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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第一章 幼年編
15/50

第15話 天然ジゴロ

 前もって言っておきますが、アシュレー君の容姿は、村育ちで比較対象が居なかったせいで気付いていませんが、かなりのイケメンです。

 そして、これから女の子が続々出てくる予定です。

 ………つまりは、そういうことです。 

 いつもは活気に溢れている朝の狼の昼寝亭。だが、いつもは騒がしいその店内は静まり返っている。領主のベルクが執務室で悲鳴を上げている頃、こちらのベルクは1階の食堂で一睡も出来ずに項垂(うなだ)れていた。昨日からの客もその通夜のごとき雰囲気に、早々に宿を出ていた。もう自分の所に帰ってはこないだろう、奴隷となってしまった最愛の妻。自身の不甲斐なさでそんな身の上にしてしまった大切な半身を思い、ベルクは苦悩していた。



カランカラン

「ただいま~♪」

「ふぁんふぁん!」



 そう、その半身が帰ってきたことにも気付かないほどに、苦悩していた。



「(アインはまだ小せえ。あんまり理解出来ていないみたいだったが、伝えない訳にもいかねぇ…)」

「あれぇ?どうしたの、この雰囲気?」

「きゅ~?」

「(今は自分の部屋に戻って休んでるが、アッシュがついててくれて本当に助かった。今の俺じゃ、まともに話も出来ねぇだろうしな…)」

「何かあった、パパ?」

「ああ、アイシアがいなくなっちまった…」

「帰ってきたよ?」

「ああ、お帰り。」

「(入院しているレナには伝えられねぇ。病気が悪化してしちまう可能性もある。けど、病気を治して家に戻ってくれば分かっちまうことだ。)」

「うん、ただいま。」

「ふぁん。」

「………………………………あ?」



 ベルクの目の前には、もう会えないと思っていた妻の姿。ついでに足元に豆しば。



「だ、ど、な、お、あ、うえぇ!?アイシア!!!」

「うん、ただいま。」



 ベルクは意味不明の大声を上げながら必死にアイシアを抱き締める。失いかけていた大切な温もりを抱き締める。もう二度と離さないように。



『良かった良かった。』

「うん?何か言ったか?」

「え?何も言ってないよ?」

「きゅん。」

「あぁ…気のせい、か?」



 こうしてレナという問題は未だに残っているものの、小さな神様の力で狼の昼寝亭の平和は守られた。





~~~~~


 そんな微笑ましいイベントが発生している宿の2階で、別のイベントが発生していた。



 「(分からない…)」



 泣いていたアインを彼女の部屋まで連れていき、泣き疲れて眠るまで一緒にいてあげた。その後、まだ子供とはいえ同じ部屋にずっと居るのはマズイだろうと思い、自室に戻ってベッドに身体を投げ捨てたところまでは覚えている。なので、今朝起きてからのこの状況が、本当に分からない。



モゾモゾ

「わうぅ~ん…(ペロペロ)」

「おっふぉっ」



 分からない。

 アインに、体に両手を回されて抱き着かれている、この状況が。首元に顔を埋められて首筋を舐められている、この状況が。いや、1つだけ分かることがある。それは、この状況がめっちゃマズイということだっっ。



「落ち着くんだ……素数を数えて落ち着くんだ。1…2…3…5…7…11…」

『1は素数じゃないよ。』

「えっ、そうなの?って、オオイさん!」

『おはよう、お邪魔してるよ。……何でそのネタ知ってるの?』

「ネタ?」

『ああ、僕の影響か。いや、何でもない。……それより、そろそろ何とかしないと大惨事になるよ?』

「…………え?」

コンコン



 直後叩かれる、部屋の扉。そしてベルクさんの呼び掛け。



