↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルナの初恋 2026  作者: MOKO773
第一章 まねく

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/22

021 捕らわれてもポジティブ

ぴちゃりと頬に水滴が落ち、ルナは目覚める。


地面が冷たくて、湿気の多い場所。

石造の壁に囲まれた屋内は薄暗く、埃っぽい。

微かな頭上の明かりにルナは気がつき、闇しか見えない天井を見上げる。手の届かない高い場所に小さな窓がある。月あかりで、ほんのりと部屋が明るい。


(今は夜かな。ここは牢屋みたい。少し寒い)


「お目覚めですかな?月の巫女さま」


牢の木製の格子の暗闇に向けて目を凝らすと、背中の曲がった小柄な老婆が、蝋燭を手に格子越しにこちらを見ている。

ゆらゆらと揺れる蝋燭で照らされた老婆の顔は、地味に怖い。


(いまから怪談でも話しそう)


「申し訳ないねえ。若い衆がどこぞの神官にそそのかされて、巫女さまを攫ってきて」


老婆は「よいしょ」と木製の格子前の古びた椅子に座り直す。

椅子がぎしっと軋む音が、石造の地下空間に響く。音の響きからして、広大な地下空間のようだ。目を凝らしても暗闇しか見えない。


「ここはどこ?」

聞いても土地勘のないルナには無駄な気がするが、気味の悪さを払拭したくて何か言いたい。


「若い衆がのう、うちの孫たちがのう・・・・・・」


(あ、このお婆さん、人の話聞かないタイプだ。もしくは、耳が遠いとか。)


「うちの孫が、漆喰の左官職人でな。太陽の神殿に出入りしとったんじゃ」


「あのう、お話し中に大変申し訳ないですが、何か食べる物を頂けませんか」

なぜか常にお腹がすくルナは、どこにいても食べ物の優先順位が上位にある。

お婆さんの話や恐怖心よりも、食べ物が欲しくなってきた。


「黙って、聞きなさいな」


(あ、お婆さん、耳が聞こえてる)


「漆喰職人と月の巫女との因果関係が不明です。お婆さん」

簡潔に教えて欲しい。そして、飯をくれ。


「ばあさん、いないと思ったら、こんな所に。風邪ひくよーー」

例の孫だろうか。若い男の声が暗い地下空間に響く。松明(たいまつ)を片手に近付いてくる。


「うんにゃ?」

ルナが起きているのをみて、若い男が驚く。


「ちょうどいい!そこのお兄さん、飲み物と食べ物をください。今の気分は果物!」


「ありゃあ、巫女さん、起きたかーー。うんにゃーどうしたもんか」


細身の若い男は、生成りの平民服を身につけている。召喚された日に〈黄泉への道〉で見た多くの人の服装が、生成りの布地をまとっていた。一枚の布を体に巻き付け、腰紐で止める簡単な作りである。


「うんにゃ、行くよ。ばあさん、足元、気をつけて」


若い男はルナを無視して、老婆の手を取り支える。


「おい、こら。聞け!そこの兄さん!うんにゃ君」


去ろうとしていた若い男の足が止まる。ルナは彼の口癖から、「うんにゃ君」と名付けた。


「うんにゃ?ばあさん、巫女さんって、こんなに口が悪いのか?」

「いんや、こりゃ特殊じゃな」

「太陽の巫女ソラ様はもっと上品だったような」

「そうじゃ、そうじゃ。歴代の巫女様がたは、そりゃもうお美しくて気高いお方じゃったなあ」


「なんで、漆喰の左官職人に私が攫われなきゃいけないの!?教えろ!」

ルナが二人の会話に割り込む。独房の木製の格子をがたがたと揺らす。


老婆とうんにゃ君が振り返り、月の巫女ルナをまじまじと見る。


「間違って攫ったんじゃなかろうかねえ」

「うんにゃ、俺もそう思ったんだが、太陽の神殿で見た顔と同じなんだわ」

松明を掲げて、ルナの顔を照らす。

「そっくりさんかなんかじゃなくて?」

「うんにゃ、間違いねえ。月の巫女さんだ」

「やはり、まねかざる巫女ってのは、ほんとかもしれんねえ」

「うんにゃ、太陽の神殿で聞いた噂かあー。でもなんで攫ったんだ?」


(なんだこの、うんにゃ、うんにゃヤローは)

ルナの怒りが沸点にぐんぐん上昇する。


「分からないのに、さらったの!?信じらんないっ」


「うんにゃ〜?」


ルナの顔が般若のような形相になる。


「い、い、か、ら!飯よこせ!」


ルナは、こちらを無視して話し続ける二人にブチ切れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。