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第9話 「四人の灯り」(完成版)
第9話 「四人の灯り」(完成版)
午前十時過ぎ。珍しく晴れた空の下、四人は灯台荘の外壁を白く塗り直していた。
刷毛を動かす手は、まだぎこちない。
山田耕平は無言でペンキを塗り続け、時折遠い海を見つめた。
彩がそっと声をかける。澪が微笑んで励ます。海人は梯子の上から、静かに皆を見守っていた。
昼下がり、休憩の味噌汁を囲んだとき、耕平が初めて自分の過去を少しだけ話した。
「妻と娘に、僕は『頑張れ』とばかり言って……結局、家族を失った。
海が見たくなって、ここに来たんです。」
澪は静かに頷き、
「私も……担当していた少年に『大丈夫』としか言えなかった。
でもここで学んだのは、『ここにいてもいい』という光です。」
海人は椀を置き、遥の言葉を静かに落とした。
「遥は言っていた。『弱い光が四つ集まれば、結構な明るさになるわよ』って。」
四人の刷毛が、再び動き始めた。
午後の陽射しの中で、灯台荘の壁は少しずつ、優しい白を取り戻していった。




