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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第二章 学園編
40/50

第39話 狂える半魔

謎のデータ消失。

心が挫けそう…

「ふはっ、ふははははははっ!」

「熱っ、あっつぅぅぅ!」


「アシュレー選手、逃げる逃げる!ブリッツ選手の魔法の前に成す術もありません!絶体絶命だー!!!」



 くそ、好き勝手言ってくれてるな。実況のシャーリーに心の中で悪態をつく。

 炎を避けるため闘技場を駆け回りながら俺はほとほと困り果てていた。

 俺とアホ貴族ブリッツとの決闘。お互いが同じ条件での勝負は俺に軍配が上がったかに見えたが、ブリッツの暴走でそれは振り出しに戻った。

 ブリッツは魔法を使ってしまったのだ。対して俺は魔法は使えるが、この場では使えない。



「きみ!ギブアップするか!?」

「しませんよ!」



 立会人のラムダさんが俺を心配して降参を勧めてくる。

 勝つ事は簡単だ。ハッキリ言ってこの程度の火力なら火傷はおろか肌が赤くなることすら無いだろう。問題はこの状況から勝ってしまえば間違いなく目立ってしまうという事だ。

 あ~もう!何でこんな事で悩まないといけないんだ!



「ブリッツ、やり過ぎです!貴族として恥ずかしくないのですか!」

「そうだそうだ!貴族のねーちゃんもっと言ってやれ!」

「あんた貴族なのにいい奴ね!」

「え、あ、ど、どうも。」

「こ、こら!2人とも…!申し訳ない、うちの連れが…」



 客席からのベルさんの糾弾にテッドとユキカゼがおっちゃんおばちゃんみたいに絡んでいる。ヴィー、君だけが俺に残された最期の希望だ!頑張れ!



「くっ!ちょこまか動きやがって!さっさと当たれ!」

「だが断る!」



 そんなブリッツの顔に焦りが浮かんでいる。何故?と思ったが俺は気付いた。

 燃料が無ければ火は燃えない。

 奴の手からーーー正確には指輪からだが、竜のブレスみたいに吹き出るあれは、制限無しに出せるものではないのだ。おそらく石に魔力をストックしており、それを使っているのだろう。



「(だったら簡単だ…!)」



 燃料切れまで逃げれば良い。


 だけど、方針を決めた俺は忘れていた。目の前の男が屑だという事を。

 いや、言い訳になるかもしれないが、俺は考えてすらいなかった。そこまでやるとは、考えてすらいなかった。



「わうー!アシュレー君、頑張れ!」



 アインの声援が響いた。

 他の観客もほとんど俺を応援していたが、アインのそれはタイミングが悪かった。

 コケにされた怒り。攻撃が当たらない苛立ち。魔力切れへの焦り。積もり積もったそれが、奴を凶行に駆り立てた。



「…!黙れ!この獣風情がー!!!」

「わう!?」

「なっ!?」



 炎が放たれた。客席のアイン(・・・・・・)に向かって。



「避けろ!!!」

「あ…う…」



 アインも突然の出来事に固まってしまっている。距離が遠すぎる!間に合わない!

 獲物に飛び掛かる蛇のように、真っ赤な炎がアインへと伸びていく。

 そしてーーー



「うわぁーーー!!!」













 間に割って入った、ラムダさんが炎に包まれた。



「ぐあぁーーー!!!」

「ラムダさん!?」

「きゃーーー!!!」

「う、うわ!燃え移るぞ!」

「に、逃げろー!!!」



 観客席は一瞬で阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。出口へ殺到する生徒達。

 俺は人を掻き分けて急いでラムダさんに駆け寄った。火は既に消えているが背中からブスブスと煙が上がっている。



「ラムダさん!大丈夫ですか!?」

「う…くっ…決闘は中止、だ…!ブリッツ、君の反則負けだ…!」



 良かった…背中に結構な火傷を負っているが命に別状は無さそうだ。それに決闘も奴の反則負け。これで終わりだ。



「はっ!ギルドで日銭を稼いでる様な底辺が僕に指図するな!そのメガネを丸焼きにするまで終わりではない!」

「なっ!?」

「ーーーあ…?」



コイツは何をほざいてるんだ…?



「客席に火が…!みんな逃げろ!」

「煙が…!全員出口に急げ!」



これ以上、何がしたいんだ…?



「君も…逃げろ。あいつは俺が…止める。」



関係の無い人を巻き込んで。



「オイラ達も逃げなきゃ!ユキカゼも早く!」

「けどアッシュが!」

「2人とも来い!ベルクローネさんも!アッシュ!外へ出るんだ!」



大切な人を傷付ケ…テ。



「コノ…」

「はぁ?怖くて口も聞けんか、平民?」

「コノ…クソガァーーー!!!」


ドゴォーーーン!!!


「なっ!?ひぃ!?」



 圧倒的な力で噴出する魔力。俺の体表を舐める様にバチバチと火花を散らす。

 本来、魔法という型を与えてやらなければこの世に力を振るう事が出来ないそれ。

 だがしかし、桁違いの俺の魔力はそんな常識を無視して猛威を振るう。

 闘技場が激しく揺れ、地面が俺を中心にクレーター状に陥没していく。壁や天井に静かに、だが確実に亀裂が走っていく。



「こ、この化け物がぁ!」



 ブリッツが向けてきた炎は、中空で掻き消えた。そして指輪が粉々に砕け散る。



「な、なななぁ!?」



 怒りで目の前が真っ赤に染まっている。にも関わらず、それを冷静に観察している俺もいる。

 冷静な俺が、怒る俺にそっと囁く。



「ほら。そこに生きている意味のない存在がいるよ。」



 冷静な俺が指さす先には、害虫がいた。



「ひっ、ひい!?」



 腰を抜かした状態。股間を濡らしながらカサカサと後ろ向きに後ずさっていく。

 ははっ、本当に虫みたいダ。



「あいつは生きてる限り、君の大切な存在を傷付けるよ。」



 ああ、そうだね。自分が害悪である事を、全く理解シテイナイ。



「だったら処分、しなくちゃね。これは仕方ない事だよ。」



 ソウダネ。仕方ナイ。



 冷静な俺が判断したんだ。間違いない。アイツは処分しなきゃ。

 そう決意したところで、俺の目の前が白く染まった。



「…?」



 あれだけ騒がしかった周囲が耳が痛くなる程の静寂に包まれる。これは…霧か?

 2、3メートル先すら見えない状態。そして数秒後、霧が晴れると静寂の理由が判明した。

 皆が地面に倒れていた。生徒も、ラムダさんも、害虫も。

 動く存在は俺1人になっていた。

 いや、俺に向かってくる小さな影が1つある。



転寝霧(スランバー)。効果対象を睡眠状態にし、前後数分の記憶を消去する。』

「オオイ、サン…?」

『怒りで力が目覚めたか。…だけどその力は、今の君が使うには大きすぎる。』

「ウッウウウ…」



 邪魔ヲスルなら、オオイさんでも処分シナキャ。



「ガアアアアァァァァ!!!!」

『やれやれ。手加減して戦える相手じゃないね…!』



次話、オオイさんが魅せる!

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