第17話 俺と領主の間柄
今週から仕事が忙しくなるはずだったんですが、結果的に休める時間は増え、隙を見て結構書けました.
ですので、本日一気に放出します。
「今度こんなことしてるの見たら……君達の耳、引き千切っちゃうよっ?」
「ヴゥーーー!!!」
「ひぅーーー!!!」
たっぷりの殺気を込めながら、土人形と化している男の子2人に爽やかに嗤い…訂正、笑いかける。
まだ腹の限界には達していなかったはずだが、2人の股間からは湯気が立ち上った。余程寒いのだろうか?身体は小刻みに震え、泣き叫んでいる。
これだけ脅迫すれば十分だろう。俺はウサ耳少女の手を引いてその場を離れた。このままここにいても意味はないし、しばらくしたらスーパー(略)による自主公開処刑が始まるし。
ただ言えるのは、〈神の心臓〉の起動による世界ランカーの3倍の殺気と魔法を受け、彼らの心は清らかになったということだ。ついでに数分後、胃腸の中身も清らかになるだろう。俺はそのまま来た道を引き返し、街の中心部まで戻っていった。
フォレストサイト噴水広場。
5メートルはあるだろう巨大な石像の傍らから清らかな水が流れ続けている。古の英雄を象った石像だろうか、髪を逆立てた逞しい筋肉を纏った男が大剣を振るい、邪悪な(凄く悪い笑顔の)細身の魔女と戦っている様がリアルに表現されている。
そんな噴水の脇で、ここまで来れば安心(音とか臭い的な意味で)だろうと女の子の手を離す。そして女の子に声を掛けようと向き直り、息を飲んだ。
公園では俯いていて黒髪が邪魔になって気付かなかったが、物凄く綺麗な子だ。腰くらいまである流れるような黒髪。その黒髪から真っ白なウサギの耳が顔を出している。肌も雪みたいに真っ白で、仕立ての良い黒のワンピースとの対比が印象的だ。前髪は形の良い眉毛と同じくらいの位置で真っ直ぐに揃えられている。そして俺が強く惹かれたのが、ルビーをそのままはめ込んだかの様な、大きな紅の瞳。泣いていたせいで白目の部分が少し赤くなっているが、瞳の色は曇るどころか輝きを増している。年下に綺麗というのは違和感を感じるが、何というか、上品さを感じる佇まいと顔立ちだ。アインとはベクトルの違うタイプの美人になるだろう。
「あのあの…ありがとう、なのじゃ…」
「あ、うん。」
黙ってずっと見つめてしまったせいか、少女は居心地悪そうに体をモジモジさせている。俺は空気を変えるべく、無言で少女の服に付いた砂を手で叩いて落とし始めた。何を喋って良いか分からないし、まずは身綺麗にしてやりたかった。服の汚れは直ぐに落ちたが、顔や髪にも少し砂や泥が着いている。俺は持っていたハンカチを噴水の水で少し濡らし、拭いていく。
「………(ふきふき)」
「………(///)」
「あいつらにはキツイお仕置きをしておいたから、もうイジメられたりしないと思うよ。」
「あの子達だけじゃ、ないのじゃ……皆、妾をイジメるのじゃ…」
他にも獣人の子供はいる。この子だけがイジメられているのは、おそらくこの容姿のせいだろう。好きな子に意地悪するという心理が何割かの男の子にはあるらしいからな。
「…イジメられそうになったら逃げなさい。大人の近くに行けばあんなことも起きないだろうし。」
「助けて、くれんのか?」
「近くにいれば助けてあげられるけど、ずっと一緒にいる訳にもいかないだろう?お父さんやお母さんには相談してるの?」
「心配、掛けたくないのじゃ…」
優しくて親想いなのは分かるが、そんなこと言ってる場合じゃないと思うんだがな。特に女の子が多数の子供達を相手にするのは無理だろう。
「言ってないんだ?言わないとダメだよ。」
「でも…」
「うん?」
「世話が焼ける、面倒な子だと、思われたくないのじゃ…」
「………」
「父上はこの街の政に関わる、大変な仕事をされておって、いつも忙しそうにしておる。母上も妾が生まれて直ぐに、流行病で死んでしもうた。」
「………」
