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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第一章 幼年編
16/50

第16話 いじめられっ子のウサギ

 アシュレーとベルクリオとの関係とは?

 そして、新ヒロイン登場です。

「こんにちは。お楽しみのところ失礼するよ。少しだけ時間、良いかな?」



 フォレストサイトの領主、ベルクリオ。

 父さんが頼れと言った人。

 俺がこの街で会うべき人。

 アイン達のために接触を避けてきた男が、向こうから会いに来てしまった。……まずい、頭が全然働かない。昨日から今日に掛けて、こういう突発的なアクシデントばかり起きている気がするな。固まりながら渦中の人と見つめ合っていると、彼はベルクさんの方に視線を移した。そして、深々と頭を下げる。



「今回の事件では、私の部下が本当に迷惑を掛けた。すまない。」

「そ、そんな、頭を上げてください!俺…私達は、ベルクリオ様がどれだけ立派な方かを知っています!それに、事件を起こした貴族の人も処分されたんでしょう?」

「………ああ、既にこちらで捕らえて、然るべき処置をしている。だが、だからといって私が謝罪しない理由にはならない。私の安い頭を下げることと、金銭的なことでしか誠意は見せられないが…」

「こうして直接会いに来て下さったことと、今のお言葉だけで十分です。」

「奥方も、本当にすまなかった。」

「ちょっとビックリしちゃったけど、無事だったからイイですよ~。」

「こ、こら、アイシア!」

「はは、そう言ってもらえるとありがたい。」



 このベルクリオという人は、領民からかなり慕われているらしい。ベルクさんも尊敬しているみたいだし、今のやり取りからも決して偉ぶらない、真摯な人だと感じ取れた。血統至上主義みたいな人だったらどうしようと不安だったけど、優しそうな人で本当に良かった。

 ベルクリオさんは後から入ってきた鎧を着た衛兵達に、先日小間使い風の男が渡してきた書類とお金の入った麻袋の回収を指示している。おそらく証拠品として必要なのだろう。合わせてベルクさんやアイシアさんにも衛兵達が事情聴取を行っている。

 その間暇になったのか、ベルクリオさんが食堂の隅で静かにしていた俺とアインの所に真っ直ぐ向かってきた。

 …しまった、逃げておけば良かった。まあ、逃げる必要があるかないかは分からないが。



「やあ、こんにちは。」

「「こ、こんにちは。」」

「ここに来る前に調べたけど、この家に息子はいなかったと思ったけど。」

「私はこの宿で世話になっている者で、家族ではありません。今回の宴も、ベルクさん一家のご厚意で参加させていただきました。」

「ほう…まだ幼いのに随分と礼儀正しいね。…ただ、それだけ礼儀正しいのに名前を言わない(・・・・・・・)のは不自然だったね。」

「ーーー!」

「?」



 ベルクさんの真紅の瞳が俺を射抜く。優しげな瞳の奥には、あらゆる事象を見通すかのような思慮深さが見て取れた。流石、多くの部下を従える領主という立場にある人だ。アインは俺達のやり取りを不思議そうに見ている。


 どういう風に把握されているかは分からないが、俺のことについて知っていると思って良いな。フォレストサイトは領内に入るのに身分証の提示が必要不可欠だ。

 俺は不法に侵入して領内で身分証を手に入れ、それからギルドの仕事で出入りを繰り返している。出入りを調査すれば、俺は入った形跡がないのに領内から出てきたという、明らかな不審者だ。身分証を手に入れた時、一旦外に出て門から入れば良かったのだろうが、あの時はそんなところまで気が回らなかった。

 だが、そんな不審者と思われているなら、領主が護衛も連れずに近寄るだろうか?とりあえず、黙っていても始まらない。もしかしたら、こちらの事情を知っているのかもしれないし、正直に話してみよう。 



「………申し遅れました。私の名前はアシュレー・シーグラムと言います、ベルクリオ様。」

「…そうか。なぜここで世話になっているのかは分からないが、無事で良かった。」

「!?俺…私のことを知っているのですか?」

「?ああ。先日アグラから手紙が来て、君達一家に起きた事件については知っているよ。」

「父さん達は無事なんですか!?」

「ああ。手紙には無事に逃げたと書いてあったよ。君も本当に無事で良かった。君が私の所に来て世話になっていることを前提にした内容の手紙だったからね。捜索班まで立ち上げちゃったよ。」

「す、すいません。ご迷惑をお掛けしまして…」

「さっきから気になってるけど、もっと崩した話し方でイイよ?君と僕の間柄だ。君が隠し通路を使ったところまではもう判明していたんだ。領内に居るのは分かったし、門から出入りもしてたから、見つけるのは時間の問題だったよ。」

