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死んだら地獄でまた会った! ~戦国武将たちの「墓場まで持ってきた話」~  作者: スグル【戦国時代好きの40代】


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忠義の形〈徳川家康と石田三成 後編〉

【地獄関ヶ原にて 徳川家康と石田三成】



「やはり家康殿となら、その話になりますよね。狙いというほどではありませんが、やりたいことはありました」


「詳しく聞かせろよ」


「分かりました。あの関ヶ原の戦いは、天下分け目などとも呼ばれますが、正確に言えば、ただの内輪揉めでしたよね。だから、東軍と西軍なんていう、おかしな言い方をせざるを得ないのです」


「そうだ。それは、あの信雄(のぶかつ)でさえ分かっている。東と西で分けるなら、なんで九州に東軍がいたんだって、文句を言われたよ。

 まあ 俺が自分で東軍を名乗ったってわけでもないけど、徳川軍とも名乗れないんだ。あの戦は、豊臣政権の内部分裂だったんだからね。勝った徳川家康も、負けたお前…っていうか毛利輝元も、豊臣政権の臣下だ。

 つまり勝ったのは、徳川家ではない。でも俺は、あの勝利に乗じて、敵対していたやつらを勝手に改易し、主である豊臣家の直轄領も減らした。

 理路(りろ)なんか、あったもんじゃないよな」


「そうですね。しかし家康殿には、それができる実力…つまり武力と政事力があったのです。実力がすべてに優先するのが、あの時代のルールでした」


「それも分かっていたんだよな。ならば あのとき、実力を失っていた石田三成が、あえて打倒 徳川家康の兵を挙げた理由が、よく分からなくなる。

 実力で大きく劣るお前は敗れ、俺はあの時代のルールに則(のっと)り、豊臣家を潰しにかかった。結果的にお前の行動は、豊臣政権の弱体化を早めてしまったんだ。あくまでも、結果だけどな。

 でも お前が、夢を封印してまで豊臣政権と秀頼を守りたかったのなら、他にも方法があったんじゃないか?」


「そうですね。豊臣政権と秀頼様を守るためなら、あの時、挙兵するべきではなかったですね。

 しかし、私が本当に守りたかったのは秀頼様で、豊臣政権は二の次だったのです」


「それが、秀吉の本望だっただろうからな」


「私も、そう思っていました。

 ただ、家康殿は誤解されているかも知れませんが、私は、初めから死ぬつもりで兵を挙げたわけではありませんよ。もちろん最悪の場合は、死ぬ覚悟もしていましたがね。

 あの挙兵の目的は、勝つことではなく、どこかで講和に持ち込むことでした。そして それは当然、家康殿に有利な条件での講和になります。そうやって家康殿の力をお借りして、豊臣政権を弱体化させてしまいたかったのです」


「なるほど。その方法なら、豊臣政権やその取り巻きの処分を俺にやらせて、お前は自ら手を下さずに、政権だけ弱らせることができるな」


「秀頼様も茶々様も、その器ではない者が国の頂点に居座れば、国だけではなく、自らの身にも不幸を招くだけだと、理解できないようでしたからね」


「そうだな」


「しかし、毛利輝元らの戦意が予想以上に低く、さらに私から離反していく者も相次ぎ、講和など持ち出す暇もなく敗れ、私は首を打たれてしまいました」


「つまり、あんな戦を起こしたのは、秀頼の生命を守るために、あえて国の頂点から降ろしてやるためだったんだな」


「そうです。何をどう考えても、あのときの豊臣政権まで守れる方法はありませんでしたからね。

 だから、政権などという、秀吉様亡き後の豊臣家には重すぎる荷を降ろし、秀頼様が静かに暮らせれば良いと思ったのです」


「それが、お前の忠義だったんだな。豊臣家を、ただの小さな領主にして生き長らえさせる。同時に、腐りかけた政権も解体できる」


「そうです。賭けの要素が大き過ぎるのは、承知の上でした。

 関ヶ原のあの戦がもっと長引けば、交渉次第で それができたと思っています。しかし、私が早々と捕らえられ、首を打たれて、賭けはあえなく失敗に終わりました」


「じゃあ俺は あの時、お前の首と一緒に、封印された夢と密かな賭けまで、打ち落としてしまったんだな」


「そういうことになりますが、私の夢など ただの絵空事に過ぎませんでした。打ち落としてもらって良かったのです」


「そうは思えないけどな。お前が生きた四十年での功績だけでも、この国は大きく変わったんだ。

 戦がない世の中でならば、お前はさらに力を発揮しただろう。本当は俺も、お前の夢を一緒に見たかったよ」


「秀頼様さえ守れれば、私も家康殿の国作りに加わりたかったです。そのときは、封印を解くことができたでしょう」


「そうか……ほら、やっぱり俺の言った通りだったじゃないか」


「何のことですか?」


「俺たちは、ここで会うことになっていたって、言っただろう?」


「ああ 確かに、家康殿の言った通りでした」


「やっぱり、俺とお前は似ているんだ。俺も、用のない場所へは なかなか行かない。その俺が、寄り道をして、ここへ来た。

 これは、お前に会うためだったとしか、考えられないだろう」


「そうですね。私も、家康殿に会うために、ここに来たのだと思えてきました」


「そうだよ。だから、たまには こうして……

 理路(みち)から外れてみるのも良いもんだろう?」



お読み頂きありがとうございます。毎週火曜日・木曜日・土曜日の18:00に最新話を投稿します。

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