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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第二章 学園編
49/50

第48話 狙われるE級

 帝国軍人ヴォルザの人生。

 それは不幸なものと言ってしまって良いだろう。


 彼の家族は帝国ではどこにでもある一般家庭だった。父親と母親、そしてヴォルザの三人家族。

 彼の父親は彼と同じく軍人だった。寡黙で不器用な男だったが誠実で皆から信頼される男だった。

 そんな父親が彼や母親にとっても自慢だった。生活は決して裕福ではなかったが、彼等は幸せだった。


 だが、そんな生活は一変した。

 雪が降りしきる夜。父の帰りを待つ家に帝国兵が雪崩れ込んできた。訳も分からない内に彼と母親は拘束された。

 ヴォルザの誕生日の出来事だった。


 父親が帝国を裏切り処刑されたと聞かされたのは、牢獄で拷問を受けながらの事だった。

 そんな訳が無い。何かの間違いだ。

 彼が抗議する度に、看守は笑いながら彼を鞭で打ち付けた。

 裏切者が。帝国の恥が。

 帝国の事をあれ程思っていた父が、裏切る訳が無い。

 鞭でできた傷よりも、看守の心無い言葉でできた心の傷の方が、彼の心をジクジクといつまでも痛め続けた。


 彼が解放されたのは投獄されてから半年後の事だった。

 母親は獄中死したと聞かされた。

 













 彼は一人ぼっちになった。





~~~~~


 どんな街にも闇がある。それはこの牧歌的な街(フォレストサイト)においても例外ではない。

 ギルドでさえ仕事ができないような脛に傷がある者やお尋ね者達。そういった人間が集まる場所として機能するバーが、まるで光を避ける闇のように、街外れに存在していた。


 石造りの壁が冷たい印象を与える店内。煙草と安酒の匂いが混ざった濁った空気が室内で淀んでいる。

 カウンターやテーブルに座る者はほとんど何も喋らない。時たまテーブル席の男達が二言三言言葉を発するくらいだ。その内容も、人に聞かれれば顔をしかめるものばかりだ。


 そんな室内、テーブル席で向かい合う二つの影があった。

 帝国からの潜入工作員、ケイネスとヴォルザ。

 二人の活動は今もなお街の水面下で続いていた。



「元気にやってみたいだね。ちょっと背が伸びたかい?」



 敵国にいるとは思えないほどの警戒心の無さで、ケイネスは挨拶をした。

 顔を堂々と晒し微笑みさえ見せるその態度は、工作員とは思えないものだ。

 それに対する少年の態度は冷淡なものだった。



「此方から連絡しない限りお前からは基本、連絡しない決まりだろう。」

「寂しい事言うなよ。同郷だろ?それに…」



 軽い言葉で話していた男だったがーーー急に真面目な表情になった。



「最近、報告がないよ。きみの仕事は例の対象(・・)の検索だぞ。」

「…分かっている。」

「いや、分かってない。分かってるならそろそろ候補(・・)くらいは報告してるはずだ。…日和ったか。」

「判明している対象の特徴は子供というだけだ。何人学園生がいると思う。」



 2人はマンチューを捕らえたギルド員を追っていた。

 壱百人委員会からの指令である障害の排除。その障害である可能性が現段階で最も高いのがその者だったからだ。情報収集した結果、ナーガを始末したのもそのギルド員である可能性が非常に高い。

 行動を監視していないC級以下のギルド員でマンチューを倒せる程の猛者。詳細は調べれば判明するだろうと考えていたが、そう上手くはいかなかった。

 なんと判明した事は2つだけ。

 おそらく偽名であろうグリザイユという名前と男の子供である事だけだった。

 かなり重度の情報統制が行われている。もしくはそのグリザイユという男が徹底的に自分の身分を隠匿しているのだろう。

 しかもマンチューの捕り物以降、彼はギルドに姿を現していなかった。


 そのため、まだ子供であるヴォルザが学園に潜入し、該当しそうな子供の炙り出しを行っていたのだ。

 たが、入学したばかりの頃は逐一報告されていた情報が、最近無くなっていた。ケイネスの言葉はそれを指してのものだった。



「友達でもできた?表情が柔らかくなったよ?俺は前のきみの方が好きだな。」

「バカらしい。俺が学園に潜入しているのは仕事の為だ。」

「そっかそっか。安心した。ただ、まさかとは思うけど…」



 笑いながら顔を近付け、耳元で告げる。視線は彼の瞳に向けたまま。

 少しの嘘も見逃さないとばかりに睨み付ける。



「誰か見当でも?」

「…そんな奴がいるなら報告する。」



 そう言ってヴォルザは席を離れた。



「ギルドに仕掛けた釣り針(・・・)もそのままにしてる。引っ掛かったら連絡するよ。













またね、ヴィー(・・・)。」



 少年は不機嫌そうに店を出て行った。



「…さて、あいつも父親みたいな結末になるのかね。どう思う?」



 テーブルにケイネス一人しかいない状況で発されたその言葉は、周囲からは独り言に聞こえただろう。

 後ろのテーブルから、それに答える声があるまでは。



「私が知るわけない。」

「だよね。さっき言った通りの作戦でいく。きみには期待してるよ。」

「貰った報酬分は働く。」



 店のドアを見つめながら、ケイネスが呟く。



「あいつが使えないなら、こっちはこっちでやるだけさ。」


ブクマありがとうございます。

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