「父上の机の上から書類の山が消えたことは今まで一度もない。なのに、頑張って仕事に区切りをつけて、週末にはいつも一緒に食事をしてくれる。父上は、妾が寂しくないようにいつも気を使ってくれておる。父上に…これ以上…迷惑を掛けとうない……」
彼女の瞳からは今にも涙が零れそうだ。ろくに考えもせず発言した数秒前の俺を殴り飛ばしてやりたい。親の負担になりたくない…この子はその思いだけで、辛いイジメに耐えていたのに。家に居ればイジメられることもないのだろうが、閉じ籠りっぱなしでは親が心配する。
だから外出したのだろう。
イジメられると分かっていて。
………まあ、レナの治療費についてケリもつきそうだし、問題ないか。また苦労を背負い込むことになるが、俺は俺のやりたいようにするだけだ。むしろここで逃げたら父さんからパ〇スペシャルを喰らってしまうだろう。
何はともあれ、今日はベルクリオさんとの約束があるから、行動は明日からだな。俺は少女の頭に手を乗せて、頭とウサ耳を爪で軽く掻くように撫でる。
「ふぁわわわわぁ…(///)」
「…友達になろう。」
「ふぇっ?」
「今日は用事があるから明日から一緒に遊ぼう。待ち合わせは商店街の入口にある狼の昼寝亭に昼過ぎ頃。遊べるよね?」
「い、いいのかの?」
「俺とは友達になりたくない?」
「そんな訳ないのじゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「そ、そう?」
想像以上の必死さと大声に思わずのけ反ってしまった。叫んでから恥ずかしくなったのか、彼女も顔を真っ赤にして俯いてしまった。明日からギルドの依頼を夜だけにして、昼はこの子と一緒に行動することにしよう。
「それじゃあ、今日は家まで送るよ。」
「ふぁ!?そ、それは遠慮しておくのじゃ!」
「そう?あいつらはまだ動けないと思うけど他の子達は大丈夫?」
「人通りの多いところを走って帰れば問題ないのじゃ。」
「本当に大丈夫?」
「うむ。ドンと来い、なのじゃ!」
「そ、そっか。それじゃあ、気を付けて帰るんだよ?」
「バイバイ、なのじゃっ!」
そう言って女の子は満面の笑顔で走り去っていった。そして、その直後に気付いた。
「あっ……名前言ってないし、聞いてない…」
友達になったのに、名前すら知らないって…
俺は思わず苦笑いしてしまった。
~~~~~
屋敷を訪問して通された来賓室。
門番の人に声を掛けたときは訝しげな表情だったが、話は通っていたのだろう、名前を伝えるとすんなり中へ通された。部屋に入った後、おくつろぎ下さいとメイドさんがお茶をテーブルに置いて去って行った。だが、今まで座ったことがないくらいフカフカのソファに尻を沈めても全くおくつろぎできない。
気分を落ち着けるために室内に置いてある壺や絵画を見ても「丸いな~」とか「でかいな~」とか、しょうもない感想しか出てこない。村育ちの俺に審美眼などあるはずがない、うん。テーブルに置かれたお茶をズズッと啜りながら納得する。あちちっ。
それから少しして来賓室のドアが開いた。
「いらっしゃい、待たせてしまったね。」
「いえ、全然です。」
「君も少し遅かったみたいだけど、女の子でも口説いてたのかな?」
「…似たような理由です。」
「はははっ、君が口説けば大抵の子は落とせるだろうね。でも浮気は感心しないよ?」
「俺は彼女もいませんし結婚もしてませんよ?」
「君が将来刺されないか心配だよ…」
もう心臓刺されてますけどね。冗談を言い合って笑う俺とベルクリオさん。だが冗談はここまでにしておこう。彼には聞かなければならないことが沢山ある。
「…真面目な顔になったね。それじゃあ、僕と君の両親達の話をしよう。」
「はい。以前私とベルクリオ様との間柄、と発言していましたが、それはどういう意味ですか?」
「簡単な話だ。君と私は血が繋がっている。」
「…………………えっ?」
想像以上に、とんでもない事実が飛び出してきた。
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