33,エコ戦闘、終了。
ロガンの潜伏先は分かっていた。
近くには、ロガンを守護するアベラルドもいる。
まずは『発見された場合の敵反撃or逃走』を究極節約。
これでロガン側に、僕たちの接近が気づかれることはない。
「クローイ、まずは《絶対防御》を無力化して」
「了~解」
クローイが《ドーズ》を仕掛ける。
念のため、『スキルをかけるのに失敗した場合のトラブル』を究極節約。
これで《ドーズ》を防がれる心配はない。
アベラルドが深い眠りに落ちる。
同時に僕は『ロガンの集中力』を《浪費》で削ぎに削ぐ。
これでそばでアベラルドが眠りだしても、すぐには気づけない。
「あとは任せてね、トラ。あたし、暗殺者も兼業だから」
地味に初耳なんだけど。
『移動エネルギー節約』+もとからの敏捷性で、クローイは神速で移動。
その骨刀がロガンを貫くのは、間違いない。
ちょうど[究極エコ・モード]の時間切れ。
僕が茂みをかき分けていくと、先に行っていたクローイを見つけた。
その足元には、ロガンとアベラルドの死体があった。ロガンは胸部を貫かれたあと。アベラルドは喉をかき切られていた。
「ロガンという男、最後までなぜ自分たちが負けたのか理解できていなかったわよ。けど≪エコの王≫の名は伝えておいたわ。どこのパーティに殺されたのかくらい知ってから、地獄に落ちてもらわないとね」
「あのさクローイ。アベラルドは《ドーズ》で眠っていたんだから、殺す必要はなかったのに」
クローイは骨刀の血をぬぐいながら、
「甘いわねトラは。冒険者殺しには死あるのみよ。そこに慈悲が介在する余地はなし」
「とにかく、死体は≪空の芙蓉≫に届けたほうがいいね。元はあそこのギルドのパーティだし」
「そーいえば、コイツら賞金首よ。思いがけなくボーナス・ゲットね」
死体を引きずって、僕たちは馬車に戻った。
すでにシドニーは戻っており、軽々と男の死体を抱えている。カストだな。
リビーがまだなのは、《節約》が解除されたためだろう。敏捷性マイナスで帰ってくるのは時間がかかりそうだ。
「シドニー、リビーを迎えに行って」
「了解した」
盾を構えたチェルシーが、勇ましく駆けてくる。
「アニキ! アタシの出番はまだですかっ!」
「あー、ごめん。今回はチェルシーの出番はなかったよ。≪壊滅の華≫は全員倒したし──」
おっと、一人残っていた。
ベニートが森林の中から飛び出しきて、僕に向かって毒刀を振り下ろしてくる。
まいったなぁ。《節約》が使えないから、僕は死ぬかも。
「敵襲! アニキはアタシが守りますよっ!」
チェルシーが僕の前に滑り込み、《反転》を発動。
盾に当たった毒刃が、勢いよくはじき返される。
「助かったよ、チェルシー!」
クローイも褒める。
「よくやったわね、チビっこ!」
「いやぁ~、ありがとうです~」
「褒められて嬉しいのは分かるけど、まだ敵が目の前にいるからね」
ベニートは舌打ちしてから、撤退しようとする。
瞬間、ベニートの足元から『虚無の大鎌』が出現。
「な、なんだとぉぉぉ!」
驚愕するベニートの首を、『虚無の大鎌』が刈り取った。
シドニーの大好きな攻撃魔法、《空の死神》だ。
クローイが感心する。
「ふーん。トラの《節約》がないのに、たいしたものね」
Sランクパーティも経験のあるクローイが称賛するのだから、本物なのだ。我が妹のことなので、お兄ちゃんも鼻が高い。
「シドニーは天才肌だからね」
そのシドニーが、リビーと一緒に戻ってきた。何かの包みを抱えている。
「大丈夫だったか、トラ兄?」
「あんたさ、敵意を嗅ぎ取れるんじゃなかったの? まだ一人潜んでいたのに、スルーしていたわよね」
クローイがそこを指摘すると、シドニーは当然という様子で答える。
「もちろん毒男の存在には気づいていたが、シドニーがいなくても問題ないと考えたのだ。結局は、シドニーが仕留めることになったわけだが。どうもこのパーティ、トラ兄とシドニー以外はたいしたことがないらしいぞ」
「あんたねぇ」
喧嘩になる前に、僕は間に入った。
「まぁまぁ。ベニートの件は《節約》解除後で、頭がボーとしていた僕が悪い。ところでシドニー、その包みは?」
「残骸だぞ、トラ兄。カルメンという女の」
あー、なるほど。リビーのウォーハンマーを食らえば、MP無しで防御魔法も使えない魔導士など、一たまりもないか。
「いま見せるぞ、トラ兄」
「見せなくていい、見せなくて」
「そうか? 見事に損壊されていて」
「だから見せなくていいと──あ、ほら、カルメンの左手が落ちたよ」
左手という部品を拾って、包みの中に戻しておく。
「5体もの死体を運んでいくことになってしまった」
依頼主のことを忘れていた。馬車内に入り、戦況結果を報告。
「フランチェスカさん。敵は殲滅したので、もう安心して大丈夫」
フランチェスカがホッと胸を撫で下ろす。
「皆さん、無事?」
「僕たちは無事。いや、リビーは抜かして」
「え、リビーさんが負傷したの?」
「そういうわけじゃないんだけど」
馬車から顔を出して、リビーを確認。
リビーはといえば、地べたに座り込み、死人のような顔で地面を見ていた。
「……まるで地獄のごとき苦しみです」
《節約》が解除されたので、また地獄の二日酔いに戻っているわけ。
「お酒、やめたら?」
「……はい。禁酒いたします」
たぶん元気になったら、また飲むんだろうなぁ~。
にしても、だ。
≪壊滅の華≫を潰したとなると、良くも悪くも≪エコの王≫が目立ちそうだぞ。
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