008 触るんじゃないわよ
あわわわわわ
月の巫女ルナの監視というか護衛を任された女官はパニック中。
目の前で太陽の神官と月の巫女が抱き合っている。
黄泉への道と太陽の広場で忙しく行き交う人々が、抱き合う二人を横目でちらちらと見る。
行商人、職人、戦士、各神殿の神官や噂好きの女官達など、ちょうど昼ごはんを食べに屋台に出てきている。
本来、相容れない太陽と月。
太陽の神官レアンドロは、ぎゅっと月の巫女ルナを抱きしめる。赤い長いまつ毛を伏せて、腕の中のルナを見下ろす。ルナの顔が顕になった際、レアンドロは驚きの素の表情を見せたが、今は暖かい視線をルナに送る。
視線を感じたルナが、レアンドロを見上げて思いっきりガン飛ばす。ギャルメイクをしていないので、迫力はゼロ。それがまたレアンドロには可愛く映る。
二人を見守りながら、あわあわしている女官は、このハプニングを脳内で楽しむ。
かろうじて動く手足をばたつかせているルナ様、可愛い!
お顔が真っ赤だわ!!
「ちょっと、離しなさいよ」
ルナの足掻きは無駄で、レアンドロの腕はびくともしない。
「巫女様は足を挫かれたようだ」
「嘘、挫いていない!」
ばたつくルナをひょいとお姫様抱っこするレアンドロ。
慌てて女官は自らのスカーフをルナの頭に被せる。
レアンドロの太い腕はルナを抱えて、太陽のピラミッドの階段へ向かう。
「お待ち下さい。レアンドロ神官様」
女官が追いかけるが、レアンドロの歩幅が大きくて追いつけない。
「ルシオに巫女様を預かると伝えてくれ」
「触るんじゃないわよ!馬鹿」
「おい、羽をむしるな」
ルナは動く手でレアンドロの頭飾りの赤い羽毛をむしる。
レアンドロは暴れるルナを胸に引き寄せ、彼女の動きを封じる。
あらあ、更に密着して月の巫女ルナ様のお顔がますます赤くなったわ!
ふふふと微笑みながら、ルナ付きの女官は、急ぎ月の神官ルシオの居る宮殿に戻った。




