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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第一章 幼年編
10/50

第10話 加護の力

初めてすることというのは加減が分からないものです。

誰にでも失敗はある。

例え神様でも……

 

 正午の鐘が鳴る少し前、レナのお見舞いを終えて俺は2人と別れた。

 レナからは「もっと一緒にお話したい」などと言われたが、また近い内に見舞いに来る約束をして納得してもらった。

 懇願し、拗ねるように見つめる上目遣いの破壊力は抜群で、そんなレナに俺は魔性の女の片鱗を見た。

 

 ただ、その様子を見ていたアインが頬を膨らませながら脇腹をつねってきたのは意味が分からなかった。

 妹が取られたみたいで悔しかったのか?

 俺は痛みに耐えながら、アインともまた一緒に見舞いに行く約束をして、オオイさんと会うために聖なる森へ向かった。





~~~~~


 さて、森の入り口近く。

 昨日の夜、オオイさんは待ち合わせ場所について、『森に着いたら分かるようにしておくよ』と言っていた。

 その言葉の通りなら、周囲に何かかしらの目印があるはずだ。

 俺は辺りを見回してみる。す

 ると、草むらの陰から例のフィギュアがこちらを覗いていた。



「うっ!…心臓に悪いからやめてって、言ったはずなのになぁ……」



 文句を言いながら近付いていく。

 目の前まで来て確認してみたが、話し掛けてくる様子はない。

 どうやらこのフィギュアは喋らない仕様らしい。

 草むらの奥を覗いてみると、森の中へ続くように何個かフィギュアが置いてあるので、おそらくこれを辿っていけば待ち合わせ場所に着くということだろう。

 俺はそんな不気味な案内人に従って歩みを進めた。



 そして300メートルほど森の奥へ進んだ場所。

 木々が無く、草地の少し開けた終着点に、それは居た。

 体長は30センチ程度。明るい茶色と白の体毛に覆われた体躯はモコモコで、ピンと立った耳とくるんとした尻尾。

 端正だが愛嬌のある顔立ちで、黒いつぶらな瞳が俺を見つめてくる。

 犬…だと思うのだが、こんな犬種は見たことがない。

 ……すごく、可愛い。



「こ、これは一体…」

『フッフッフッ、お気に召したようだね。考えに考えて、これにした甲斐があったよ。』

「って、もしかしてオオイさん!?」

『ははっ、生き物だったら話しかけてもそれほど不審にはならないだろう?』

「まあ、小声ならぎりぎりですかね。その生き物は犬ですか?」

『そう、僕の居た世界からわざわざ召喚した、豆しばさ!!!』

「豆しば…!」



 自信満々に、得意気にオオイさんがシャウトする。

 彼の話によるとこの犬は豆しばと言う異世界で彼が住んでいたジャペェンという国の犬種なのだとか。

 捨てられていた子犬をこちらの世界に引っ張ってきて、自分が語りかける際に入る器になってもらったらしい。(ものすごく無駄な異世界召喚だ)

 ただ、操り人形にするのは嫌だということで基本的には子犬の意志が優先、必要がある時だけ身体を借りる契約で双方合意したとのことだ。

 こちらの世界では存在しない珍しい犬種だが、犬なら連れていてもペットと思われるだろうし問題ない。

 これからはこの姿でいこう。

 いや、この姿でなければダメだ。

 豆しばの可愛さに撃沈されモフり続けていると、オオイさんは突然真面目な口調で語り始めた。



『さて、君に森までわざわざ来てもらったのは、君自身のことを把握してもらうためだ。』

「俺自身のこと?」

『そう。君は僕やイズミの加護を受けた上に、神である僕自身が肉体の欠損を補完しているという、極めて特殊な存在だ。今の自分がどういった状態なのか、何が可能なのか。知っておくことは生きていく上で決して無駄にはならないし、行動を起こす上でも重要だ。』

「なるほど、確かにそうですね。よろしくお願いします!」

『まず、君の能力だけど、知恵の神である僕や戦の女神であるイズミの加護によって大人にも負けない位になっている。』

「具体的にはどれ位の力なんですか?いや、どれ位って言われても表現が難しいですかね?」

『オタクの力を舐めるなよ!』



 豆しばがどや顔で突然口調を変えてきた。

 この反応から、おそらく何か元ネタがあるのだろうが、俺には分からない。



『僕がこの世界に来た頃は、強さの表現は曖昧だった。明確な物差しも無かったから、結局は比べてみるまで分からないとかね。でもそこは、僕の出番だよ!』

「じゃあ、何か分かりやすい方法があるんですね?」

『ああ。異世界から降臨した知恵の神オオイが、そのゲーム脳とこの世界の魔力学を駆使して開発した魔法、〈ステータス〉だ!!!』

「おーーー!って、魔法?僕は王族や貴族じゃないから使えませんよ。」