「すまねぇ、アインが部屋に居ないんだが、こっちに来てねぇか?」

「Oh……!」



 あんたの娘さんなら俺のベッドで(爆睡しながら)必死に俺の(首筋)を舐めてるぜ?その言葉を発した途端、俺は鬼の貌(オーガ)を見るだろう。まだ部屋の扉は開いていないが、今の俺にとってあの扉は地獄の釜の蓋と同義。開けば地獄が待っている。



「ちょ、ちょっちゅ待って下さい!」

「ちょっちゅ?」

『ぷふっ』



 何とかアインと離れなければ!離れさえすれば何とかなる!アインの手を掴み拘束を解こうとするが、俺の願いは天には届かなかった。



「わうぅ、やー!!!」

ぎゅ~

「何で!?」

『ぷふふっ』



 拘束は解かれるどころか強まった。しかも昨夜は泣き疲れていたせいか、全然起きる気配がない。アイシアさんが居なくなって不安なのは分かるが、家族でもない異性に抱きつくのはどうかと思うよ?俺、男として認識されてないのかな?クスン。



「わふふ~(カプカプ)」

「ら、らめぇ~~!」

『ぷふふふっ』



 耳たぶ噛んできたよ、この子!最近肉付きが良くなってきたせいで、アインは抱き心地も抜群だ。女の子のイイ匂いがするし、柔らかいし、気持ちイイしで俺の中の何かが暴れ出しそうヨ。ていうか、さっきからオオイさんがスゲームカつく!!!



「アッシュ…?入るぞ?」

「あ、あかーーーん!!!」



 そして残酷にも地獄の釜は開かれた。地獄の鬼が顔を覗かせる。なぜかこの場に居るはずのないアイシアさんと共に。



「………」

「………」

「わうぅ~ん。(ぺろぺろ)」

『あっはっはっはっ(小声)』

「あらあらぁ。孫の顔は直ぐに見れそうだねぇ、パパ。」

「ーーーーー」



 ………ベルクさんが、すっごい顔で俺とアインを見ている…。怒り顔ならまだ理解できるけど、何か(なぎ)の海の様に穏やかな目で見てる!俺は一体どうなってしまうんだ……っ!



『(あ~~~、笑わせてもらった。あ、ベルクさんのあの目、夢想転〇を開眼したケンシ〇ウにそっくりだ。)』



 そんな危機的状況で、オオイはしょうもないことを考えてテンションが上がっていた。





~~~~~


「かんぱ~い!」

「「「かんぱ~い!!!」」」



 ベルクさんの掛け声で食堂スペースでの宴会が始まった。なぜ宴会なのか?それは、おめでたいからだ。そう、アインとの添い寝の誤解が解けたからだ。

 ……すいません、嘘です。まあ、それで宴会というのは嘘だが、誤解が解けたのは本当だ。チートでアップした知能をフル活用して、如何(いか)にしてこのような状態になったかを説明、圧倒的なプレゼン能力で乗り切った。失敗は即死に繋がる戦場、俺は大いに疲弊した。


 当事者のアインに聞いたところ、ずっと近くにいて慰めてくれて嬉しかった、夜に目が覚めた時寂しくなってベッドに潜り込んだ、との回答。やはり、まだまだ理由が子供だ。まあ、俺も同い年だけど。抱き着き&首筋ペロペロ&耳たぶカプカプについては記憶になかった。つまり、寝惚けていたと。アインはあまりの恥ずかしさに半泣きになっていた。



 アイシアさんの奴隷騒動も決着した。女にだらしない貴族の暴走。アイシアさんからことの顛末を聞いた直後、ベルクさんはアインが怯えるほど激怒していた。自分の惚れた女が他所の男に好き勝手にされそうになって怒らない男などいない。いつまで経っても怒りが収まりそうになかったので耳元で「これ以上怒ってるとアインに嫌われますよ」と囁くと、嘘みたいに沈静化した。

 男親って大変だなぁ。



 まあ、何だかんだで重要なのは、ベルクさん一家がハッピーエンドで終われそうだということだ。アイシアさんの身に起きた不幸には驚いたが、領主様の大活躍で悪は滅びた。しかも賠償金的なものまでくれるらしい。そして、これでレナの治療にも目処が立った。間違いなくめでたい。



