018 アイスを食べたい
年中、食べたいもの。
それは、アイス。
今日もルナは日本での食生活を恋しく思う。
太陽の神官レアンドロから貰った小さな丸い菓子を頬張りながらぼやく。食べる前に、双子女官に確認してもらい、不純物は入っていない。
「アイス、食べたいーーー。マジ、暑ーい。やーばーいー」
駄々をこねても、何も出てこない。
「ジェラードも食べたーーーい」
一般教養の授業中だが、双子女官シエンにあえて聞こえるように言う。
「月の巫女様、あのう、ルシオ神官様から言伝があります」
奇声を発している月の巫女ルナに、恐る恐る扉の隙間から顔だけを出して話す栗毛の少年。
確か、少年はエリアス。月の神官ルシオ付きの神官見習い。
初日は睨まれたけれど、今日はおどおどしている。
「お入りなさい」
座学中だが、双子女官シエンはエリアスを中に招き入れる。
「貴方にも一般教養とマナーを教える必要がありそうね、エリアス神官見習い様」
シエンになぜか恐れ慄いているエリアスは、くりくり栗毛色の頭をうなだれて俯く。
「ごめんなさい。ねえ様」
「ここでは、あなたの姉ではありません」
「いいですか、ルナ様。授業中に私語は慎んでください。あと『まじ』はやめてください。言葉の響き的に、巫女の品位が損なわれます」
「はい、ごめんなさい。アイス、食べたい。本当に。とても。すごく」
『マジ』を変換しまくる。
「いいですか、エリアス神官見習い様。ノックを3回して、中の貴人の了承を得てから、扉を開けてください」
「はい、ごめんなさい。シエン副女官長」
「で、アイスってなんだ?うまいのか?」
エリアスがルナの隣に座り、真剣な顔でこっそり尋ねる。
「うまい、うまい。アイスクリームは美味しいよ。初めて食べたら、感動。病みつきになる美味しさ」
「へえ」
「たぶんだけど、ここでも作れると思う。チョコミントが良いな〜」
「なにそれ、僕も食べたい」
「材料があればアイスクリームは作れる」
「何がいるの」
「牛乳、生クリーム、砂糖、卵黄、好きな香料があれば」
「厨房と行商人に聞いてみるよ」
「できるね、少年。あと氷もよろしく。混ぜる道具と冷やす器もね」
コソコソと話す二人。シエンの冷ややかな視線に気がつかない。
「私も混ぜてください。味見したい」
双子女官ミルが話に加わる。
「私はいちご。レモン。オレンジもいいですねえ。ふふっ」
「僕は、カカオを使いたい」
「この国にはカカオがあるんだ!なら、チョコレートを作れるかも。ミントもあれば、チョコミントができる」
「へえ、ちょこれーと?」
「ピスタチオもおすすめ。この国に、ピスタチオはある?」
「んーーー僕は分からないや。ミル姉さんは知ってる?」
「そうねえーーー」
「私語厳禁!」
教育係としてシエンは、すぐに集中力が切れる2人に根気良く教えることにした。
そして、今日、ミルも生徒に加わった。




