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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第二章 学園編
41/50

第40話 友達

 

 魔人が何故他種族と共存する道を選ばなかったのか。選ばなかったのではない。選べなかった(・・・・・・)のだ。

 それは魔人特有の特性故であった。圧倒的な潜在魔力。他種族と一線を画す特殊能力。それだけならば共存は可能であった。

 だがしかし、魔人には他者を遠ざける根本的な原因があった。

 それが、内に宿す残虐性である。


 この残虐性は魔人であれば多かれ少なかれ、どの様な者にも存在する。その者がどれだけ理性的であろうとも。その者がどれだけ慈愛に満ちていようとも。

 むしろ普段が残虐というそれとかけ離れていればいるほど、それは色濃く浮かび上がる。大海の様に全てを包む慈愛にも底の見えない昏く深い深淵(しんえん)が。

 太陽の様に明るく温かい心根にも、それに照らされる夜の月の如き凍える輝きが。

 光に対する影のように善と悪を内包する。

 魔人の血を受け継ぐ限り、その(ごう)からは逃がれられない。



アルバート・ドグ著

「魔族概論」より抜粋





~~~~~


「クハハハハッ!!!」

『はははっ…て。…こりゃ洒落にならないな。』



 イザベラ学園、闘技場。

 そこには恐ろしい光景が広がっていた。ひび割れた建物。陥没する地面。燃え滾る山の火口を覗いたかの様な高温。そして、致死性の攻撃魔法が空間を埋め尽くしている。

 炎、氷、風、雷、岩。(いにしえ)の大戦でもこんな危険な戦場は数える程しかなかっただろう。

 その戦場の中心には2つの影。黒い魔力を噴き出し、瞳を狂気に染める少年。それに対するのは体調30センチの豆しばだ。

 これから始まる戦いは、誰の目にも触れない戦い。だがしかし、この世界の歴史上、屈指の戦いである。



『まずはこれから。〈万象の王(エレメンタルマスター)〉。』 



 中空に浮かんでいた数多の魔法。それらが一気にアシュレーを襲う。



「ガァァァァァァ!!!」


ドッパァァァァン!



 飛翔する魔法は、アシュレーに届く前に砕け散った。

 魔力を乗せた咆哮。

 ただそれだけで。



『威力を抑えたとはいえ、こんなにアッサリ防ぐなんてね。凄まじい魔力だ。ほとんど神々(ぼくたち)側と言ってイイ。…これはこのままじゃ無理か。』

「ゥゥゥゥゥ?」



 そう呟き、オオイは周囲に目を走らせる。周囲には生徒達が倒れたままだ。



『〈転移門(ゲート)〉。』



 その詠唱で闘技場は2人きりになった。〈転移門(ゲート)〉を生徒達の真下(・・)に展開し、強制的に転移させたのだ。



『これで遠慮はいらなくなったけど…正直余裕が無いね。』



 ステータス面で劣っていたとしても、オオイの優位は覆らない。例え犬の容姿であろうとも、”神”である事に変わりないのだから。

 だが、神は現世への介入を制限される。強大な力を持とうとも無暗に振るう事は出来ないのである。それを無視してしまえば、オオイは現世に形を保てなくなる。

 むしろ今の魔法の行使でいっぱいいっぱいだった。



『だからといって、君をこのままにはしておけない。その状態の君が誰かの目に触れれば…やっと手に入れた君の日常は、あっけなく終わるだろう。』

「ハァッ!!!」

『おっと。』


ドゴンッ



 オオイが後ろへ下がった直後、その場が陥没した。その中心にはアシュレー。視認不可能な速度で攻撃が繰り出されたのだ。



「ガァッ!!!」

『アッシュ!目を覚ませ!』



 闘技場の至るところが陥没していく。アシュレーの魔力を込めただけの拳で、頑強な岩の舞台が破壊されていく。避け続けるオオイにも余裕はない。だが、それ以上に、アシュレーに(・・・・・・)余裕がない。


 アシュレーの拳から血が滴っている。筋肉の軋む音が闘技場に響いている。明らかに限界を超えて肉体を使用していた。にも関わらず、アシュレーは意にも解さない。今は動けているが骨も数か所折れているだろう。

 このままではアシュレー自体が壊れてしまう。



『後は頼んだよ、豆太郎。』

「(…オオイ様?)」



 オオイは決意する。憐れなこの子(半魔)を救うため。そして、自身を手伝ってくれていた子犬に別れを告げた。



『君は僕にとって、子であり、弟であり、そして…友達だ。』

「ウ、ウウゥゥ…?オオイ、サ…ン?」


『静寂の海に沈め 憐れなる子羊よ 大樹の木陰に休め 道を(たが)えし旅人よ 天に楯突き徳を唾棄する咎人よ 御霊を鎮め その身を鎮めよ』


「(オオイ様!!!)」

『…僕は消えない。ずっと一緒だ。』



 静かに青い光が広がる。そして目を開けていられない程の光が、闘技場を埋め尽くした。



『〈静かの海(マレ・トランキリタス)〉』



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