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「ね、ねえ。やっぱり帰ろうよう。肝試しなんてやめよう?」
「何言ってるの? ここまで来て帰るなんてなしなし」
私は友達の夕花の腕に絡み付きながら、暗い林の中で涙目になっていた。
私、東雲梓紗は、高三女子。
怖いものは大の苦手なのに、肝試しをやろうという誘いを断りきれずに真夏の夜、林の中を抜けた先にある湖まで歩いている。
ここまでは夕花のお兄さんに車で連れてきてもらって、お兄さんは近くの駐車場で待っていてくれてる。
林の中は本当に真っ暗で、この辺りは野生動物もいるらしいし、怖いことこの上ない。
がさがさっ。
「ひっ! もう無理ー!」
「えっ! 梓紗!? ちょっと、どこ行くの!?」
突如足元で物音がして、私は驚いて夕花の腕を離してそのまま林の奥に駆け出した。
なんでそんなことをしてしまったのか、私は後で後悔することになるとも知らず、とにかくその場から離れたくてパニックになっていた。
◇
「はぁ……はぁ……あれ? ゆ、夕花!? うそ、ここどこ……?」
慌ててスマホを取り出そうとして、バッグに手を忍ばせたものの、そこにスマホはなく……。
「え、なんでないの!? まさか落とした……?」
外のポケットに入れていたせいかもしれない。
私は真っ青になって、あたりを見回した。
「え?」
いつの間にか林を抜けたのか、古そうな民家が立ち並んでいる。
「こんなとこあったんだ……」
でもほったて小屋のようなそこの戸をノックする勇気は私にはなかった。
も、もうちょっと綺麗な家があったら、お願いして連絡を取ってもらおう。
そう思い、しばらく歩いても綺麗な家はなく。
それどころかまたどんどん自然深くなっていくので、私は途方に暮れてしまった。
背に腹はかえられないか……。
少し戻って端の民家の戸を叩こうとしたその時。
「君、どこから来たんだ?」
低い男性の声で話しかけられて、私は怖くて思わず固まってしまった。




