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こまどり、こまどり、誰を殺した?

「は……はい……!! はい、駒鳥神さま……!!」


がくがくと震え、皆、次々とその場に叩頭する。保守派だ革新派だと、人間の思想など関係なく。神と人間、その差の前に膝を折る。

革張りの椅子を跳ね飛ばし、横柄に靴を乗せていた絨毯の上に額を擦り付ける。ここで駒鳥神に忠誠を従わなければ死ぬと本能の部分で理解していた。


「うん、うん! わかればいいのよ! ね!」


にこりと駒鳥神が微笑む。愛らしい丸い目を細め、きゃたきゃたと笑う。


「恐れながら、駒鳥神様」


この場を支配するのは神と人間の圧倒的な差。横暴なその格差を人間の理性によって埋めようと、す、と口を開いたのはディアデム卿だった。

はいなぁに、と駒鳥神が応じる。人間の尺度では革新派といったか、神の尺度では『うまく育たなかったもの』の代表者を気取っているものだ。そこから言葉が出てくるなら聞いてやろう。無様な命乞いでも、手のひらを返しての恭順でも。


「まずは謝罪を。フリューゲル卿を止められなかったことについて、誠に申し訳ありませんでした」


革新派の筆頭として、身内がこんなことをしでかしたことについて。フリューゲル卿の思想に同意したことはないが、筆頭を名乗る以上は謝罪するのが筋であろう。

そうね、と駒鳥神は頷く。筋だなんだと人間の都合は知ったことではないが、謝るというのなら言葉は受け取ろう。裁きについては下したので、こいつが謝る必要はないのだが、まぁ突っぱねる意味もないので受け取りはする。

で、それがなにか。それだけなら話は終わりだ。特に効果のない謝罪をされたな、と思うだけ。


あるのならばと続きを促せば、ディアデム卿は叩頭したまま続きを紡ぐ。


「ですが、勘違いしないでいただきたい。私はあなたを排除したいのではないのです」


人間側から神へ、手を切ったと思われているだろう。ロヴィーナを処刑することで決別を突きつけたと。

ただひとりの過激派が暴走しただけのことだが、神にとってはそんなこと関係なく、人間側の総意によるものだと解釈されてもおかしくない。止められなかった全員が同罪だと言われてしまえば従うしかない。


そうはならぬように、か細い綱を渡る気持ちでディアデム卿は言い含める。

神と人間の格差の暴力などあってはならない。理性によって調停されるべきだ。ロヴィーナはおそらく今ここに向かっている最中だろう。それまで場を繋げるのは自分の役目。絆を繕うように、丁寧に言葉を選びながら続ける。神の矜持を守り、人間の尊厳を保つように。


「我々、革新派の行動はまるであなたを排除するように映るでしょう。ですが違うのです。我々は、今までの在り方を変えたいのです」


親鳥と雛鳥の関係に例えられるように、これまで一方的に神の庇護によって生かされてきた。しかし雛鳥だっていつまでも雛ではない。然るべき時に巣立ちをせねばならない。技術の発展はその巣立ちの兆しだ。そう思ってここまで邁進してきた。

親鳥に依存し、いつまでも巣立ちをしない雛鳥であってはならない。駒鳥神への依存から脱却せねばならない。それが我々、革新派の思想の発端だった。


「ですから、雛鳥の巣立ちを見守っていただけませんか?」


厚かましくも願い出る形で発言を締める。ふぅん、と駒鳥神が愛らしい丸い目を瞬かせた。

雛鳥の巣立ち。うんうん、立派なことだ。我が子たる人間がこんなに立派に育ってくれて、庇護者としてはとても嬉しい。


だが。


「あなたはそうかもね。でも、他は?」


革新派とかいう『うまく育たなかった』ものが全員そんな立派な志ではないだろう。親鳥を殺してしまおうなんて考える馬鹿もいることを知っている。ここまで育ててやった恩を忘れ、親鳥を殺せと傲慢なことを考えている連中だ。雛鳥ひとりが立派な志でいるからといって、愚かな雛まで看過するいわれはなし。


「わたしは雛を選ぶ権利があるのよ?」


親鳥は雛を選ぶ権利がある。誰に餌をあげて、誰を巣から落とすか。『うまく育った』ものに餌をあげて庇護し、『うまく育たなかった』ものは巣から落として口減らしするか。

立派な志を持つ雛に免じてすべての雛を無条件で庇護するなんてことはしてやれない。だから選ぶ。当然のこと。


「だから選ぶの。でもね」


いちいち選ぶのも面倒だから、いっかい全部更地にしちゃおうと思うの!

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