第11話 可愛い相棒
仕事が忙しくて更新が遅れてしまいました。
長期休暇が欲しい……
父さん、母さん……
俺、汚されちゃったよ……
神々による魔改造で、俺は人外の領域にまで達してしまった。
人よりちょっと強いくらいならまだ良かったが、この数値はいただけない。
NAME アシュレー・シーグラム
半魔人
(加護を受けし難民)
H P 315/315
M P 15970/16980
STR 330
VIT 324
DEX 345
AGI 363
INT 396
SKL 知神の加護
戦神の加護
戦闘術
[剣/槍/斧/弓]
補助魔法
[解析]
神の心臓
後光
Unkoun
くっ、見るたびに眩暈がする…
俺は原因であるお犬様へ目を向ける。
『ふっ、ふしゅ~~~』
「口笛吹けてませんよ…それ以前に犬の口じゃ構造上難しいと思います。」
『……ちょっとやり過ぎたかなって、反省はしてます。』
「……いえ。俺の方こそすみません。助けてもらったのは確かですし、弱いよりは全然イイです。」
---そうだよ。
動揺して文句を言ったけど、加護を受けなければ俺は死んでいたんだ。
命の恩人…いや、恩神に取る態度じゃなかった。
反省しなければ。
俺は気分を変えるため、両手で自分の頬を叩く。
おし、改めてステータスのチェックだ。
数値に関してはもう気にしない!気にしたら負けだ!
昔の偉い人は言った、大は小を兼ねる、と!
まず、魔力は加護による影響はないって言ってたから、母さんからの遺伝だろう。魔人って凄いんだな、オオイさんより多い。
……ダジャレじゃないよ?
スキルは、結構あるな。
〈知神の加護〉と〈戦神の加護〉は、オオイさんとイズミさんからの加護のことか。おそらく各数値の補正に貢献しているのだろう。
〈戦闘術〉は、そのままの意味だな。剣と弓は父さんに習ったことがある。槍と斧は使ったことはないけど、項目にあるってことはイズミさんの加護の影響だろう。
〈補助魔法〉の解析は、俺がステータスを使ったから習得したようだ。
後光は見なかったことにするとして、この〈神の心臓〉と〈Unknown〉が気になるな。
「〈神の心臓〉というのは、どういったスキルなんですか?」
『おや、スキルとして分類されたんだね。これは各種身体能力の向上、魔法の簡易発動化、自然治癒力向上、疲労蓄積軽減、各種状態異常の完全無効化を併せ持った能力だよ。』
「魔法を使った時、心臓が大きく鼓動したのはこのスキルが理由ですか。物凄い能力だな………」
『ただ、リスクもある。消費されたMP(魔力)を見てごらん?』
「あれ?1000以上減ってる。オオイさんは1でしたよね。」
『〈神の心臓〉は常時発動タイプのスキルではない。1度起動する毎に1000の魔力を消費する。稼働時間は1分位で今見たステータスはその効果でブーストがかかった状態なんだ。そして、魔法の簡易発動はそれと引き換えに通常の10倍程の魔力を消費する。まあ、君自身が一般人の千倍以上の魔力を持ってるから有って無いようなリスクだけどね。』
「スキルの起動に1000、〈ステータス〉の簡易発動に1×10で合計1010、ですか。結構癖がありますね。この〈Unknown〉というのは?」
『まだ覚醒していない、潜在的に有しているスキルだよ。君は半魔人だから、魔人の特殊能力の可能性が高いね。』
「母さんと同じ〈空間操作〉なら便利ですけどね。」
自分の能力については大体把握できた。
このとんでもステータスは〈神の心臓〉で底上げされたものだったらしい。
しばらく経ってからステータスの数値を見てみると
H P 105/105
M P 15970/16980
STR 110
VIT 108
DEX 115
AGI 121
INT 132
となっていた。
ふむ、〈神の心臓〉起動時の能力上昇補正は、×3のようだ。
魔力以外のステータスが三分の一にまで減っていた。
それでも世界のトップランカーと同程度か……
今の俺は、圧倒的に経験は足りないけど、能力値だけで見ればやっぱり結構強いみたいだ。
特に〈神の心臓〉は、戦いの場で使えばどんな敵でも相手にできるだろう。
