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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第一章 幼年編
14/50

第14話 必殺、仕事犬!

※若干残酷な描写があります。

※オオイ神が激おこです。

 とある屋敷の一室。

 その屋敷の主人の下劣な品性がそのまま体現されたような、血のように真っ赤なカーペットに胸やけがするほどの自己主張をしてくる調度品。金銀で装飾された天蓋付きのベッドの上で、でっぷりとした体格の男がいやらしい顔で手に持ったグラスの酒を見つめていた。



「ふふっ、やっとあの女を抱けるわい。」



 この屋敷の主、ゴドウィン男爵。フォレストサイト領主であるベルクリオ伯爵の部下の1人である。弱者を虐げるのはもとより、強欲で女狂い。金と権力を傘に着て、人妻にすら平気で手を出す。彼の名前は、フォレストサイトにおいては悪者筆頭とでも言うべきものであった。ベルクリオも彼の行動には頭を悩ませていたが、悪事の証拠を隠すのが上手く、なまじ仕事が出来るということで手を出せずにいた。

 商店街で働くアイシアに目を着けたのが3か月ほど前。すでに人妻であったが彼にとってそんなことは関係ない。病気の子供がいるという情報を掴み、パート先である店に頻繁に顔を出しては関係を迫ってきたが一向に聞き入れず、子供の治療費を支援するという名目で屋敷に誘い出した。警戒していた様子だが子供の命が助かるかもしれないチャンス。必ず屋敷に来ると彼は確信していた。屋敷にさえ入れてしまえば後は監禁。奴隷として書類の偽造から申請まで、自分の権力でどうとでもなる。


 

「ぐふふふふっ、今日は存分に可愛がってやる。」



 下劣な嗤いが、部屋に響いていた。





~~~~~


『典型的な屑だな。』



 屋敷の屋根の上で、子犬が吐き捨てるように(つぶや)いた。


 オオイは広域検索の魔法〈サーチ〉で、アイシアの位置を早々に割り出していた。そしてこの屋敷の持ち主であるゴドウィン男爵の情報についても既に把握済みである。フォレストサイトに来てからほぼ2ヶ月、彼は街の情報や情勢等を徹底的に収集していた。

 情報は知恵となり、知恵は力となる。彼は生前、そうして得た力であらゆる困難を跳ね除け、戦場の支配者とまで謳われたのだ。


 まだアイシアとゴドウィンは接触こそしていないようだが、このまま放置すればアイシアが下種の毒牙にかかるのは確実だろう。アッシュを始め、ベルク一家の皆で頑張っていたところでの、この暴挙。普段温厚なオオイの顔に、冷たい表情が仮面のように張り付いている。

 見た目は犬だが。


 サーチの結果、アイシアの位置は屋敷の地下室。

 近くに見張り等はいないようだが犬の姿では助け出すのは難しい。一応、アイシアとは豆太郎として面識はある(もみくちゃにされた)が、監禁場所に知人のペットが現れて話し出したとしたら、自身の正気を疑うだろう。まあ、アイシアなら突然でも笑って受け入れそうな気もするが。とりあえず、屋敷から助け出すというのは難しい。ならば、アイシアに害か及ばないように敵を無力化するのが手っ取り早い。


 

チン(・・)、するか…。』



 そうしてオオイは、氷のように冷たい視線を屋敷に向けた。屋敷内の人間の会話も傍受していたが、屋敷の主人と同じで下劣な者しかいなかった。



 イイ女だった、後でお零れにあずかろう…


 今度ゴドウィン様から使い古した女を褒美で貰う…


 あの奴隷、生意気に抵抗しやがったから殺してやった……



 聞こえてくるのは聞くに堪えない内容のものばかり。執事やメイドもいるが、全員主人の悪行には見て見ぬ振りで甘い汁を啜っている。全員まとめて処置しても全く問題ないだろうし、むしろ街の住民からは喜ばれるだろう。


 そして、後に”ゴドウィン家の呪い”と呼ばれる事件の幕が上がった。





~~~~~


「うむむむ、遅い!!!いつになったらアイシアを連れてくる!!!」



 身を清めさせ、寝室にまでアイシアを連れてくるように部下に指示して2時間。既に準備は整っているはずであるが、一向に寝室に現れる気配がない。枕もとに置いてある呼び出し用のベルを鳴らすゴドウィン。いつもであれば数秒で駆けつける執事やメイドは、なぜかいつまで経っても現れなかった。



「あの給料泥棒共め!」



 業を煮やして部屋から外へ出ようと部屋の扉に手を掛けるが扉は開かず、びくともしない。



「な、何だ、これは。なぜ開かん!」



 扉を開けようと顔を真っ赤にするほど力を込めるが、扉が軋む音すら立てない。オオイの土魔法により、この屋敷の全ての扉はガチガチに固められていたのである。カーテンが閉まっているためゴドウィンは気付いていないが、窓も既に固められ、脱出は不可能になっている。完全に閉じ込められた状態だか、オオイの仕置きはここからが本番である。



