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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第二章 学園編
34/50

第33話 クールボーイ

「ぜぇ~…ぜぇ~…ぜぇ~…」

「大丈夫か?やっぱり休んだ方が…」

「ぜぇ~…ぜぇ~…ぜぇーーーっ!!!」

「む、無理すんなよ?」



 昼前の4時限目、各クラス合同の体育授業。

 教師から言い渡されたノルマは学園外周を5周。

 走るペースについては個人に一任され、走り終われば昼休みにして良いという話に学生は我先にと走り始めた。

 1周1キロ、5周で5キロ。

 俺なら1周1分以内、全力ダッシュでも餓死するまで走り続けられる。

 だが目立つのは不味い。

 そのためクラス内で中の下くらいの位置取りで手加減しながら走っていた。

 合同授業なのでアインとも会えると思ったのだが、集合からランニング開始時間まで偶然か避けられているのか、出会う事は無かった。


 そんな訳でテッドと俺とで走っていた訳なのだが。

 しかし彼はヤンチャな見た目にも関わらず体力は普通より下だったらしい。

 無理して着いてこなくても良いと念を押したにも関わらず、我が友人は必死に食らいついてきた。

 その結果が俺と並走するこのリビングテッド…ではなくテッドだ。

 顔が真っ赤な頃はまだ笑って見ていられたが白、紫、青のお色直しに今では恐怖しか湧いてこない。

 休めと言っても聞かないし、しかも気を使って速度を緩めると物凄い形相で睨んでくる。

 どないせぇっちゅうねん。

 もう1人の学友(ユキカゼ)は声を掛ける前に笑顔で猛ダッシュかましてさっさと行っちゃうし。

 


 このままでは俺の胃に穴が開く。

 …仕方ない。ここは強引に休ませるか。



「テッド。前もって言っておく…すまん。」

「ぜぇ~…ぜぇ~……?うっ!?」



 その直後、崩れ落ちるテッド。

 俺は滑るような動きで倒れるテッドを背負い、そのまま何事も無かったように走る。

 限界に達して気絶、ではない。俺が超高速で首筋に手刀を当てて落としたのだ。

 常人に目視できる速度ではないので、周囲には過労でのダウンに見える事だろう。



「おい、大丈夫か?」

「ん?ああ、大丈夫です。」



 声を掛けてきたのはBクラスの男子だった。

 俺と同じ速度でずっと俺の少し前を走っていた子だ。

 この辺りでは見掛けない水色の長髪、褐色の肌が目を引く。

 