だけど、別に俺は誰かを倒すために力が欲しいわけではない。
自分や自分の周りの人間を助けることができれば良い。
この力はみんなのために役立てよう。
上手く活用できればアイン達への恩返しに貢献できるしな。
力仕事とかガンガンやって稼いでやろう。
『……フフッ。』
「どうかしました?」
『君を選んだ僕達は正しかったと思ってね。』
「?」
心の中で自分自身に決意表明していると、オオイさんがとても優しい顔をしながら俺を見つめていた。
その後も魔法のレクチャー(名前を聞くだけ)は続き、各種魔法の初級から上級までの魔法を全て教えてもらった。
数が多かったけど、知力補正のお陰で助かった。
召喚魔法と創造魔法はオオイさん独自のものだそうで習得はできなかったが、これだけ覚えておけば困る場面はないだろうと言われた。
『戦術級や神罰級までは必要ないと思うから今のところは教えないよ。』
「何ですか、その物騒な名前の級は……」
『それと、君の指ぬきグローブにステータスの偽装能力を付与しておいたよ。それを装着しておけば各項目を3、スキルなしに偽装できる。子供の君に解析系の魔法をかける人間はいないと思うけど、もし君のステータスが見られてしまったら大騒ぎになってしまうからね。』
「うっ……、これは封印してたのに。」
『せっかく買ったんだから使わないと意味がないでしょ!いつ使うの?今でしょ!!!』
「は、はぁ……じゃあ、そうします。」
指ぬきグローブの装着を興奮しながら勧めてくる。
あの時の異常なまでの購買意欲は、もしかしてこの神が原因なのか?
抵抗を感じながらも言っていることは正しいので、俺はグローブを装着した。
『僕は一旦引っ込むよ。この子のこと、よろしくね。』
「ちなみにこの犬って名前はあるんですか?」
『僕は豆太郎って呼んでるよ。それじゃあ頼むよ。』
そう言ってオオイさんは豆太郎から出ていった。
「えーっと、豆太郎?」
「ふぁん!」
「それってもしかして返事してくれてるのかい?」
「ふぁん!」
「お~、賢いな~。気の抜ける鳴き声だけど。」
「きゅ~……(シュン)」
「ああっ、ごめんごめんっ。これからヨロシクね!」
「ふぁん!!!」
こうして俺に、神が降りる特殊体質のペットができた。
~~~~~
夕暮れ、狼の昼寝亭前。本日の俺の業務は終了した。
薬代稼ぎは今晩にでもオオイさんと打ち合わせしよう。
具体的な行動を起こすのは明日からとして、まず豆太郎をどうするかだ。
ちょこちょこと俺の後ろをついてくる豆太郎を見て考える。
流石に多人数が宿泊する宿屋に入れるわけにはいかないだろうし、ベルクさんにどこか場所がないかを聞いてみよう。
恩返し作戦その2のためにも、話をしなきゃいけないしな。
「戻りましたー!」
「ふぁん!」
「おう、アシュレー…と犬?親戚の人には会えたのか?」
「そのことについてなんですけど、忙しくてしばらく一緒に暮らせないらしいんですよ。」
「暮らせないって…なんて無責任な野郎だ!よ~し、俺が拳で説教してやる。」
「いやいや、こっちの都合で急に押しかけてしまったので仕方ないですよ。それでですね、親戚のおじさんからしばらくどこかの宿屋で世話になれとお金を渡されまして。1か月ほど、こちらの宿屋に宿泊は可能でしょうか?」
「そうか。そういうことならいくらでも居てイイぞ。お代は割引してやる!」
「適正価格でお願いします。それと、犬の世話も頼まれてしまいまして。どこか置いておける場所はないでしょうか?」
「その後ろでお座りしてるちっこいのか?」
「ふぁん!」
「う~~ん……まあ、噛んだりしないなら構わねぇか。裏庭があるからそこにある木にでも繋いでくれ。キチンと世話してくれよ?一応客商売だからな。」
「ありがとうございます!すごく大人しい、人懐っこい子なので大丈夫です。」
「お代は昨日と同じで一泊朝夕二食付き銅貨90枚、30日分で銀貨2枚と銅貨700枚だが、割り引いて銀貨2枚でイイぜっ。」
「盛大に割引しすぎですよ!」
おおよそ三分の一も減ってるわ!
ベルクさんのこのドンブリ勘定を変えるだけでも収入はかなり上がるんじゃないか…?
