004 召喚の儀式
朝から月の神官ルシオは気怠かった。
月の神殿脇にある宮殿は、ルシオが神官に就いた際に宛てがわれた。
毎日、仕事場である月の神殿と住まいである宮殿の往復。
これでは、前世と変わりない。
だるうっと思いながら、今日も仕事へ。
底辺が130m角、高さ42mのピラミッドの頂上に仕事場である神殿がある。
急な石積みの階段を上り、神殿の中央に入る。
月のピラミッドはこの都市で2番目に大きい。
1番大きいのは、東にある太陽のピラミッド。
太陽のピラミッドの頂にある太陽の神殿では、燃えるような赤髪の神官達が太陽を司る。
一方、我々は月を司る。
どちらの神官も五穀豊穣や雨乞いなど、農業国家として必要な祈りを毎日捧げる。
前世で見た旅行ガイドブックを思い出す。
今は紀元前。確かこの国家は1世紀から6世紀に繁栄。
これから繁栄して行くので、自分が生きている間に滅亡は無さそうだ。
「召喚ねえ…」
21世紀の日本人の記憶と知識を持つため、本日のミッションに疑心暗鬼である。
とりあえず、香炉を準備する。儀式の時に香を炊くための器で、樹脂香を使う。
その他、今日は召喚の儀式なので、いつもより豪華な衣装。
生成りが平服。今日は純白の生地。足元まである長さの衣のため、足で捌きながら歩く。
布を巻くだけの簡易な服は、上半身は少し露出気味。金糸の刺繍入の帯状の布を肩に掛けて肌を隠す。
鏡を見る。
我ながらかっこいい。
褐色の肌に白い生地が映える。
白い羽毛と貝と青い石で装飾された重い頭飾りを頭上に載せる。
よし、やるか!
月の神官ルシオは、自分を鼓舞して祭壇に向かう。




