02.目が離せなかった数秒
今日、他校の可愛い子に会った。
ほんの数秒だったけど、目が離せなかった。
あの瞬間、何かが胸にチクチクと響いたような気がした。
目を合わせることすらできなかったけれど、何度も何度もその目を思い出して、心臓がドキドキしている自分がわかる。
――俺は、何を浮かれているんだろう。
でも、あの顔が頭から離れない。
そういえば、レンも「好きな男子に会えた」って言っていたっけ。
高校の名前位教えてくれても良いものを教えてくれないって何か焦らしてくるよな。
まぁ、俺みたいに何処の高校ってのが分からなかったら答えられないけど。
『やっぱ、恋バナっぽい話には恋バナっぽい話を続けて盛り上げないといけないよな。』
翔汰は独特な理論に基づいて恋バナを続けようとした。
「今日は何処の高校か分からないけど、可愛い子に会えた」
翔汰のメッセージにレンは素早く反応した。
「そうなんだ。ちなみに、どんな制服だったの?」
レンの質問に、翔汰は少しだけ戸惑った。
レンが興味を持ってくれていることに、何か心が温かくなるのを感じた。
でも、同時にそれが少しだけ恥ずかしかった。
自分の好きな子の話をすることに、こうして照れる自分がいたなんて。
「緑色のブレザーだったんだけど、高校が分からなくて」
「んーっ、レンと同じ県とは言え、緑色のブレザーだけでは絞りきれないかも。もしかしたら、レンの学校だったりして」
「流石に分からないよね。でも、ありがとう。ちなみにレンは眼鏡かけてないの?」
「レンは普段から眼鏡かけているよ。カケルくんは眼鏡しているの?」
レンは普段から眼鏡ではなくコンタクトレンズ愛用だが、翔汰の質問には咄嗟に嘘をついた。
「同じだね。俺も普段から眼鏡だよ。かなりの近眼だから眼鏡が無いと何も見えないんだ」
「そうなんだ。その女子にまた会えると良いね。ちなみにレンの好きな男子も眼鏡かけているよ」
レンの一言に翔汰は自分を応援してくれているように聞こえて嬉しくなった。
「ありがとう。誰か知らないけど、レンに好かれている男子が羨ましいよ」
「そんな事ないよ。学校が一緒になった事ないから、きっと片想いだし」
「片想いだし」と言ったレンの声には、何か秘密めいた響きがあった。
翔汰はその言葉に、わずかな疑念を抱きつつも、レンが本当に何を考えているのかを知りたくなった。
もしかしたら、レンも自分の心の中で何かを迷っているのかもしれない。
「えっ、それってどう言う事?」
「簡単に言うと一目惚れってヤツかな。友達からその子の写真を見せて貰ってキュンときちゃったの。恥ずかしいけど、その写真を貰ってレンの宝物にしているよ」
「へぇー、そんな事って本当にあるんだな。それが俺だったら嬉しいのに」
「流石にカケルくんでは無いと思うよ」
レンが即答したのを聞いて、翔汰は思わず吹き出しそうになった。
レンの素早い反応に、なんだか彼の視線が自分に向いている気がして、心臓が少しだけ早くなるのを感じた。
「少し位は期待させてくれても良いんじゃない?」
「あはは、ごめんなさい」
レンはそう返信すると、土下座のスタンプを送る。
それに対して翔汰も土下座のスタンプを送り返す。
「何で土下座返し?」
「あっ、いや……土下座してもらう程の事じゃないし」
これには逆に変に思われてしまったようだ。
余計な反応をしないよう、これからは気を付けよう。
それでも、レンの言葉が、妙に胸に残っていた。




