006 ルナの嘆き
2026年の現代っ子が肌身離さずに持ち歩いているものは何でしょう?
「携帯電話がない」
ルナは夜空を見上げながら、ぽつりと呟く。
召喚された今日は満月で、月明かりで部屋が照らされている。
「友達に連絡したい」
召喚時の制服は没収され、今は簡素な白い服。
メイクも落とし、年相応のあどけなさ。
月の巫女の館の一室に案内された後、入浴を済ませて後は寝るだけ。
月の神官ルシオの住む宮殿の敷地内に、月の巫女の館がこぢんまりとある。
暇だ。
暇すぎる。
暇すぎて溶けそうだ。
紀元前5年には携帯電話もテレビも無い。
この国には文字がないらしく、小説も漫画もない。
勉強をしなくていいのは万々歳だが、日本で慣れ親しんだ娯楽がない。
何よりもいつも喧嘩をする弟や、こうるさい母がいない。
父は寡黙だが、ルナの派手なギャルメイクや服装を見ると、顔をしかめていた。
日本での生活が、煩わしかった家族の日常も含めて恋しい。
ごろごろしながら窓から見える夜空をもう一度見る。
ここで見る星空は、星粒が落ちてきそうなほど、きらきらと宝石を散りばめたように輝いている。
中学生の時に観た林間学校の夜空よりも星が多い。手を伸ばせば、星に届きそうな錯覚に陥る。
空は同じなのに、今居る世界は全く違う。
うじうじして無い物ねだりをしても仕方がないので、ルナは明日、観光に行こうと決心した。




