白と黒の影-百物語二話-2
最近ね、と言っても・・・・・・1ヶ月前くらいにね。
真之介さんの病院に行って問診室の前を通った時、濃くて大きな黒い人影を見たの。
黒くて、問診室の扉を覆い隠すような影。
あんな大きな黒い人影を見たのは初めてで、真之介さんに相談したわ。
「そうか。で、どうする?」
「どうするって……あ、これお弁当」
お弁当を受け取った真之介さんは能天気な事を言ってるし……。
もしかしたら、問診室の中に重病の方がいらっしゃって、それで影が見えたのかもしれない。
そう思った時だった。
廊下の向こうからあの黒い人影が歩いて来たの。
「おーい、真之介」
黒い人影が喋っている。
私の夫に呼びかけている。
私は怖くて怖くて真之介さんの手をぎゅっと握ったわ。
黒い人影を見ないように俯いてね。
「なんだ、奥さんか?」
「ああ、私の妻百合子だ」
「えっ・・・・・・あ、妻の百合子です。はじめまして」
普通のやりとりにびっくりして顔を上げたら、真っ黒い影が親しげに喋っていた。
でも、よく見たらやっぱりいつも通り怖い感じはしなかった。
安心して挨拶したわ。
黒い影と真之介さんがお友達になったのね。
お友達は真之介さんとちょっと話をしてから行ってしまったの。
「びっくりしたわ。真之介さん影とお友達になったのね」
「影?さっきのは同僚だが」
「同僚さんなのね」
夫のお仕事仲間ならなおさら怖くないわ。影そのものなら悪い事も起きないかしらね。
そう思っていたら、数日後影のお仕事仲間が亡くなった事を教えてもらったの。
交通事故だったそうなのだけど。
私はその時、影そのものでもちゃんと注意して差し上げないと、と決心したわ。
え?真之介さん。影じゃないただの同僚だからって?
酷いわ。お仕事仲間なら、ちゃんと注意しないと。
それでね、皆さんに良い案がないか相談なのですけど。
やっぱりこれも一ヶ月前からなの。
テレビに映ってる人に結構黒い大きな影の人がいらっしゃるのよ。
どう注意したらいいのかしら。
いっぱい居るし。
真之介さんみたいに影じゃないって言われたら、そもそも悪いことがあるって信じて貰えなかったら。
電話をかければいいのかしら。
真之介さんにはやめろって言われるのよ。
ねえ、皆さん。
どうしたら良いと思います?