そうして俺は昨日と同じように、ベルクさんと値段交渉を行った。
払うお金を上げるために交渉するというのも変な話だが。
話し合いの結果、銀貨2枚と銅貨400枚で折り合いがついた。
恩返し作戦その2、クリアだ。
ちなみにこの作戦にもオオイさんが考えてくれた名前があるのだが、ASH以上の無理矢理感と恥ずかしさがあるので言わないでおく。
この作戦は治療費の支援としてお金を渡すものだが、直接では受け取ってくれない可能性が高いことから、宿屋の営業に貢献する形で宿泊代としてお金を渡すものだ。
これなら直接的ではないからベルクさんも受け取ってくれる。
あとは宿泊期間中にレナの治療に目途をつけるだけだ。
俺はベルクさんに宿泊料を渡し、豆太郎を裏庭へ繋ぎに行った。
「良かったな、豆太郎。すぐにご飯あげるからね。」
「ふぁん!」
「後でアインにも紹介しないとね。」
「きゅ~?」
~~~~~
翌朝、俺はエンゼルマリーでフード付きのローブを買った後、とある建物の前に来ていた。
レナの治療費は正規な手段で短期間で手に入れるにはあまりに高額だ。
その問題を解決できるのは正規でない手段しかない。
いや、正規でないというのは正しくない。
少しだけこの手段を使える者が限られるだけだ。
カランカランーーー
石造りの無骨な建物。
そこに取り付けられた、それに反比例するようにチープな扉を開くと、一斉に中にいた人達が俺に視線を向けた。
それはそうだろう。
フードで顔を隠していても、俺の身長は130ほどしかない。
見た目で子供とモロバレだ。
その後ろを見たこともない犬種の子犬がテコテコついていく。
中々シュールな光景だ。
周囲の視線を無視して俺はカウンターまで進んでいく。
流れは昨日、オオイさんと確認済みだ。
亜麻色の髪をした20歳くらいの美人受付嬢から声が掛けられる。
「ギ、ギルドへようこそ。ご依頼ですか?」
ここはギルドと呼ばれる場所。
登録した冒険者が、報酬に応じて様々な依頼を解決する組織だ。
国家を問わずに存在し、中規模以上の町であれば必ず1つは建物がある。
所属できる年齢の制限は15歳以上が原則だ。
俺の年齢では完全にアウトだが、ここはオオイさんを信頼してある言葉を告げる。
「ここで一番強い人と拳で会話がしたいのですが。」
「……!その言葉の意味をお分かりですか?」
「ええ。ギルドの極秘規定にあるでしょう?」
「で、ですが……」
「おい!待ちな、ガキ!!!」
突然大声で会話が遮られる。先
程俺を見ていた人達の内の1人だ。
年齢は40代くらいだろうか。
髭面に革でできた軽鎧、背中には大剣を背負っている。
身体も良く鍛えられていることが分かる。
…俺が会う中年って、どうしてこう、怖い顔の人ばかりなのだろう。
何かの呪いか?
「おい、聞いてんのか!お前みたいなガキが強い奴と戦いたいだ?冒険者を舐めてるのか!?」
「申し訳ありませんが、話がややこしくなるので少し黙っていてもらえませんか?」
「何だと!?」
「お姉さんからも何か言ってもらえませんか?」
「……君、どこでその言葉の意味を知ったかは分からないけど、興味本位で使って良いものじゃないわ。」
おい、この受付嬢、中年冒険者に乗っかりやがった。
まあ、ギルド職員しか知らないはずの極秘規定にある言葉を子供が言ってきても職員の誰かが漏らしたとしか考えないか。
俺って強そうにも見えないだろうし。
ちなみに、この”拳で会話”という言葉は、オオイさんとイズミさんがギルドの前身となる組織を作った際に取り決めたものであり、意味は”年齢制限解除”。
この言葉はギルドの上層部が、年齢関係なく組織に所属しても問題ないと判断した強者のみに伝えるものであり、この言葉を受付で伝えれば年齢関係なく登録が可能になるというものだ。
ただし、伝える前には細かい審査があり、審査を通る人間は前もって受付や職員に伝えられることがほとんどなので、この受付嬢は信用していないのだろう。
オオイさんの話では別にリスト化されているわけでもないから使って問題ないらしいのだが。
「分かったらさっさと帰りな!」
男が俺に右手を伸ばしてくる。
建物から摘み出すつもりだろう。
仕方ない。こういう展開になる可能性もオオイさんからは聞いていた。
彼には悪いが話も聞かずにこういう行動を取った報いだ。
ーーー少し利用させてもらおう。
次話、おっさんが悲惨な目に……!




