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カッコウがさえずる

カッコウ。カッコウ。絶好のチャンスなのに、絶対に手が出せない。カッコウ、滑稽。

そのままあなたたちは格好の獲物としてカッコウに足をすくわれて巣食われてほしい。


韻を踏みながらくすくす笑い、ククルスはメイド服の裾を翻す。


「でも、正体がバレた以上は今までとはやり方を変えないといけませんね」


今まで通り、行儀見習いのメイドとしてこの屋敷にいることはできないので。

そう言うククルスの口調は軽く、まるで転職するかのようだ。事実、彼女にとってはそんな調子なのだろう。


「逃がすとでも?」

「でも捕まえるだけの罪状が私にはありませんよ?」


ただちょっと迂闊な発言が多いだけの、おしゃべりなメイドを何の罪状で捕まえるというのか。思想は理由にならない。何の悪事も指示していない。促しても示唆してもいない。度重なる10回の殺害だってククルスは何も関わっていない。誰かが勝手にやったこと。

ラドランだってそう。恋心を拗らせたのも、殺されても生き返るんだからわざわざ自分が守らなくてもいいと絶望したことも、その結果心中に至ったのだって。その心情の変化にククルスは何も関わっていないし誘導もしていない。

よく言葉を交わすメイドとして、騎士と姫の恋愛って素敵ですよねというありきたりな話をしたり、殺されても生き返るのに護衛の意味はあるのかと独り言を呟いたりしただけで。よくあるありきたりな夢物語に自分を当てはめて想いをつのらせたのも、護衛の意味について考えたのも、それはラドランの勝手。何気ない一言や独り言を受け止めて考え込んでしまったのは彼がそういう性格だったからで、ククルスがやれと命じたわけでも促したわけでもない。

それは欺瞞だと言われても、でも事実そうなのだ。そういう性格とわかっていて言葉を投げかけただなんて、そんなことで罪に問うていたらきりがない。


「あはっ」


カッコウ、カッコウ。鳴き真似さえしてみせながら、歯噛みするラディウスを見下ろす。

可哀想に。これだけ踏みにじられても手を下せない。無礼討ちとして処理すれば殺せなくもないが、そうしたって、あの真面目なメイドがたった1回の無礼で殺されるなんてと非難を受けるだろう。そのあたりの根回しはしっかりやっている。

そんな暴君のもとでは働けないと、使用人たちは離れていくだろう。保守派だって手の平を返す。味方は誰もいなくなる。孤立したらあとはこちらの思う壺。1神と2人だけならどのようにも追い落とせる。


つまりお前たちはただ見守るしかできないし、見送るしかできない。どれだけ悔しかろうが、どれだけ憎かろうが。

自然と漏れそうになる笑いを隠しもせず吐き出したククルスはつまんだ裾を軽く持ち上げる。


「それでは駒鳥姫様、本日でお暇をいただきます」


もうこの屋敷でできそうなことはないので。活動場所を移すとしよう。

行儀見習いのメイドとして、今後は様々な貴族の屋敷にお邪魔するのだ。今まで通り、ちょっとおしゃべりがすぎるのが欠点の真面目なメイドとして。


「メイドとしての経験を積むためには、環境を変えることも必要ですからね」


まるで転職の計画のように言ってみせる。表向きはそうなのだろう。だが、その裏は。

翻訳すると、『色んなところに出入りして工作していくからな』という宣言にほかならない。カッコウが托卵の場所を変えるだけ。


ふふっと笑ったククルスはメイドとしての礼儀を保ったまま、くるりと裾を翻す。雇い主に転職の意向を伝え、了承をもらったので早速屋敷を辞す支度をしに行くかのように。

完全勝利を決め込んで立ち去る寸前、完全敗者へ向けて振り返る。


「新しい雇い主も、おしゃべりが好きな方だといいのですけど」


にこりと微笑み、再び踵を返す。機嫌がいいあまり歌いだしながら立ち去っていく。


「こまどり、こまどり、誰が殺した……」


ゆっくり歩き出す歩調に合わせ、平民の子供にまで広まっている歌を口ずさむ。

まずは軽く狩人が。胸を一刺し 矢が一刺し。森のお次は町で殺され。視察で刺殺。二刺し目。ラディッシュサラダに毒があり、(デッシュ)にぽたぽた 血がいっぱい。

こまどり、こまどり、誰が殺した。クック・ロビンはコック・ヨハンにまたもや毒を盛られたとさ。放るよ放る、ダンスホール。上からどしんとシャンデリア。信じられぬ生還続き、騎士の心情『我要らぬ』、心中騎士の心中お察しいたします。

こまどり、こまどり、誰が殺した。ウェルカム招かれ、姫はウェルダン。火の輪が跳ねて焼けちゃった。セジャロンとオデュロン。口論回り、回り回って姫が死ぬ。2人を切腹させた姫、今度は湖で船が転覆。

歌詞に載っていることはすべて本当だ。別に自分が仕向けたわけではないが、何故かそうなってしまった。わざとらしくとぼけて、あは、と笑う。


「こまどり飲み込むわるいひと。次は何を企んだ(托卵だ)?」

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