「はぁ…(間柄?)」

「アシュレー君、領主様と知り合いなの?」

「父さんが知り合いなんだ。昔お世話になったって。」

「えっ?」

「えっ?」



 アインの質問に答えると、ベルクリオさんが不思議そうに声を上げた。俺、何か変なこと言ったか?思わず俺も同じように返してしまった。耳元でベルクリオさんが小声で話し掛けてくる。



「ここの皆には隠すつもりなのかい?」

「?ここまで来たら正直に身の上を話します。ベルクさん達にはお世話になりましたし。…話さなかった方が良かったでしょうか?」

「ちょっと待て…さっきから微妙に噛み合わないこの会話………まさかあの子(・・・)、君に話してないのか?」

「あの子?母のことですか?」

「………まったく………」



 やれやれといった風にベルクリオさんが苦笑いしている。何か可笑しなこと言ったかな?そんな時、衛兵の1人がベルクリオさんに耳打ちする。



「ああ、わかった。…必要な捜査はこれで終わりだ、宴の続きを楽しんでくれ。明日にでも屋敷に来てくれ。明日はずっと在宅している予定だし、詳しい話はそこでしよう。今日はこれで失礼するよ。」

「え、あの、ちょ………」



 そう言い残し、ベルクリオさんは捜査を終えた衛兵達を引き連れて帰っていった。

 俺の疑問を放置したまま。



「行っちゃった…」

「う、うん。結局、何だったの?」

「さ、さあ。」



 アインは気になっている様子だが、今のところは話さない方が良いだろう。身の上を話すのはベルクリオさんの様子からも問題ないようだったが、俺と彼には何か重要な関係があるみたいだ。それがハッキリしない状態で部分的に話しても後から混乱するかもしれない。明日教えてくれるって話だし、気にはなるが今は宴会の続きだ。 

 俺は皿の上で肉に突き刺さっていたフォークを手に取り、そのまま口に詰め込んだ。





~~~~~


「いい加減、機嫌直して下さいよ~」

「きゅ~?」



 翌朝の商店街。

 俺は豆太郎を連れて散歩に出ていた。昨日はあまり構ってやれなかったし、中に入ってる神様の様子も窺いたかったのだが、何度話し掛けても豆太郎からオオイさんに切り替わらない。昨日、宴会からハブにしたことを根に持っているらしい。



「ずっとそうやって引っ込んでるつもりですか?オオイさんにも原因があるんですよ?」

『………僕もご馳走、食べたかった………ふぁん。」



 ………子供か!

 出てきたと思ったら、完全に拗ねてらっしゃる。まあ、今は放置するしかない。俺は商店街の人達に挨拶しながら昼寝亭への帰路に就いた。



「ただいま~」

「あっくん、お帰りなさい。ご飯できてるから食べちゃいなさい。」

「はい、いただきます。」

「今日はアインが頑張って作ったのよぉ~。アシュレー君に食べさせるんだって。」

「お、お母さんってば--っ!(ポカポカポカ)」

「アインってば、イタイ、イタイよぉ~(笑)」

「ははは…」



 アインがアイシアさんの背中に体当たりして駄々っ子パンチを繰り出している。恥ずかしがり屋の彼女の顔は火が付いたように真っ赤だ。どう反応して良いか分からない俺は、曖昧な笑いで受け流す。アイシアさんの謝罪で少し落ち着いてから、俺達はアイン特製の朝ご飯を食べる。

 メニューは黒パンとベーコンエッグ、サラダとシンプルなものだ。特殊な調理を必要としない料理だし、味も問題ない。



「うん、美味しいよ、アイン。」

「で、でも、簡単な料理だし…」

「いやいや、俺だったらこのベーコンエッグも炭化させる自信があるね。」

「ふふ、そんな訳ないよ。」



 どうやらアインの機嫌も直った様子だ。犬耳&犬シッポがワッサワッサ揺れている。アイシアさんはその様子を見て、俺にサムズアップ。本当にお茶目な人妻だ。





~~~~~


 朝食からしばらくして、俺はベルクリオさんの言葉に従って屋敷へ足を向けていた。フォレストサイトのど真ん中の大通りを進んだ先の、一番大きな屋敷。いつかのエンゼルマリー(覚えてる?)みたいに迷う心配はない。時折すれ違う馬車を避けながら、石畳の道を歩いていく。

