命令
今回長いです。
青葉視点です
「っは…!」
冷や汗が背中をつたる。
あの後…なにがどうなったか思い出した…
俺は実験台にされ、唯一の成功作となった。毎日毎日薬を打たれて、電磁波喰らわされて、命令に背けば暴力を振るわれて…
散々だった。望まれない子で良かったからあの場で莟姉さんと死んだ方がマシだった。
肩で息をする。頭に鈍痛が走る。ガンガンと何かで殴られてるみたいだ…
「あ、おはよう。起きたの?」
目の前で足を組んで偉そうに座る白衣の男。
その手にはカルテのようなものが握られている。
「どう?思い出した?」
ニヤリと気持ちの悪い笑顔を浮かべて俺に問いかける。
分かってるくせに俺に問う。
「…思い出しましたよ。だからなんですか。」
「僕は君のご主人ってことさ。だから命令に従ってもらっていいかな?あの日みたいにさ。」
「っ…!」
違う…もうあの頃のように弱くない。アイツは俺のご主人じゃない。
俺の…俺のご主人は国王だ!
いやだ…いやだ…従いたくない…でも従わなかったら…?
痛いのはいやだ。殴られたりするのはいやだ。怖い…怖いよ…
「ごめんなさい…」
「それでいいんだ。よし。じゃあ手始めに…」
命令を下そうとした途端、壁から爆発音が響く。
研究所が揺れ、警報音が鳴る。
「なんだ?何事だ?」
白衣の男は慌てず冷静に周りの様子をうかがう。
もう一度爆発音が鳴り、砂埃が舞う。
視界が悪くなり、目をつぶる。
「どうも。レイヤ博士。うちの忠犬を迎えに参りました。」
砂埃の中から堂々と現れたのは…
「こ、くおう…」
大人びた国王だ。いつもの雰囲気は無く、まるで立派な国王みたい…
「おや、ちょうど良いや。青葉、命令だ。アイツを殺せ。」
「は、い…かしこまりました。」
嫌だ嫌だ嫌だ…!戦いたくない。傷つけたくない!
体が言うことを聞かない。勝手に動く。右手をマシンガンライフルにし、乱射する。
銃口を逸らそうとしても体は勝手に動く。主導権が取られてしまったのか?
「あお。戻っておいで。帰ろう?」
ひらりと蝶のようにかわす国王は優しく僕に手を差し出す。
手を取って帰りたかった。なのに…
「よ、けて…!」
僕の身体はナイフを手に取り斬りかかる。左手は火炎放射器にして国王の逃げ場を塞ぐ。
…逃げて。僕のことなんて置いて逃げてください…!
「私、あおにやられるほど弱くないから。大丈夫、安心して?」
僕の手首を掴み、手を握る国王。
国王の手首には魔法封じ石が付いている。
僕は手を振りほどいて脇腹から毒ガスを撒き散らす。
国王は口元を手で覆って距離をとる。
行動とは裏腹に脳裏に佳奈様とゴットマザー様の顔が浮かぶ。
内ゲバしてゴットマザー様に怒られて…佳奈様に怪我治してもらって…
モモと喧嘩して…逃げ出した国王を追いかけて…
走馬灯が走る。
それを押さえ込むように身体の主導権を奪った奴が過去の記憶で塗りつぶす。
「あ…あぁ…」
痛い…痛い…!
頭の中で俺と僕が戦っている。
過去の自分なんかに負けて…たまるか…!
「あお…!」
「殺せ!早くそいつを殺すんだ!」
国王と白衣の男が叫ぶ。
その声が余計に俺の頭を痛くする。
「やだ…やだ…!忠誠を誓ったの、は…」
僕に負けそうになる。過去の自分なんて嫌いだ…
負けない。俺は白衣の男なんかの、命令なんて…!
「俺が忠誠を誓ったのは国王だけだ!!」
叫ぶ。気持ちが負けないように、自分に言い聞かせるように叫ぶ。
「あお…!よく言った。」
ほにゃっと優しくて暖かい笑顔を浮かべると国王は白衣の男と向き合う。
「それでは。うちの忠犬がお世話になりました。あお、国王命令だ。」
「アイツを殺せ。」
「国王陛下。仰せのままに。」
白い部屋に紅い花が咲いた。
おはようございます。
今日も多分更新遅いです。