 人間という種族は他種族と比べ特徴がないが、一部特権階級のみ、その高貴な血の力によって魔法という奇蹟を起こすことができる。

 森人の精霊術に似たものらしいが、俺はそういう生まれではないし、魔法を使うことは不可能だ。

 まあ、半分魔人だから特殊能力は使えるかもしれないが。



『!そうか。現在では失伝してしまってるんだったね。』

「どういうことですか?」



 オオイさん曰く、魔法は体内に魔力があれば本来種族問わず誰にでも使用可能なもので、過去の大戦以前では一般人でも普通に使用していたらしい。

 過去には魔力学により体系化されていたらしいが、魔法は習得が非常に困難であり、使い手も過去の大戦で大多数が死んでしまった。

 体系化されていても、その時代は紙に書いて残すといった考えがなく、ほとんどが口伝による継承であったため、大戦後は魔法自体が急速に世界から失われていったそうだ。

 一部上流階級の人間が一般に出回っていない書物という形でそれらを保存し、それを後の世で使ったことにより、魔法は〈王族や貴族等の貴い身分の人間のみ使える〉という一般常識になった、ということらしい。

 特殊な技術ということで秘匿されているのも、その常識が根付く一因になっているとのことだ。



『まあ、たとえその常識が本当でも君なら使えるけどね…(ボソッ)』

「何か言いました?」

『何も言ってないよ。現代に伝わっている魔法はほぼ初級、良くて中級だし、僕達の時代なら適性があれば子供でも使えていたものだ。』

「でも、名門貴族の人達は大木1本を丸焼きにできたりするって聞きましたよ?」

『大戦時の人間からしたらお笑いレベルだよ。それに考えてみなよ?大戦では膨大な魔力を持って、強力な特殊能力を使ってくる魔人と戦ってたんだよ?強い人間ほど前線で戦い、そして死んでいった。つまり現代で生き残っている人間はほとんどが魔力的な資質がなかった人達の生き残りなんだ。まあ、ごく一部、前線から生き残った生粋の魔法使いもいるだろうけどね。』

「過去ではどれくらいが普通だったんですか?」

『人間時代の僕は、この規模の森なら数秒で更地(さらち)にできたよ。』

「それはオオイさんが異常だったんじゃ……」

『でも、魔力量的にも、素質的にも、君にも同じ位かそれ以上のことができるはずだよ。』

「えっ、ウソ!?」



 やだ、怖い!

 神々達の改造手術によって、俺は人外レベルに達してしまったらしい。

 自分で自分を抱きしめる。



『いや、魔力面に関しては僕達の影響はないから単純に君の力だよ。』

「………」



 元からだった!!!

 俺はコホンと咳を一つした後、オオイさんに尋ねる。



「は、話が逸れましたね。それで、そのステータスという魔法はどういったものなんですか?」

『おっと、そうだね。この魔法は単純に説明すると、能力を数値として視認できるようにする魔法なんだ。』

「視認ですか?」

『まあ、見てもらった方が早いか。〈ステータス〉!』



 オオイさんが唱えると、オオイさんの前に薄い透明な板が浮かんだ。

 水色っぽいその板にはよく見ると文字が書かれている。

 なるほど、視認というのはこういう意味か。

 板の上にはーーー



 NAME ゼン・オオイ

      犬

     (豆しば)

 H P 9/9

 M P 11076/11077

 STR 12

 VIT 12

 DEX 10

 AGI 15

 INT 1225


 SKL 属性魔法

     [火/水/風/土/雷/光/闇]

     補助魔法

     [回復/強化/解析]

     召喚魔法

     創造魔法     

     後光



と書かれていた。

 基準が分からないから何とも言えないけど、物凄く偏っているな。

 MPが1減っているのは〈ステータス〉を使ったからだろう。



「どれ位の数値が平均なんですか?」

『戦闘経験がない一般的な大人で各項目の平均がおおよそ10だね』

「……流石は神様。犬の姿でもこの数値……」



 知恵の神の面目躍如といったところか。

 MP(魔力)とINT(知力)が大変なことになっている。


 

「最後のSKLっていう項目は何ですか?」

『その対象が有しているスキルのことだよ』

「なるほど。」



 オオイさんのスキルを見てみたが、属性魔法や補助魔法はたぶん全種類を網羅している。

 召喚魔法は、豆しばを異世界から連れてきた魔法だと思う。

 おそらく色々な存在を召喚できるんだろう。

 創造魔法は言葉通りかな。

 フィギュアもこれで創ったんだろう。

 …せっかくの魔法なのにロクな使い方してないな。

 俺の中でオオイさんの株が上下を繰り返す。

 後光はどういったものか分からないが、神様だし持っていても不思議ではない名称のスキルだ。

