幕間 君の知らない物語
今回は涼君視点ではありません。
ようこそ!冒険者が集う酒場&宿屋『安らぎ亭』へ!
お客さん達はこの店は初めてか?
何?常連なのか?
悪いな、顔を覚えてなくて。
まぁ、それならこの店の楽しみ方は知ってるよな?
おや、初めてのお客さんもいるのか?
なに、そんな難しい事なんてない。
この店は酒を飲んで、美味い飯食って、面白おかしく騒げばいいんだよ。
そして、ちょっとした噂話と悪ふざけが、話を彩るスパイスとなるんだ。
おっと、その前に俺としたことが自己紹介がまだだったな?
はじめまして。
俺は悠里、正確にはユーリ=アストルダム=ストーンブリッジだ。
絵本で読んだことがあるってか?
ああ、そうだよ。
まぁ、名前で分かるかも知れんが、この街の『元王』で『元勇者』をしていた。
今はしがない酒場のマスターだがな。
親しみを込めて『マスター』とでも呼んでくれ。
面白い冗談ってか?かなり前だからな?
300年も前か……もうそんなに経つのか。
まぁ本当のことなんだがな。
過去の話?英雄の話?
あ〜……過去を語るのは、こっ恥ずかしいからまたの機会にしてくれ。
それにあまり得意じゃねぇしな。
まぁそんな年寄りの昔話より、最近拾ってきた面白い奴について語ろうじゃねぇか。
そいつの名はな、リョーって言ってな。まぁ、俺は涼君と呼んでるがな。
ああ。拾ってきたと言ったが、死にそうになってたから、山から連れて来たんだ。
見た目からして、同郷の者だったからな、そのまま見捨てるのもどうも目覚めが悪くてな。
んで、この涼君がな……なんつーか、実に馬鹿なんだ。
悪い意味じゃなく良い意味でだけどな……きっと。
馬鹿と天才は紙一重とよく言うがこいつは勿論、紙一重で馬鹿の方だろう。
初めて意識がある時に会ったがな、戦慄を覚えたね。
お前さんらも知ってるだろ?
何?見たことない?
惜しい事をしたな。
両手は頭に添えるだけで、頭でブリッジする、あの体勢を何て言ったかな?
確か涼君は『恥ずかしブリッジ』って言ってたっけか?
アレでキリッとした顔で「貴方が私のマスターか?」だぞ?
これを馬鹿と言わなければ、馬鹿の定義が俺には分からねぇな。
いや、これは本当にあったことだからな?
次にマオとのやり取りなんだがな。
マオは分かるか?そうそう、あの見た目が魔王様な奴だ。
過去にも『マルカジリのドッキリ♪』って言ってな、食われそうになる、ドッキリをしたんだ。
だが、あそこまで良い反応した奴はそうはいなかったな。
思わず、記録の魔道具と『ドッキリ大成功!』のプレートを作らなかった俺の方が悔しいぐらいだ。
他か?まだまだあるぞ。
そうだ!魔法を見せた時の反応も良かったな!
初めて魔法を見たこともあったのか、俺の風魔法であそこまで喜ぶ奴がいるとはな!
涼君は気持ちが顔に出やすいんだろうな。
ああ、そうだ。例のあの魔法だ。
もうな!ガン見だったわ。
俺が言うのもなんだが、とんだ変態だよ。
いや、だって俺が神認定されたからな。
買い物の時も面白かったぞ。
こいつがな、俺がボケると、すかさず拾ってくれるんだ。
もう、ネタ合わせしてたんじゃねぇかと思うほどだ。
そして、いろいろと無駄に博識なんだよ。
ギャップがあり過ぎて意味分からんよ。
彼の実力?涼君の力か……
涼君の能力だが……低いということはないはんだけどな。
いかんせん、性格なのか、テンションでその場で乗り切ってしまうんだ。
多分、まだ力を発揮できんだろうな。
ああ、それと彼はレアスキルとレア装備を持っているぞ。
内緒だぞ?モチロン本人も気づいてないから。
そういやぁ、お前らアテナ知ってるだろ?
そう、そうだ。魔王様の娘だ。
俺は隠れて見てたんだけど、涼君はあの可愛さにやられて、マオのことを「お義父さん」と呼んだんだよ。
冗談でもスゲェだろ?
アイツに勇者の称号を渡したいぐらいだよ。
まぁその後、涼君は次の日まで目覚めなかったんだ。
あと、涼君は記憶を少し持って行かれてたな……
なぜか、俺も一発殴られたしな。
他はだな、薬草採取の話なんてどうだ?
聞いてないか?
涼君がギルドで薬草を採取しに山に行ったんだよ。
そうしたら、どうなったと思う?
遭難した?魔物に襲われた?……惜しいな。
正解は、魔物に襲われて、場所が分からなくなるまで走った後に、盗賊に捕まったんだよ。
ビックリだろ?
俺も「助けて下さい」って通信が入った後、詳しく聞いてみると「今牢屋なんですけど?」だぞ?
そん時は涼君って、どんだけ神に嫌われているんだろうと思ったぐらいだよ。
ん?他の話か?そうだな、じゃあ……
「マスターさん。何の話してるんですか?」
おっと、本人登場だ。
「なんでもない、ちょっとした噂話だ。それより涼君、マオに呼ばれてたぞ?」
「……マジっすか?……逝ってきますね……あれ、俺なんかしたっけ?」
じゃあ、今日の所はこれぐらいにしとくか。
お前らも『元勇者で元王様の事』や、ここでの話は涼君には内緒だぞ?
何故かって?
勿論、『その方が面白い』からだよ。
俺はな、最近は涼君を使って遊ぶ……じゃなくて、涼君が何かをしでかすのが楽しくて仕方がないんだよ。
さて、今度は何をさせてみようか。
おう!それじゃあ、またの来店を待ってるぞ。
これにて、序章終了です。
次から、第一章です。
やっと、始まる涼君の為の物語です。




