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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第二章 学園編
48/50

第47話 誤解と修行の終焉

「ぎゃーーーー!!!」

『ほらほら、まだ感情が乱れてるぞー!』

「のぉーーーー!!!」

『そぉれ、避けないと当たっちゃうぞー!』

「んほぉぉーー!!!」

『な、なんか叫びが下品になってきてるぞー!』



 どうも、下品な叫び声のアシュレーです。

 いきなりの叫び声。どういう状況か分かる人はいませんね?いるとしたらその人は特殊能力者です。


 説明しましょう。わたくしは今、縦横無尽に飛び回る魔剣から必死で逃げています。

 そうです、あれです。

 そして、肝心の修行ですが…これがイズミさんの精神修行だそうです。

 ………どこがだよ!これただの虐待だよ!

 いや、むしろ殺人未遂だよ!最後の「んほぉぉー」のところ、攻撃避けた俺の首の皮にかすってるんだよ?

しかも威力が洒落にならない。斬撃が木や岩に当たったらバターみたいにすんなり刃が通るんだよ?斬れた断面からボロボロと崩れていってるし。

 お、俺の首大丈夫かな?かすっただけだし大丈夫だよね?



「こんなんムリですーー!」

『泣き言は聞かんぞ!散歩でもするみたいに落ち着いて避けられるようになれ!』

「本当にこれって精神修行ですかーー!?」

『……………もちろんだょ?』

「絶対嘘だー!」



 森の木々に、俺の悲痛な嘆きが木霊した。





~~~~~


『本当にすまないと思っている!』



 狼の昼寝亭の屋根の上から森の方向を眺める小さなシルエットがあった。

 24時間闘う男ではない。我らがオオイさんである。

 犬なので分かりにくいが、その表情は曇っている。


 オオイはアシュレーに嘘をついていた。

 イズミによる修行。アシュレーには精神を鍛えるためと伝えていたが、本当はそんなものではないのだ。

 ただただ、アシュレーを追い詰めるための行為。

 つまりーーー



『怒るよね…トラウマ植え付けるための修行だって言ったら!』



 オオイが同行しなかった理由。

 それは罪悪感からだった。正直見ていられないと思ったのだ。


 この方法は可哀想だが非常に効果的だ。精神の鍛練は長い時間が掛かる。はっきり言って1週間やそこらでどうなるものでもない。

 だが、トラウマを利用するこの方法なら、短時間で精神の抑制が可能なのだ。


 ”感情を暴走させたらあの修行が待っている…”


 そう考えるだけで身体が震えるほどまで追い詰める。

 それこそが、この修行の本当の意味なのだ!



『アッシュ…無事でいてくれ…!』



 期間は一週間と伝えていたが、場合によっては今日一日で終わるだろう。

 生真面目だが容赦の無いイズミ。そんな手加減のできない相方から現在進行形で行われているであろうアシュレーへの荒行を思い、オオイは瞳に涙を浮かべた。

 そしてーーー



『それにしても…アッシュって愛されてるんだなぁ。下も面白い事になってるし。』



 ぽつりと、そんな言葉を呟いた。





~~~~~


 そんなオオイの足の下、狼の昼寝亭1階の食堂。

 テーブルをはさんでベルク一家とアシュレー友達連合が向かい合っていた。

 ーーー戦いが始まろうとしていた。盛大な誤解による戦いが。


 ベルク一家は友達連合をアシュレーを悪の道へ誘う不良と思い込み。

 友達連合はベルク一家をアシュレーを虐める冷酷な人間と思い込んでいる。

 互いに自己紹介を済ませ、いよいよアシュレーについての話し合いが始まった。



「アッシュを虐めるのはやめて下さい!」

「アッシュに変な遊びを教えんな!」



 話の機微を読む事などできない2人が、ドストレートに本題を切り出した。

 