 結局、俺はベルク一家にお金を稼いでいることを話した。元々俺が話を通していれば今回の騒動も起きなかったし、みんなに余計な心労を掛けることもなかったと考えたからだ。このことはオオイさんには相談せずに、俺が自分では考えて教えた。オオイさんも好きにして良いと言ってくれた。最初は受け取れないと頑なに拒否していたベルクさん達だったが、寄付する訳ではなく貸すだけだと返したところ、土下座する勢いで感謝された。稼ぎ方について聞かれたが、綺麗なお金とだけ伝えた。ギルドの話をしたら止められそうだしね。

 俺の稼ぎの銀貨292枚。(この間の畑仕事の報酬と貯金を足して)オオイさん達の貯金の銀貨83枚。今回の騒動に関して、領主様から補償金と賠償金で銀貨100枚。総額銀貨475枚。


 助成制度を使うための銀貨500枚まで後少し。ここまで来ればもう安心だ。残りは俺が稼ぐことになるだろうが、気にしない。レナが助かればオールオッケーだ。ベルクさん特製の短足牛ローストを口一杯に詰め込みながら感無量の俺。アインも妹が助かるという話を聞き、今日ばかりは嬉しそうに料理を頬張っている。



 ちなみに、俺が困っている時に笑って見ていた犬は宴会には参加させず、裏庭に拘束してきた。裏に繋いでくると前もってみんなに言っておいたから、抜け出すと不審に思われる。つまり、俺が迎えに行かない限り、宴会参加は不可能だ。

 『ちょ、嘘でしょ!?スネーク!スネェーーーク!!!』と叫んでいたが知らん。人誅を喰らえ。あと、スネークって誰だ。



「本当にありがとう、アシュレー君。」

「俺は自分がしたいようにしただけだよ。…アイン、君を助けたいと思っただけだ。」

「わうぅ!?あ、ありがとうっ。(カーッ)」

「………?」

「あらあら。あっくんは天然ジゴロさんなのねぇ。」

「アイシアさん、あっくんって…」

「アシュレー君だから、あっくんよ?」

「ま、まあ、イイですけど。」

「ア、アッシュ……アインのこと…お、俺は、お前が本気なら…本気、ならぁ……!!」

「ベルクさん、俺、まだ9歳ですよ?あと、結構飲んでますね?」

『スネェーーーク……(遠くから)』



 もう少しだ。もう少しでベルク一家は元に戻れる。レナというピースを当てはめて、幸せになれる。


 父さん、母さん。いつか俺達も、元に戻れるかな。たった3つしかないピースだけど、また、くっつけるかな…



「あっくん…?」

「………!ど、どうかしました?」

「……ううん、何でもない。さあ、一杯あるからドンドン食べてっ。ほら、これも美味しいよっ。」

「は、はい。いただきます。」



 アイシアさんが肉やら魚やらをガンガン皿に乗せてくる。しまったな、アイシアさんにオセンチになった顔を見られたっぽい。気を使わせてしまった。今はめでたい席なんだ、感傷に浸るのは後にしてベルクさんの絶品料理に舌鼓を打とう。

 そう思って皿の上の肉にフォークを突き刺したところでギィ、と宿の扉が開いた。



「おっと、すまねぇ。今日は営業してねぇんだ…が…」



 ベルクさんの声が途切れる。

 扉の方に視線を向けると、そこには見るからに仕立ての良いきらびやかな服に身を包んだ、紅い瞳に黒髪の美丈夫が立っていた。年の頃は20代といったところだろう。……初めて会ったはずなのに、なぜか既視感を感じる…。その男は紅い瞳をこちらにーーーいや、俺に向けて優しく微笑んだ。それは親が子を見つめるような、慈愛に溢れた、嬉しさや喜びを湛えた視線。俺が男と見つめ合っていると、言葉を途切れさせていたベルクさんが声を発した。


 

「ベ、ベルクリオ様!」

「ーーー!」

「こんにちは。お楽しみのところ失礼するよ。少しだけ時間、良いかな?」



 俺がこの街で会うべき人が、向こうから会いに来た。



 ベルクさんは、愛と哀しみを背負ったんですね…

 次話、ついに領主様とご対面。

 アシュレーはどうなってしまうのか。


 ブックマークして下さっている方々、本当にありがとうございます。

 こんな拙い文章でも、見てくれている人がいると本当に嬉しいものです。

 執筆速度も上昇します。(笑)

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