だから、多分もう会えない。

あの輝くような笑顔はもう見られない。

そう思うと少し悲しい気がする。


…シオンに出会わなかったら今頃自分は何をしていたんだろう。

少なくとも今より面白くない生活を送っているんだろうな。

私はこの人生に後悔はない…と言ったら嘘になる。

でも、シオンについてきて良かった。

私を絶望の海から救い上げてくれた。

私の世界に光をくれた。


頭の中で思い出が弾ける。


一緒に魔法練習したなぁ…良く爆発させて失敗してたよなぁ。

でも、ちゃんと真面目に練習して翌日には出来るようになってたよなぁ。

あれ、夜な夜な一人で練習して習得してたの知ってるのに必死に隠すんだもん。

『私が天才だから出来たんだ』って意地張っちゃって。

書類仕事も脱走したり、嫌々言いながらもちゃんと期限までには終わらせてたし。

私達が本当に忙しい時はちゃんと脱走とか内ゲバしなかったし。

体調悪かったらすぐ気がついて無理矢理にでも休ませてくる。その癖して自分は体調悪いの隠そうとするし。


…何だかんだ楽しかったなぁ。

国作るって宣言して…冗談だと思ってたのに本当に作っちゃうんだもん。

お茶会も沢山の国のお話とか議論して楽しかった。


幸せそうにスイーツ頬張ってるモモも、拗ねて部屋の隅っこに座ってる青葉も、太陽みたいな笑顔浮かべて励ましてくれるレノも、徹夜しすぎて壊れたゴットマザーも、皆のことをちゃんと見ててくれるシオンも…


全部、全部私の大切な思い出だ。

この国で出来た私の宝物だ。


その宝物を作ってくれた人を守るために…


階段を駆け上がる音が聞こえる。

沢山の銃声が鳴り響く。

その中に仲間の声が聞こえる。

不思議と口角が上がる。

身体中に力が巡る。

口から鋭い牙が覗き、目がジワジワと紅く染まっていく。


「さて…大魔法使い月詠佳奈、久しぶりに本気出しますか」




全ては宝物(シオン)を守るために。

明日でテスト終わる…!

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