「ふぅふぅ、な、何だか暑いな。」



 今の時期は夜になると肌寒いはずなのに、なぜか暑さを感じる。就寝のための若干薄手の寝間着ですら暑く感じる。いや、暑いどころではないーーー熱い(・・)



「だ、誰かいないのか!どうなってる!」



 ゴドウィンは寝間着を脱ぎ捨てながら大声で叫ぶがその声が外に聞こえることはない。オオイが行使しているのは基本的な魔法4種類。

 屋敷中の扉や窓を固定した拘束系土魔法〈アースバインド〉。

 本来であれば攻撃に使用する相手に熱波を当てる攻撃系火魔法〈ヒートウェイブ〉。

 外部に声が漏れないように、空気の震動を遮断し相手の詠唱を阻害する妨害系風魔法〈サイレント〉。

 そして地下全域にアイシアにヒートウェイブの影響がないように、防御系光魔法〈マジックシールド〉。

 全て初級の魔法であるが、今も昔も魔法の並列行使は2つまでが限界とされている。それを4つ同時に行使できるのは、まさに神業と言えるだろう。そんな神業の持ち主は、屋根の上で身体を横たえ就寝の姿勢に入る。



『温め時間は明日の朝まで。ふぁ~…』



 呑気な声で屋敷の人間への死刑宣告をして、オオイは眠りに就いた。





~~~~~


ゴドウィン男爵家集団変死事件概要


 緋色の月第13日、ゴドウィン男爵家において男爵及びその家族、直属の部下等、男女合わせて32人が全裸状態で死亡しているのが発見された。


 遺体の位置は屋敷中に点在しており、どこかに固まったり等の状況は認められず、夜間に居た場所でそのまま死んでいるものと思われる。

 遺体特徴としては、第一に先程報告の通りほぼ皆が全裸、もしくは下着姿であったこと。なお、衣服については周囲に脱ぎ散らかした状態で発見されている。

 第二に完全に水分が干上がった、数日砂漠に放置したかのような極度の乾燥状態であったこと。

 第三に死因と認められる外傷等が一切ないこと。


 扉や窓付近で発見される者が多く、扉や壁には爪で何度も引っ掻いた跡も発見されており、血が滲んだり爪が剥がれるまで掻き毟っている状態の者も散見された。


 状況から各自が部屋に監禁された後、何らかの方法で殺害されたものと推察される。魔法及び特殊能力が使用された可能性が高いものの、これほどの人数を一度に殺害するには数十人単位で同一能力の者を用意しなければならないはずであり、実質不可能である。

 また、ゴドウィン男爵家は住宅街直近に位置しているものの、不審な物音を聞いた住民も居らず、これほどの行動を誰にも看破されずに完遂することは、前記殺害方法と同様に人の身では不可能であると断言せざるを得ない。


 以上の結果から、同事件については第三者が介在した可能性が濃厚であるものの、その実現は不可能と言える。事件の特殊性・異常性を考えた場合、事実公表は領内住民の不安をことさらに助長するものであることから細心の注意が必要である。

以上

警衛騎士団

フォレストサイト支部

調査班主任

サーチャ・クレル





~~~~~


「良かったですね、お好きなオカルトですよ。」

「冗談はよしてくれ。あれは読み物だからイイんだよ。」



 執務机に報告書の束を投げ捨て、男が頭を抱える。ベルクリオは、この呪いとしか呼べない怪奇事件に頭を悩ませていた。確かにこういったミステリー事件の話は大好物だが、実際に自分の身の回りで起きてもらっては堪ったものではない。



「問題児が消えてくれたのは有難いが、後釜を見つけるのも仕事を振り分けるのも一苦労だ。それにとんでもない爆弾(・・)を残してくれやがって。」



 彼が言う爆弾とは、ゴドウィンが地下室に監禁していたアイシアを始めとした女性達である。様々な種族の女性、その数合計20名。事情聴取の結果、ほとんどの者が違法な手段で奴隷とされた者であり、ゴドウィンの慰み者にされていた。無事だったのは前日に監禁された1名のみである。彼女達やその家族にも補償金を支給しなければならないだろう。年内予算に痛恨の一撃、いや、連撃である。



「まったく、どこの悪魔の仕業だ。」

「あのゴドウィン男爵を懲らしめてくれたのです。もしかしたら神かもしれませんよ?」

「もし神だとしたら、その神はとても優しくて、とても残酷だな。」

「そうですね。我々は命が助かっただけ、まだ良かったのかもしれません。」

「ああ。仕事と金の話は今までゴドウィンを放置してしまった罰だと割り切って受け入れよう。」

「今回の件については住民には伏せます。報告書の通り、原因不明では住民に不安を与えます。」

「ゴドウィンについては我々で処理したという形で話を進めよう。被害の女性やその家族には私が直接顔を合わせて謝罪する。」

「畏まりました。」



 彼らは知らない。仕事へのテンションを上げるために口にした、冗談半分のその軽口が真実であることを。

 彼らは知らない。屋根の上に、事後処理を確認に来た、その神様がいることを。



『へぶしゅ!』



神様の二面性を出してみました。

優しい人ほど怒ると怖い。(ブルブル)


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