永遠の愛・多恵-百物語三話-2
その件があってからあたしはね、決意したわ。
何かって?
あはは。
大学生になったある日。
いつものようにおつきの女を連れて、町外れの山に行ったわ。
あたしは時々その山から遠くの景色をぼんやり眺めるのが楽しみだった。
おつきの女もあたしの気持ちが分かるのか、一人だけでそれに付き合ってくれるの。30歳半ばの筋肉質の女とただの20歳の大学生の私。
「ねえ、いつもあたしと一緒に居てくれてありがとう」
「……いえ。私は巫女様と居ると幸せな気持ちです」
あたしの唐突なお礼におつきの女はにっこり笑った。
この任務のおかげで結婚もできないのに子供も産めないのに、あたしと同じで村から離れられないのに。
「本当にありがとう」
その言葉と共に包丁でおつきの女の首を切りつけた。
「ぐぎぎぎっ!!」
何が起こったか分からないというようにおつきの女は変な声をあげたの。
殺すに決まってんじゃん。
おつきの女の撒き散らす血を浴びながら、あたしはにっこり笑った。
自由じゃないのは嫌なの。
……その後、あたしは山に隠しておいた服に着替えて山を降り始めたわ。
確信を持って。
村の境界には高い柵が張り巡らされていたけど、運よく私が通りたい所は猪か何かに壊されて通ることができた。
だいぶ歩いたけど、疲れきる前に広い道路に出た。
広い道路に出たら小さい車が向こうから走ってくる所だった。
手を上げたら、旅行者の女の人達で乗せてくれた。
何か可哀想な目にあったと思ったのか、街まで行きたいと行ったら何も聞かないでくれた。
車に乗って見る村の外はすごかった。
感動で泣いちゃった。
広くて綺麗な舗装道路。近づいてくる街。
高いビル。
夢のようだった。
20歳まで育ててくれた村には完全に未練はなかった。
あたしね、今幸せなの。外の広い世界で幸せを掴んだのよ。
外の世界の人たちは、皆とっても親切だし。世間知らずのあたしに優しいんだ。
東京でバイトしてる内に年上の彼氏もできたし。
彼氏すらっとしてて目がぱっちりしてて優しくてさ。
あたしを愛してくれるの。
あ、ちゃんと人間だよ。
「永遠に愛してる」
って、この前はレストランであたしの誕生日祝ってくれたんだ。
ロマンチックでしょ。真剣な顔で永遠だって。
きゃー、照れる。
大学卒業したら結婚するかも。
あ、そうそうあたしの名前「多恵」っていうの。
古臭いでしょ。
でも、蛇の神様と「多恵」って名前言うのちょっと怖かったんだよね。
村の人に連れ戻されるかもって不安もあったし。
でもね、やっぱりそんな心配要らなかった。
蛇の神様はあたしとついでに周りの人に幸福をあたえるだけって分かったから。
蛇の神様はあたしのやりたいようにやらせてくれるし、最初からどこにでも行けたの。
村の人がね。束縛してただけだったの。自分達の幸せを離したくなくて。
蛇の神様はねあたしを愛してるだけだったの。
あの日の夜に夢で聞いたのよ。
「多恵を愛してる。幸せにしたい」って。
おつきの女を殺したのは、そんな愛情に賭けたのね。
確信あっただけど。あたしを守ってくれるって。
あはは。20歳までいてあげたんだから勘弁してほしいよね。
あたしは幸せになるわ。誰よりも。
あ、じゃあ次の人どうぞ。
あたしの話は終わり。




