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02.目が離せなかった数秒

今日、他校の可愛い子に会った。

ほんの数秒。

それだけだったのに、なぜか目が離せなかった。

すれ違っただけ。

言葉を交わしたわけでもないし、目を合わせることすらできなかった。


それでも――

あの瞬間、胸の奥がチクッとした気がした。

今も、その子の目を何度も思い出してしまう。

思い出すたびに、心臓が少しだけ早くなるのが分かる。

……俺は、何を浮かれてるんだろう。

自分でも呆れる。

けど、それでも――

あの顔が、頭から離れなかった。


そういえば、レンも言っていた。

「好きな男子に会えた」って。

高校の名前くらい教えてくれてもいいのに、結局はぐらかされたままだ。

……まぁ、俺みたいに「どこの高校か分からない」んじゃ、答えようがないのかもしれないけど。

(こういう時は……やっぱり、恋バナには恋バナを返すべきだよな)

よく分からない自分ルールを持ち出して、俺はスマホを手に取った。


「今日は、どこの高校か分からないけど、可愛い子に会えた」

送信してすぐに、既読がつく。

そして、すぐに返信が返ってきた。

「そうなんだ。ちなみに、どんな制服だったの?」

思ったより食いつきがいい。

少しだけ驚きながらも、どこか嬉しくなる。

レンが自分の話に興味を持ってくれている。

それだけで、心が少し温かくなるのを感じた。

……同時に、少しだけ恥ずかしくもあった。

自分が見た女の子の話を、こんなふうに誰かにするなんて。


「緑色のブレザーだったんだけど……高校までは分からなくて」

「んー……同じ県でも、緑のブレザーだけじゃ絞れないかも」

少し間があって、続けてメッセージが来る。

「もしかしたら、レンの学校だったりして」

その一文に、ほんの一瞬だけ指が止まる。

「流石に分からないよな。でも、ありがとう」

少し迷ってから、続けて打ち込む。

「そういえば、レンって眼鏡かけてるの?」

「レンは普段から眼鏡だよ。カケルくんは?」

なぜか分からないけど、その質問に少しドキッとする。

「俺もだよ。かなりの近眼だから、ないと何も見えない」

「そっか」

「その子にまた会えるといいね」

少しだけ間を置いて、さらに続く。


「ちなみに、レンの好きな男子も眼鏡かけてるよ」

その一文を見た瞬間、胸が少しだけ高鳴った。

なんとなく――応援されているような気がしたからだ。

「ありがとう」

「誰かは知らないけど、レンに好かれてる男子が羨ましいよ」

「そんなことないよ」

「学校が一緒になったことないから、きっと片想いだし」

その言葉に、わずかな引っかかりを覚える。


片想い。

しかも、「学校が一緒になったことがない」?

「え、それってどういうこと?」

少しして、返信が来る。

「簡単に言うと、一目惚れかな」

「友達にその子の写真を見せてもらって、キュンってなっちゃって」

「恥ずかしいけど、その写真、今は宝物にしてる」

思わず、小さく息を吐く。

そんなこと、あるんだな。

「へぇ……」

「それが俺だったら嬉しいのに」

「それはないかな」

即答だった。


あまりにも迷いがなくて、思わず苦笑する。

「少しくらい期待させてくれてもいいだろ」

「あはは、ごめんね」

土下座のスタンプが送られてくる。

つられて、俺も同じスタンプを返した。

「なんで土下座返し?」

「いや……そこまでしてもらう話じゃないし」

送ったあとで、少しだけ後悔する。

こういう返し、変に思われただろうか。

これからはもう少し気をつけよう。

それでも――

レンの言葉が、妙に胸に残っていた。

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