「多分疲れただけだと思います。倒れてからの方が顔色が良くなってますし、心配無いでしょう。」

「そのようだな。俺も後ろから聞こえるヤバい呼吸音のせいで気が気じゃなかった。」

「はは、御心配をお掛けしました。」



 何となくそのまま並走する俺達。

 残るはあと半周。さすがに先生もこの状態のテッドを走らせる事はしないだろう。

 ゴール地点の校門までこのまま行こう。


 その間、彼と世間話をする。



「俺はヴォルク。ヴィーと呼んでくれ。」

「俺はアシュレーといいます。親しい人からはアッシュって呼ばれてるんで、それでお願いします。」

「ああ。よろしくアッシュ。あと、敬語は不要だ。同い年だし学友だろう?」

「そうです…そうだね。」



 物凄いしっかりした子だな。

 いや、同い年の俺が言うことじゃないんだけどね。

 だけど何ていうか大人びた雰囲気だ。

 10歳の子供とは思えない話し方に知性を感じる。



「それにしても凄い体力だな。」

「え?体力?」

「5キロ走り終えようとしてるのに人1人担いで息切れ1つしてないじゃないか。アッシュはかなり体力があるみたいだな。」

「そういうヴィーも息切れしてないね。ペースも一定だし。」

「鍛えてるからな。アッシュは何かやってるのか?」

「俺は特に何も。ただ田舎育ちで山とか森とか走り回ってたから。」

「なるほど、野生児か。」

「その言い方好きくない。」

「ははっ、すまん。」

「はははっ。」


 何だろう…楽だ。

 オオイさんの加護の影響か元々か、俺はどうにも他の子供達と同じ目線で話が出来ない。

 楽しくない訳ではないが、たまにズレを感じるのだ。

 話す場合は意識して自分の素が出ないようにしないと子供っぽく見られない。

 意識していてもたまに子供らしくないと言われるのだから、もし意識していなかったら今頃変な子扱いだったろう。

 だけどヴィーは彼自身大人っぽい性格であるためか、俺も全く飾らずに接する事が出来た。

 いわゆる、”話していて楽”な感じだ。



「…何だろうな、アッシュとの会話は気を遣わないで済むから楽だな。」

「俺も同じ様に感じてたよ。バカにする訳じゃないけど、周りの子達とはちょっとズレ(・・)を感じる時があって。」

「実は俺もなんだ。クラスは違うけど仲良くしてくれると嬉しい。今日の昼食、一緒にどうだ?」

「もちろん良いよ。学食派?」

「ああ。遠方からこの都市に来ていて、今は寮暮らしだ。」

「ああ。そういえばユキカゼが寮には自炊の設備は無いって言ってたっけ。」

「ユキカゼ?」

「クラスメイトだよ。今度紹介する。」



 こうして学食で昼飯を一緒に食べる約束をして、俺達は校門に到着した。

 テッドを芝生の上に寝かせ休憩していると突然の大声が聞こえてきた。



「これだから田舎者は嫌になる!立場の違いも理解出来ないとは!」

「生まれなんて関係ない!貴族っていうのは善悪の区別もつかないの!」



 激しく罵り合う男女の声。

 男の方に聞き覚えは無かったが、女の声には聞き覚えがあった。



「何の騒ぎだ?」

「あ~、思ったより早く紹介出来そうだ。」

「じゃああの子が?」

「うん、さっき話してたユキカゼ。」



 言い争いをしていたのは、1人の男子とさっきまで話していた噂の本人だった。

 彼女は背中に背の小さい女子を庇っている。


 頼むから平穏に過ごさせてくれよ。どうして君はそうトラブルを吸い寄せるんだ。

 学園に入って2週間。

 ユキカゼと行動を共にした結果、彼女がヘビー級のトラブルメーカーである事が判明していた。

 彼女自身の竹を割った様な性格は好感が持てるのだが、以前感じた通り毒舌がネックだった。

 今回も騒ぎ→揉める→毒舌→悪化の流れだろう。



「はぁ…どしたの、ユキカゼ。」

「あ!アッシュ、聞いてよ!この男がこの子を突き飛ばしたの!」

「ふんっ、Aクラスの俺の進路にいるからだ。周回遅れでタラタラ走りやがって。」

「そんな言い方ないでしょう!?」

「まあまあ…」



 関わっちゃったよ、Aクラス。

 叔父さんの言ってた通り、選民意識的なものが滲み出している。

 受けつけないんだよな、こういう奴ら。

 だけど放置も出来ないしな。



「気に障ったんだろうけど、突き飛ばすのは良くないと思うよ?」

「ふん、貧乏人と一緒の学園というだけでも我慢しているんだ。邪魔だから退けただけだ。」



 残酷な言葉に、庇われている女の子は今にも泣きそうだ。というか泣いてる。

 こいつ…お仕置きしてやろうか。だけど暴力沙汰はまずいしな。

 平和的にこいつをぶちのめ…更正させる方法を思案しているとヴィーが前に出た。



「貧乏人、か。しかし話を聞く限り、貴族というのは金はあっても心は貧しいのだな。」

「何だと!?」

「走り、疲弊している小さな女の子を突き飛ばし悪びれもしない。狭量と言われても否定できまい?」



 ヴィーが言い争う2人の間に立つ。

 遠巻きに見ていた生徒も加速する険悪な空気にオドオドしている。



「こ、こいつが悪いんだ!俺は正しい!」

「君の名前など興味もないが、自身の行いに何の問題もないのなら宣言してみろ。家名を名乗り、「自分は小さい女の子を突飛ばし、泣かせたけれど、これが正しい貴族の姿です」とな。」

「くっ…」

「覚えておけ。身分とは背負うものだ。笠に着るものではない。…消えろ、目障りだ。」

「~っ、貴様…覚えていろ。」



 Aクラスの男子は捨て台詞を残してその場を立ち去った。


 ヴィーさんマジ男前!女だったら惚れてるわ!

 現に助けられた女の子や周囲の女子の一部が熱っぽい視線でヴィーを見ている。

 くっ、これだからイケメンは!


 助けられたもう1人、ユキカゼはーーー



「あー!私がやっつける予定だったのに!」



 むしろ歯向かっていた。

 いや、どうやっつける予定だったの?

 方法が無かったんなら、その予定は未定だよ。

 まあ、口で解決して良かった。

 平和が一番ですよ。そしてもう少しで昼休みですよ。



「ヴィー。もう昼だし飯行こう。」

「ああ。何かお薦めある?」

「あの学食、結構麺系が優秀なんだよ。」

「そうなのか。定食メニューばかりだったから盲点だったな。」



 後々の処理が面倒臭そうだったし、こういう場合は構わず放置した方が楽だ。

 俺の飯の誘いにヴィーは普通に乗ってきた。

 ちゃんと俺の意図は伝わったらしい。

 ケンカ現場をそのままにして、俺達は学食へと歩き始めた。

 


「あいつ何かしてくるかな?」

「どうだろうな。まあ、された時に考えるさ。」

「本当に男前だな!」



こうして他のクラスに、男前の友人が出来た。













「あれ?何か忘れてるような…?」



 芝生に放置したままのテッドの事を思い出したのは5時間目の始まり。

 誰も座っていない彼の椅子を見てからだった。 



最近時間が取れず更新が遅れています。

申し訳ありません。

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