 おそらく、かなり強力なものだろうな。

 ちょっと気になる。


 

「この後光っていうのはどんなスキルなんですか?」

『フフッ、やってみようか』

「お願いします!」



 カッーーーーーーーー!!!

 直後、オオイさんの後方から目も眩むほどの金色の光が溢れる。



「くっ、これは!」



 光の中でオオイさんが神々しく輝いている。

 やはりかなり強力なスキルのようだ。

 そして光が収束すると、そこにはーーー














 何も変わらないオオイさんが座っていた。



『…………』

「…………」

『…………』

「…………えっ、終わり!?」

『ちょっ、そういう言い方は良くない!良くないよ!』



 後光って、本当に後ろが光るだけなの!?

 期待して損した…



『と、とりあえず〈ステータス〉だよ!ほら、やってみて!』

「いやいや、やり方も教わってないのにいきなりやれと言われても無理ですよ!魔法は習得が難しいってさっき言ってたじゃないですか。」

『とにかく、声に出して唱えてみて。』

「え~、そ、それじゃあ…〈ステータス〉!」



 オオイさんに言われるがままにダメ元で魔法を唱える。



 ドクン!!!



 心臓が大きく鼓動したと思った直後、俺の目の前に先程と同じ透明な板が出現した。



「えっ!?何でできるの!?」

『魔力は血液に乗って体内を巡っているんだ。僕が補完した君の身体の部位はどこだった?』

「そうか、心臓………!」

『そう。魔法の発動は体内魔力を操作して行う。その操作方法が困難だから魔法も習得が困難になる。だけど血液を体内各所へ送り込む心臓が知恵の神特製なんだ。マニュアル車とオートマ車くらいの違いがある。』

「まあ、その例えは分かりませんけど、一般人より簡単に魔法が使えるってことですね?」

『その認識で間違ってないよ。』



 これってかなり凄いことなのではないだろうか。

 習得が困難な上、現代では上流階級しか使えない魔法を言葉に出すだけで使用可能って…

 もしかして、今後の人生を考えれば刺されてラッキーだったのか?

 人生について悩みながら自分のステータスを覗き込むとーーー



 NAME アシュレー・シーグラム

      半魔人

     (加護を受けし難民)

 H P 315/315

 M P 15970/16980

 STR 330

 VIT 324

 DEX 345

 AGI 363

 INT 396


 SKL 知神の加護

     戦神の加護

     戦闘術

     [剣/槍/斧/弓]

     補助魔法

     [解析]

     神の心臓

     後光     

     Unkoun



「……………………………………………………………………………………………………………はっ?」



 えっ、何これ!?どういうこと!?

 一般的な大人の平均が10なんだよね!?

 どの項目も30倍くらいあるんですけど!?

 むしろオオイさんより合計数値が上なんですけど!?

 加護を受けるとこんな状態になっちゃうの!?

 あと難民ってヒドイな!たしかにそうだけど!

 それにUnkownって何だ!?ついでみたいに後光もあるし!

 あまりの数値の高さに、俺は大混乱だ。



『……加護が重複してるんだし、これくらい普通……だょ?』

「今、少し()があった!それに自信無さそう!」

『加護を与える時には、神が人間の世界に干渉し過ぎないように、与えられる力や人数に制限が掛かるものなんだよ。』

「じゃあ、ある程度戦いで鍛えた人達から見ればこれくらい普通なんですね。」

『…………(スッ)』

「なぜ目を逸らす?」

『ま、まあ、僕達が加護を与える時に頑張りすぎたのかもしれない。加護なんて与えるのも初めてだったから加減が分からなくてさ。』

「……ちなみに、強い人の数値は?」

『世界のトップランカーで100前後。』

「もうヤダ、この人ーーー!!!」



 トップランカーの3倍って!!!

 9歳の男の子に何してくれてるの、この人!!!

 いや、神か!!!



『何か不都合があるわけでもないし、命も助かったんだから良かったじゃない?』

「力の制限の話はどこへ行ったんですか!?」

『普通の加護なら10か20、いくつかの項目の数値が上がるだけなんだけどね。1000年の間、誰にも加護を与えてなかったからその分貯金されてたのかな?1000年分の加護、それも二柱分だよ!ラッキーだね?』



 尻尾をブンブン振り回しながらオオイさんが必死にフォローしてくる。

 俺は思わず天を仰いだ。


 

多すぎても持て余す。

アシュレー君は村育ちの平和大好き人間ですので。

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