 ちなみに犬連れはマズイだろうということで、豆太郎オオイさんは留守番だ。あの様子だと助けてもくれないだろうしね。


 街の中心の広場から少し屋敷に寄った場所。大通り沿いの大きな公園がある辺りで、その泣き声は聞こえてきた。



「うぇ~ん、やめてたも~…やめてたも~…」

「何だよ、その耳!お前の父ちゃんはそんな耳してないだろー!」

「きっと本当の子供じゃないんだぜ!」

「違うのじゃ~…この耳は(わらわ)の母上譲りなのじゃ~」



 公園脇の砂場、しゃがんで頭を隠している女の子。その頭からは手では隠し切れない、綺麗な黒髪とウサギの耳が覗いていた。顔は伏せていてよく見えないが、年は俺より少し下くらいだろうか。せっかくの可愛らしい黒のワンピースが、そこら中砂で汚れてしまっている。

 そして女の子の近くには、その汚れの原因であろう、俺と同い年くらいの男の子2人。


 イジメ、か。

 人種差別がない国風といっても、やはり全くない訳ではないのだろう。女の子は獣人ゆえの特徴でイジメられていた。特に子供は時によって大人よりも残酷だからな。

 まあ、俺も子供だが。…このセリフ、最近使ってばかりな気がするな。



 村で暮らしていたときは、同じ年頃の子供が少なかったのもあるかもしれないが、イジメなんて全く見たことがなかった。母さんから習った勉強の中で、そういったものがあるというのは知っていたが。絶対にしてはいけないことだと母さんは言っていた。

 でも、母さん………



「面白れ~、頭の上から生えてるぜ!」

「イ、イタイのじゃ、やめで、やめでたもー!」



 する、しない以前に、もう、俺の怒りゲージが振り切れそうだよ。

 俺が思う確かなことは、あと一言でもあいつらがあの子を傷付ける言葉を吐いた瞬間、俺はたぶん…プッツンするだろうということだぜ。


 

「亜人は、山か洞窟ででも暮らしてろよ!」

「そうだ、人間の街に入ってくるな!」



 プッツーン



「……お前達、その子から離れろ。」

「ううぅ………っ?」

「何だお前?見ない顔だな!」



 いきなりオラオラ殴るわけにはいかない。まずは話し合いだ………っ。



「亜人を庇うのか?亜人は汚いから近付くと病気になるぞ!」



 OK、無理だ!!!

 俺、こいつらブッ飛ばす!!!



「そうか?お前達の顔面と性格の方が、吐き気がするほど汚いぞ?」

「何だとテメェ!」

「この野郎!」



 殴りかかってくる男の子2人。俺もカウンターで思いっきり殴ってやりたいが、俺が本気で殴ったら頭部が千切れ飛んで爆散してしまうだろう。流石に殺すのはマズイ。

 俺は2人から突き出された拳を化勁で受け流し、少女の前まで歩み寄る。拳を流された2人は、そのまま俺の後ろへ倒れ込んだ。

 ありがとうございます、イズミさん。あなたの加護と知識は本当に役立っています。

 …会ったことないけどね!



「…大丈夫?」

「う、ううぅ、だ、誰、じゃ…?」

「…心配しないで。俺が助ける。」

「ーーーっ!」



 少女にそう約束し、俺は砂場に突っ伏す男の子2人に視線を戻す。



「こいつ!」

「カッコつけやがって!」



 立ち上がり、また俺に突っかかってこようとする2人。……イジメられる側の立場を味わえば、二度とこんなバカな真似はしないだろう。



「〈アースバインド〉!」

「な、何だ、これ!」

「うわぁ、体が!」

「ま、魔法……!」



 俺は2人の身体を土でガチガチに固めていく。見た目は地面に固定された土人形状態だ。ただし、目元と腹と下腹部だけは土で覆っていない。初めて魔法を見たのだろう、2人の目が恐怖に染まっている。…この子はもっと怖かっただろうし、痛かったはずだぞ。



「…盛大に腹を下せ。〈クールウェイブ〉。」



 そして、冷風を吹き付ける魔法を最低威力で2人の腹にお見舞いする。拘束時間は2時間程度。後はお分かりだろう。多くの子供が遊ぶ公園という場所で、全く動けない、腹を冷やした2人の末路を。

 ふっ…スーパーウンコブラザーズと呼ばれるがいい。


 

「人の痛みを知れ。……君、立てるか?」

「う、うん、なのじゃ。(///)」



 俺はドS気分から一転、穏やかな笑顔で少女に声を掛けた。



 アシュレーに精神汚染(オタク化)の前兆が…


 今週から仕事が忙しくなるので、次話投稿が遅れると思います。

 可能な限り隙を見て書き進めますのでご容赦下さい。

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