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ルナの初恋 2026  作者: MOKO773
第一章 まねく

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20/22

020 ジャガーの神殿

黒いすらりとした大型の猫の彫像。

目は金色。

鋭い爪。


双子女官ミル曰く、ジャガーという動物の彫刻らしい。

ネコ科のヒョウ族。


(ジャガーって、黄褐色の体に黒いロゼットという花輪状の模様があり、そのロゼットの中にも黒い点が入った動物じゃなかったっけ?)

女子高校生ルナの知るジャガーは真っ黒ではないが、黒は黒でかっこいい。


ルナは、双子女官ミルと共に〈ジャガーの神殿〉にいる。

神殿入口の黒いジャガーの巨像を白い布越しに観察する。

外出時は顔を隠すために薄い布を頭からすっぽりと被る。月の宮殿の外に出るための条件なので、わずらわしいが仕方がない。


召喚前の修学旅行中に行った国立人類学博物館で見た遺跡が、ルナの目の前にある。

2026年に見た巨像はどれも欠けたり、塗料が落ちていた。しかし目の前の像は、動き出しそうなほど生き生きとしている。


(うおー。博物館の展示物で観た時より、迫力ある。すごい。すごい)


ジャガーの神殿は、太陽の神殿のような極彩色と思いきや、白と黒を基調としたモノトーンなインテリア。

この神殿は、月のピラミッドから南に伸びる幅40mの石畳の大通りからは見えない。大通りから見えるのは石造りの巨大な土手である。幾重もの土手を超えて急な勾配の石段を上がると、見晴らしのいい高台に出る。


突然、眼下に巨大な石造建築が現れる。


地下にくだる何百段もの階段の先にそびえ立つ石の壁には、不思議な彫刻がみえる。壁面から飛び出たカメレオンの舌のような突起物の上に、丸い円盤が壁に垂直に刺さる。模様の刻まれた円盤の両脇に、球体が半分埋め込まれたように彫られている。球体の近くに大きな口のような浅彫が見える。口の中には鋭利な歯が並び、壁の前に立つ者を威嚇する。


ルナとミルは途中で休みながら階段を降り神殿内部に入る。〈ジャガーの中庭〉を通して入る自然光のみの屋内は薄暗い。

目が暗闇に慣れてくると、壁画や壁の浅彫がだんだんと現れる。


(お、これは鳥か?)

ずんぐりむっくりな鳥の絵がある。大きなくちばしに、丸い点の目。ぽかんとした表情である。足は短く丸い体型の鳥。

(なんだか愛嬌がある。かわいいな)


口を上に向かってパカっと開けたカエル。このカエルの体型も丸い。

(なんで口を開けているのかな?笑える)


カメレオンの舌のような突起物が、細かい模様の刻まれた石の彫刻から飛び出ている。

(くるんと手前に巻いて飛び出ているのは舌?それにしても私の背丈ほどあるな)


ジャガーの中庭からの光を頼りに、ルイはどんどん神殿の奥に進む。

(あ、この蛇には羽が生えてる)

黒い猫のようなジャガーにも羽が生えている。ホラ貝を吹いている。


遺跡好きギャルとしては、今回の召喚は不本意だが、意外と楽しめる。


(今を楽しまなきゃ)


壁画や石の彫刻を壁伝いに進むと、ジャガーの神殿奥の大広間に着く。

神殿入口のジャガーの巨像よりもさらに大きいジャガーの巨像が、大広間中央に在る。

老若男女集う場所の割に、今日は全く人がいない。


(地上からかなりくだったけれど、まだ空が見える)


黒いジャガーの巨像の前に立ち、中庭越しに雲一つない空を見上げる。

ひんやりとした湿っぽい空気が、どこからか流れてきて、ルナの肌をなでる。

一緒に来た双子女官ミルとはいつの間にかはぐれてしまった。

今、この大広間には、黒い巨大なジャガーの像とルナしか居ない。地下空間特有の冷気が彼女を包む。ぶるっと身震いをする。

ジャガーの金色の目が微かな明かりできらめく。


(え、今。目が動いたような気がする。こわっ)


ルナはジャガーの像から目を逸らし、周囲を見渡す。誰もいないはずだが、何かの息づかいが聞こえる気がする。


(怖くなってきた)


ルナがジャガーの像の背後にまわる。この像を少し見たら、ミルを探そう。

恐る恐るジャガーの巨象を観察する。怖さよりも好奇心が勝り、大広間の暗がりに入る。


すっと伸びてきた手がルナの口元を押さえる。


暗闇の中、咄嗟にルナが手の主を見上げるが、深くフードを被っており相手の顔が見えない。布が口を覆う。


「ふあっ!?」


声にならないうめきをルナが発する。

一瞬の出来事だった。何かを嗅がされたルナは気を失った。


ルナの顔を隠していた白い薄い布が、頭からふぁさりと床に落ちる。


「ルナ様、どこにいらっしゃますかーー?」

やっとルナに追いついたミルの声が遠のいていく。


(なんでこんな頻繁に攫われるんだ?召喚しといて、扱いがあらい!)


眠気にあらがっても確実に遠のく意識の中、ルナは文句を脳内で言い続けた。

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