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33/34

33,エコ戦闘、終了。

 


 ロガンの潜伏先は分かっていた。

 近くには、ロガンを守護するアベラルドもいる。


 まずは『発見された場合の敵反撃or逃走』を究極節約。

 これでロガン側に、僕たちの接近が気づかれることはない。


「クローイ、まずは《絶対防御アブソルートリー・シールド》を無力化して」


「了~解」


 クローイが《ドーズ(居眠り)》を仕掛ける。

 念のため、『スキルをかけるのに失敗した場合のトラブル』を究極節約。

 これで《ドーズ(居眠り)》を防がれる心配はない。


 アベラルドが深い眠りに落ちる。


 同時に僕は『ロガンの集中力』を《浪費ウェースト》で削ぎに削ぐ。

 これでそばでアベラルドが眠りだしても、すぐには気づけない。


「あとは任せてね、トラ。あたし、暗殺者も兼業だから」


 地味に初耳なんだけど。

『移動エネルギー節約』+もとからの敏捷性で、クローイは神速で移動。

 その骨刀がロガンを貫くのは、間違いない。


 ちょうど[究極エコ・モード]の時間切れ。


 僕が茂みをかき分けていくと、先に行っていたクローイを見つけた。

 その足元には、ロガンとアベラルドの死体があった。ロガンは胸部を貫かれたあと。アベラルドは喉をかき切られていた。


「ロガンという男、最後までなぜ自分たちが負けたのか理解できていなかったわよ。けど≪エコの王≫の名は伝えておいたわ。どこのパーティに殺されたのかくらい知ってから、地獄に落ちてもらわないとね」


「あのさクローイ。アベラルドは《ドーズ(居眠り)》で眠っていたんだから、殺す必要はなかったのに」


 クローイは骨刀の血をぬぐいながら、


「甘いわねトラは。冒険者殺しには死あるのみよ。そこに慈悲が介在する余地はなし」


「とにかく、死体は≪空の芙蓉≫に届けたほうがいいね。元はあそこのギルドのパーティだし」


「そーいえば、コイツら賞金首よ。思いがけなくボーナス・ゲットね」


 死体を引きずって、僕たちは馬車に戻った。

 すでにシドニーは戻っており、軽々と男の死体を抱えている。カストだな。

 リビーがまだなのは、《節約(エコノマイズ)》が解除されたためだろう。敏捷性マイナスで帰ってくるのは時間がかかりそうだ。


「シドニー、リビーを迎えに行って」


「了解した」


 盾を構えたチェルシーが、勇ましく駆けてくる。


「アニキ! アタシの出番はまだですかっ!」


「あー、ごめん。今回はチェルシーの出番はなかったよ。≪壊滅の華≫は全員倒したし──」


 おっと、一人残っていた。

 ベニートが森林の中から飛び出しきて、僕に向かって毒刀を振り下ろしてくる。


 まいったなぁ。《節約エコノマイズ》が使えないから、僕は死ぬかも。


「敵襲! アニキはアタシが守りますよっ!」


 チェルシーが僕の前に滑り込み、《反転インバーション》を発動。

 盾に当たった毒刃が、勢いよくはじき返される。


「助かったよ、チェルシー!」


 クローイも褒める。


「よくやったわね、チビっこ!」


「いやぁ~、ありがとうです~」


「褒められて嬉しいのは分かるけど、まだ敵が目の前にいるからね」


 ベニートは舌打ちしてから、撤退しようとする。

 瞬間、ベニートの足元から『虚無の大鎌』が出現。


「な、なんだとぉぉぉ!」


 驚愕するベニートの首を、『虚無の大鎌』が刈り取った。

 シドニーの大好きな攻撃魔法、《空の死神(グリム・リーパー)》だ。


 クローイが感心する。


「ふーん。トラの《節約エコノマイズ》がないのに、たいしたものね」


 Sランクパーティも経験のあるクローイが称賛するのだから、本物なのだ。我が妹のことなので、お兄ちゃんも鼻が高い。


「シドニーは天才肌だからね」


 そのシドニーが、リビーと一緒に戻ってきた。何かの包みを抱えている。


「大丈夫だったか、トラにい?」


「あんたさ、敵意を嗅ぎ取れるんじゃなかったの? まだ一人潜んでいたのに、スルーしていたわよね」


 クローイがそこを指摘すると、シドニーは当然という様子で答える。


「もちろん毒男の存在には気づいていたが、シドニーがいなくても問題ないと考えたのだ。結局は、シドニーが仕留めることになったわけだが。どうもこのパーティ、トラにいとシドニー以外はたいしたことがないらしいぞ」


「あんたねぇ」


 喧嘩になる前に、僕は間に入った。


「まぁまぁ。ベニートの件は《節約エコノマイズ》解除後で、頭がボーとしていた僕が悪い。ところでシドニー、その包みは?」


「残骸だぞ、トラにい。カルメンという女の」


 あー、なるほど。リビーのウォーハンマーを食らえば、MP無しで防御魔法も使えない魔導士など、一たまりもないか。


「いま見せるぞ、トラにい


「見せなくていい、見せなくて」


「そうか? 見事に損壊されていて」


「だから見せなくていいと──あ、ほら、カルメンの左手が落ちたよ」


 左手という部品を拾って、包みの中に戻しておく。


「5体もの死体を運んでいくことになってしまった」


 依頼主のことを忘れていた。馬車内に入り、戦況結果を報告。


「フランチェスカさん。敵は殲滅したので、もう安心して大丈夫」


 フランチェスカがホッと胸を撫で下ろす。


「皆さん、無事?」


「僕たちは無事。いや、リビーは抜かして」


「え、リビーさんが負傷したの?」


「そういうわけじゃないんだけど」


 馬車から顔を出して、リビーを確認。

 リビーはといえば、地べたに座り込み、死人のような顔で地面を見ていた。


「……まるで地獄のごとき苦しみです」


節約エコノマイズ》が解除されたので、また地獄の二日酔いに戻っているわけ。


「お酒、やめたら?」


「……はい。禁酒いたします」


 たぶん元気になったら、また飲むんだろうなぁ~。


 にしても、だ。

≪壊滅の華≫を潰したとなると、良くも悪くも≪エコの王≫が目立ちそうだぞ。



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