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恐る恐る振り返ってみると、そこにいたのは。
めっちゃくちゃ美人な二十代前半くらいの青年でした。
ただし、左右の額に一本ずつ青い角のある。
あれ、男の人を褒める時美人って使うっけとか場違いなことを考えながら、目の前の黒髪で青い目の長身のお兄さんを見つめて私は慌てて言い立てた。
「た、食べないで下さい! 私なんて痩せっぽっちで美味しくないですし! あいにく食べ物は持ち合わせていませんが、本当に本当に私は食べるところもないし、美味しくないです!」
なんか他にいうことあるよねっと思いながらも、とっさに出てきた言葉は美味しくないというなんとも語彙力も情緒もない言葉で、情緒はこの場面で必要か? なんてことを考えたけど、私は相手の出かたを待つことにした。
「い、いや。食べないよ? 大丈夫。それよりも君はどこから来たんだい? 見慣れない服装だけど」
そういう男の人は着物っぽい服を着ている。
私はといえば、ベージュに茶色の水玉のロングワンピース。
林の中を歩く服装ではなかったけど、今日の朝は寝坊したので、一枚で決まる服が良かったのだ。
「どこって……逆に、ここどこですか? お兄さんは……鬼??」
「ここは常世の国、青の一森。そうだね。俺の種族は鬼だ」
「あ……私は日本のとある地方から来ま、した……」
「現世の者か……迷い込んだんだな……」
「現世……? あの、私、帰れますか? 地名を聞いてもここがどこだか分からないんですが……」
呆然としながらも確認すると、男の人の手が動き私の頭を大きな手でぽんと叩いた。
「帰れるという保障は出来ない。だが、ふらっと迷い込んで、ある日ふらっといなくなる者もいるらしい。俺も何人か知っている。だから、ある日ふらっと帰れるかもしれない。黄泉の食べ物を食べなければ大丈夫だ」
「黄泉? 黄泉ってあの黄泉?」
「ああ、黄泉を知っているのか。おそらくその黄泉だ」
そんな……私、いったいどこに迷い込んでしまったんだろう……。




