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駒鳥姫、不死鳥姫

あまりにも真っ直ぐすぎて面食らった。気を取り直して、質問というよりは確認のような問いに答える。


「えぇ。その通り。どれも間違いなく死んでるわ」


最初は弓矢で心臓を射抜かれて。暴漢に刺されて。毒を盛られて。上からシャンデリアが降ってきて。以下略。合計で10回死んでいる。

それはもうばっちり死んでいる。議論の余地なく死んでいる。演技でも誤報でもなく、尾ひれのついた噂でもなく。自他ともに認める死だ。


「そして、生き返っているのも本当」


死ぬたびに生き返っているのもまた本当だ。革新派が唱えるような替え玉などではない。

人生は11回目。ちなみに10回目の死亡は先日の替え玉どうこうの裏で起きた。過激な革新派が蜂起するための時間を稼ぐためだろう。思ったより早く生き返ったおかげで冷や水を浴びせることに成功したが。


「どれもこれも、駒鳥神の加護でね」


一応、駒鳥神とは主人と眷属の関係だ。眷属の死を感じ取った神が、その力でもって蘇生させてくれる。

最初に死んだ時もそう。胸に矢を受けて死んだロヴィーナの遺体のそばに降り立った駒鳥神は、わたしの愛しい駒鳥姫が死ぬなんて許さないとその権能を振るった。矢が刺さった跡は治り、ロヴィーナは息を吹き返した。

それからずっと、ロヴィーナが死ぬたびに駒鳥神が蘇生を行う。死は10回、蘇生も10回。死ぬたびに蘇る。


「世間では不死鳥姫と呼ばれるように、ね」


死んでは生き返るなんて、それではもう愛らしい駒鳥ではなく不死鳥だと。そう揶揄して呼ぶものもいるように。

死ぬたびに代替わりする替え玉などではなく、駒鳥姫本人が死と蘇生を繰り返している。


はっきりと肯定したロヴィーナは、そうね、と話を続ける。


「そうね。ついでだからここにも踏み込んでおきましょうか」


いずれ機会があれば言及しようと思っていたが、今がその『いずれ』だと思うので。ついでだから踏み込んで話しておこう。

そう決めて、ロヴィーナは結論から口にする。


「私を殺す誰かを捕まえなくちゃいけないの」


これまでの10回の殺害。死んでは蘇る。だが、無為にそれを繰り返しているわけではない。殺されているうちに、理解したことがある。

この連続した殺害の向こうには、それを仕組んだ誰かがいる。


実行犯はすべてわかっているしその場で取り押さえられている。うち何人かはすでに処刑済みだ。

だが、こんな末端の仕手人を処分したってどうしようもない。実行犯ではなく、それを指示したものを捕まえないとこの流れは断ち切れない。11回目、12回目と続くだろう。いずれ20にも30にもなるし、100までいくかもしれない。


「……革新派の者ですか」


硬い声でラディウスが問う。この相次ぐ殺害は、革新派の過激思想の連中が仕組んだものではないか、と。駒鳥姫を排除するというのは権威を取り上げただの平民に引きずり下ろすのではなく、命そのものを消してしまう方へと舵を切って実行しているのではないか、と。

そうであるならなおさら彼女を守らねばならない。暗殺の危機に常に晒されているということなのだから。


緊張をにじませるラディウスへ、ふるりとロヴィーナは首を振る。


「いいえ。その『向こう』よ」


ラディウスの推理は正しい。度重なる殺害は確かに過激な革新派によるものだろう。だが、話はそう単純ではない。

そのもっと『向こう』に黒幕がいる。革新派を煽り、駒鳥姫を殺して神すらも排除してしまえと囁く誰かがいる。そうでなければ説明がつかない部分がある。

先日の替え玉騒動の時もそうだが、革新派は睨めば萎縮するような肝の小さい連中だ。ひと睨みで神との格差を理解して縮こまる。だが、集まって徒党を組むと急に気が大きくなる。政治の場を半分に分けるほどの勢いと発言力を発揮する。それはつまり、誰かがまとめて煽っているのだ。

それこそが黒幕。その黒幕を潰さねば意味がない。凶器を振るう実行犯を取り押さえても、指示をした貴族を取り押さえても終わらない。革新派の筆頭の貴族を抑えても意味がない。

水が流れる蛇口を閉めるのではない。栓を捻るのでもない。元栓を止めるのでもない。水道管を伝い、水源を枯らさなければ止まらない。

これはそういう話だし、ロヴィーナの護衛につくということはそれと戦わねばならないということになる。


それでも務めるか、という質問は無粋なのでもうしない。ラディウスの顔を見ればわかる。

だからロヴィーナが言うべきは一言だ。黒幕から守るのがお前の役目だと告げること。


「やれるわね?」

「やります」


即答。上等だとロヴィーナは微笑んだ。

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