012 疲れた時は美味しい食
太陽の神官レアンドロの宮殿は、彼の暑苦しいぐいぐい感から想像できない品の良い造り。
(へえ、赤い羽男、意外と落ち着きのある家に住んでるんだ。なかなか、いいじゃん)
ルナは太陽の宮殿を見渡す。
白い漆喰を基調とし、神殿のような華美な装飾は少ない。
中庭には噴水があり、噴水の中央には赤い薔薇が咲き乱れる。
外は灼熱だが、宮殿に入ると涼しい。今は乾季なので、心地の良いからっとした風がふく。
中庭を囲う回廊を通り抜け、奥の食堂にルナは運ばれた。
お姫様抱っこで。
「おろして」
「だめ」
レアンドロはしっかりとルナを抱きしめたままである。
「離してってば!赤い羽男」
「レアンドロ」
「赤い羽男」
「名前聞いてたのに、わざとそう呼ぶのはやめようか。やめないとキスするよ」
「れ、レアンドロさん、自分で歩きますので・・・・・・」
「だめ」
召使いが無語で近づき、レアンドロの装飾品を一つずつ丁寧に外す。
白い布一枚になったレアンドロは、そのままソファに座った。
ルナはレアンドロの膝の上に座る形となる。
「おろしてってばっ」
彼の腕の馬鹿力で思うように動けない。もどかしい。
「今日は餌付けをする」
真面目な顔で太陽の神官レアンドロがルナに向き合って言う。
そっぽを向くルナの顎を掴み、ゆっくりと自分に向ける。やっていることは強引だが、ルナに触れるときの手付きは優しい。
真剣なレアンドロの深い金色の目と、ルナの漆黒の目が合う。
ルナ、目を逸らす。
彼の視線が痛い。
そんな攻防をしている間に、次々と多国籍な料理が運ばれる。
食欲をそそる良い匂いがする。
「はい」
当たり前のように、サラダをルナの口に運ぶレアンドロ。
「どうぞ」
口をぎゅっとして顔を背けるルナ。自分で食べますの意思表示。
「ほら、召し上がれ」
(くうっ、食べたい)
「ほら、お腹がすいているんだろう?」
フレッシュなレタスっぽい葉っぱが、ルナの口の前で待機している。
ぱく。
「ほれ」
ぱくぱく。
「これは一押しの肉料理」
(柔らかくて優しい味。うまっ)
「スープはいかが?」
レアンドロが、こぼさないようにそっとスープをルナの口に運ぶ。
「さっき食べたがっていた、魚貝のピラフ」
ルナ、ぱくぱくが止まらない。
透明なスープには、四角くカットされた野菜や鶏肉が浮かぶ。小さな具は食べやすい。
(お、素麺みたいな麺が)
この黄色い粒はとうもろこし。
大好きなアボカドもある。
いい塩味。体に染みる。
気がついたら、月の巫女ルナは目の前に次々と現れる食に、無心に食いついていた。




