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一方、駒鳥姫

「痛い!!」


ばたばたと手足を暴れさせ、声にならない叫びをあげて。開口一番、ロヴィーナはそう叫んだ。

びくりと処刑人たちが肩を跳ねさせる。跳ねた処刑人たちは我先にとその場に額づいた。


「お、お許しください!!」

「俺、いえ私どもめは雇い主の命令に従っただけで……」


どうかどうか。神の奇跡を目の当たりにした今、次に来るのは神の審判。なんとか少しでも軽減させようと、責任を押し付け合うように許しを請う。

駒鳥姫は地面にいまだ縛り付けられたまま。自分たちがここで逃げ出したとして追いかける手段など彼女にない。しかし逃げ出そうなどと考える者は誰もいなかった。仮にここで逃げ出したとしても見つかるだろう。蘇生などという奇跡をなせる神が逃亡者ひとり見つけられないわけないのだ。

本能に叩きつけられた畏怖と恐怖に縮こまり、ひたすらに許しを請う。その声に応答したのは蘇生の反動に悶えるロヴィーナではなく、この場に到着した冷静な鉄面皮の騎士の声だった。


「全員の捕縛を」


牛馬すら残さず。手勢に指示をしたラディウスは剣の切っ先でロヴィーナを拘束する縄を切る。

ご無事で、とも、お怪我は、とも言えない。無事でもないし怪我どころか死んだ直後だ。救助した時のお決まりの文句も言えず沈黙のままロヴィーナを助け起こす。


「ありがとう。……フリューゲル卿は?」

「駒鳥神自らが取り押さえに」

「ロヴィが?」


おやまぁ。直接殴り込み。状況に似合わず気の抜けた声で呟く。

ラディウスの言い方だと分身ではなく本体が直接だろう。駒鳥神がロヴィーナの様子を遠隔地からも探れるように、ロヴィーナもまた駒鳥神の気配を遠くからも察知できる。駒鳥神の気配、それも大きなやつが頭上を移動した感覚はあったので、おそらくこの予想は的中している。

ちらりとフリューゲル卿の屋敷の方を見てみれば、物見塔のてっぺんを打ち崩して頭を突っ込んでいる丸い羽毛が見える。


「……ちょっと可愛いのが腹立つわね」


状況が状況でなければ大きく丸い愛らしい尻。うーん。

いかに人知を超えた支配者であっても見た目は駒鳥そのままなので、人間の体躯をゆうに超える巨体でも愛らしさは変わらない。大きくて丸いふわふわの羽毛がもそもそ動いているところだけを見ると非常に愛らしく可愛らしい。その愛らしさと可愛らしさが状況のシリアスさを妙に緩めてしまう。

死んで生き返るという常識はずれの行為も11回目となると、こんな現実逃避まがいのことすら考えるようになってしまうようだ。いけない。気を引き締めないと。


「とりあえず、状況を教えてくれる?」

「はい」


駒鳥神の見た目の可愛らしさに気を取られている場合ではない。気を引き締めたロヴィーナは改めて状況をラディウスに問うた。

ラディウス曰く。ロヴィーナが連れ去られた後、保守派の上位層を叩き起こして手勢を集めた。一刻を争うため、各方面への状況の伝達はいちいち行わず、保守派の筆頭にだけ簡潔に。あとはそこから話が広がるに任せ、自分は手勢を集めるほうへと注力した。状況を飲み込むなり派遣された手勢をまとめてフリューゲル卿の屋敷へ。

もうこの時点で処刑は行われていた。処刑前の救助は間に合わなかった。しかしそれを責めている場合ではないと切り替え、この屋敷にいる全員の捕縛に踏み切った。


「そうね。どうせ生き返るし。良い判断だわ」


あっさり切り替えられたのは、ロヴィーナが死んでもどうせ生き返るとわかっていたからだろう。悪い意味ではなく信頼の意味で。集められた兵たちもまたそれをわかっていたのかもしれない。彼らは悪い意味かもしれないが。


うん、と説明を飲み込んで頷く。ラディウスからの説明を受けている間に、処刑人たちも連行されていったのだろう。牛馬すら連れて行ったらしく、この場にはロヴィーナとラディウスだけしかいない。

自分たちもまたこんなところでのんびりしている場合ではないだろう。死んで生き返った直後だが、一息ついている暇はない。まだ目眩はするが踏ん張らなければ。よいしょとロヴィーナが立ち上がる。すぐにラディウスが支えるために手を差し出してくれた。


「ありがとう。お言葉に甘えるわ」


手を握って支えにし、自分の足でしゃっきり立つ。つきまとう目眩を振り払って瞬きする。髪についた泥を払い、手櫛で軽く整える。よし、身だしなみ完了。


「迎えの者を寄越しております。ロヴィーナ様は屋敷にお戻りを」

「あなたは?」

「私も随伴します」


捕縛については別の者に任せている。騎士として一人の人間を護衛することは得意だが、集団の指揮は経験がないので。部隊を率いることに慣れた者に任せてある。信頼できる人間なので抜かりはないだろう。本人もまた、駒鳥姫様の役に立つ時と張り切っている。

屋敷に戻る頃には捕縛も済んでいるだろう。そしてしかるべき処罰のための準備が行われ始める。ロヴィーナは紅茶でも飲みながら体を休め、事態を見守っていればいい。


「森の外に馬車をつけています。そこまで歩けますか?」

「えぇ。大丈夫」


帰りましょうか。

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