「変な遊びってなんですか!アッシュとたまに遊んだりはするけど、文句を言われるような事はしてません!」

「アッシュは俺がシッカリ面倒見るって決めたんだ!それを虐めてるとは何事だ!変な言い掛かりはやめろ!」

「言い掛かりつけてるのはそっちでしょ!?」



 ピリピリとした空気が周囲にも伝播していく。そして口撃による大乱闘が始まった。



「ウソだよぉ!イイコだったあっくんを不良さんにしたんだよぉ!そこの赤い頭の子がぁ!」

「えっ、なんでオイラだけピンポイント!?そんな事してないってば!」

「そうよ!ベルクさんこそアッシュを影でイジメてるんでしょ!知ってるんだから!」

「わうー、わうー!」

「え、そうなのパパ!?」

「そんな訳ねぇだろ!本気にすんなや!」

「オイラ、よく子供を泣かせてるのを見るよ!」

「そりゃ見た目でだろ!」

「わうー、わうー!」



 感情的になってしまったらそれはもう話し合いではない。

 わうわう言ってるだけの人も約一名いるが。

 ここらが限界と判断し、両陣営の軍師が前に出た。


 客観的に見て、どうやら互いに誤解がありそうだ。

 二人(ヴォルクとレナ)が代表して話し合う。



「お話しさせていただいて、ベルクさん一家がアッシュを大事に思っているのは理解できました。ただ、私達は最近アッシュの様子がおかしいと感じて、それについて何か覚えがないか聞きにきたのです。」

「だからそれはベルクさんがアッシュを…」

「それは無いだろう。話した限りの感想だがベルクさんがそういう人だとは思えない。」

「こちらこそわざわざ来てくれたのにごめんなさい。」

「おい、レナ、なんで…」

「お父さんは黙ってて。この人達は不良なんかじゃないわ。害そうとする人間の家にわざわざ顔を出す不良がいるわけないでしょ。」

「そうね…赤い頭の子以外はきっと不良じゃないわね。」

「だからなんでオイラだけ…」

「…お母さんも黙ってて。」



 こうして大人より大人らしい子供達によって、ようやく話し合いがまともに始まった。


 そして長い議論の末………結局、原因は全く分からなかった。

 外も暗くなり、夕食の時間も大幅に過ぎてしまっていた。



「じゃあアッシュは一体こんな時間まで何をやってるんだ?晩飯もいらねぇって言ってたし。」

「本当にねぇ…」



 ベルクとアイシアが心配そうに窓から外を見つめる。

 ちなみに宿の宿泊客も話し合いのせいで夕食抜きである。完全なとばっちりだ。

 


「…」

「どした、ヴィー?」

「もしかしたら決闘騒ぎは関係ないのかもしれないなと思ってな。」

「結局分かんないって事でしょ?」

「いや、ベルクさん達から聞いた話で俺達が知らなかった事実が一つあった。」

「えっ、何さ?」

「アッシュの親戚だ。」

「「「「「「あっ!」」」」」」



 ヴォルク以外の全員が声を上げた。今までで一番納得できる理由だ。

 聞いた話では関係は良くない(と思われている)。

 ならば、親戚から何か無理難題を言われているのかもしれない。



「読み物とかだと、女の子ならエッチな事を要求されたりするわねぇ。」

「いやいや、アッシュは男だぞ。」

「…でも、アッシュって美形よね。」

「「「!?」」」

「えっ、そうなの?」

「そうなのか?」



 メガネ姿しか知らないテッドとヴォルクはきょとんとしているが、女性陣には緊張が走っていた。

 いや、まさか…でも…

 そんな空気の中………最悪のタイミングで帰宅した男がいた。



カランカラン


「ただいま…戻りました…」



 

 メガネはしていなかったが、銀色の髪と制服でそれがアッシュだと男友達二人も気付いた。

 だが、話しの中心だった男の姿を見て、皆は凍り付いていた。

 光の無い瞳。土にまみれたのか、髪も輝きを失っている。

 制服はボロボロで所どころ破けている。纏う気配は暗く、何かに怯えるように体を震わせている。見た目は完全に…事後だ。



「どうしたんだ…その格好…」



 勇気を持ってヴォルクが問い掛ける。

 何故友達三人がここにいるのか。普段なら疑問に思うところだが、今のアシュレーにそれを問う気力は無かった。

 そして…自分の言葉がどれだけ誤解を生むのかも、考えられなかった。



「ああ…ちょっと…イズミさん(女の人)に(魔剣で)襲われてね…」

「「「「「「「!?」」」」」」」



 直後、皆が爆発した。



「うぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!なぁんてこったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

「あっくんが…あっくんが…大人の階段を三段飛ばしで…」

「わう?アシュレー君襲われたの?怪我してない?」

「私が…私が貰う予定だったのに…っ!」

「…大丈夫、大丈夫だ。どんな事があったってオイラ達、友達だろ?」

「わわわ…あんた、しちゃったの?しちゃったの?」

「神よ…この者を祝福し、悪しき者に神罰を与えたまえ…」


「…?」



 その晩、誤解を解く話し合いは日付が変わるまで続いた。


 

正しく理解していたのはアインだけでした。


感想、ブクマありがとうございます。

次回からシリアス回の予定です。

今後ともよろしくお願いします。

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