34,護衛クエスト完了。
商業都市ランセに到着。
これでクエスト完了だけど、せっかくだからジルガ家までフランチェスカを送り届けよう。
「トラ、《節約》は復活したの?」
「うん。まだ究極のほうは使えないけど、通常のエコなら大丈夫」
危機は去ったと思うけど、ひとまずクローイにジルガ邸へ偵察に行ってもらう。
やがてクローイが戻ってきて報告。
「ジルガ邸に続く道路で、待ち伏せ部隊が潜んでいたわよ。始末しようかとも思ったけど」
クローイが骨刀を閃かしながら、続ける。
「けど、それで騒ぎを聞き付けて、フランチェスカ到着が知られても困ると思ったの。空気読んだわけよ」
クローイが空気を読むなんて。明日は雪かな。
「つまり、ジルガ家の人たちはフランチェスカがランセ入りしたのに気づいていない?」
「おそらくね」
「なら余計な戦闘は避けよう。シドニー、フランチェスカを抱えてあげて」
「了解したぞトラ兄」
「え、ちょっと待っ──」
驚くフランチェスカを、シドニーが軽々と抱き上げる。
シドニーの猫人族ながらの膂力もさることながら、《節約》で『フランチェスカを抱える労力を節約』してある。
よってシドニーにとって、羽毛を抱えたようなもの。
「二日酔いさんとチェルシーはここで待機」
「アニキー! アタシを置いていかないでくださーい!」
「チェルシー。君には、君だけができる大事な使命がある」
「え、それはなんなんですかアニキ!」
「リビーさんの看病」
「……」
二日酔いで死んでいるリビーが、もごもごと言った。たぶん「私のことはお気になさらず」的なことを言ったのだろうけど。
護衛隊長アダムが挙手。
「私はどうしたら良いのでしょうか!」
「えーと。ここで待機していて」
ここでアダムまで連れていくのは、節約精神に反するし。とにかくフランチェスカの生存さえ証明できればいいわけだ。
僕は、自分を含めてクローイ、シドニー、ライラに『移動エネルギーの節約』を行った。敏捷性を上げたところで、いざジルガ家へ。
「クローイ。待ち伏せ部隊の付近まで行ったら知らせて」
「了解了解、というかもう来たわよ」
【エコ領域】で、僕たちの『隠れるエネルギー』を節約。
ここで節約解釈の話になる。
隠れることを節約したら、すぐに発見されるのではとも考えられる。しかし別の解釈を取るなら、隠れる必要性への節約。
つまり、発見されにくくなる。いまは後者の解釈で。
また待ち伏せしている者たちには、《節約》で『注意力』を節約。つまり、注意力を削いだ。
結果、待ち伏せ部隊の鼻先を通過しても気づかれず。
そのまま僕たちはジルガ邸内へと突入。
同時に『隠れるエネルギー』節約を解除。
大広間にいた男2人が驚きの声を上げる。
「な、なんだと! 待ち伏せはどうした!」
いやそれを聞かれても困るんだけど。
「素通りしました」
『相手の自己紹介』を節約。これでこの男2人の身許が分かる。
ジルガ家の兄弟イチガとニガか。フランチェスカを亡き者にして、遺産相続分を増やそうと企んだ人たち。
「≪壊滅の華≫を雇ったのは、どっち?」
「そうだ≪壊滅の華≫め! 高いカネを取っておきながら、仕事をしないで消えやがって!」
そう怒鳴ったのはニガだ。するとこっちが≪壊滅の華≫を雇ったようだね。
どういう経緯で≪壊滅の華≫に繋がったのか知らないけど。
「あのさ。≪壊滅の華≫はちゃんと仕事はしようとしたんだよ。僕たちを襲撃してきたからね。僕たちに返り討ちにあったのは、彼らの責任じゃない」
「ふざけるなよ! 貴様らのようなどこの馬の骨とも知れない奴らが、≪壊滅の華≫に勝てるはずがないだろうが! 奴らは元Aランクパーティだぞ!」
そして何を思ったか、ニガはロングソードを抜いて、
「フランチェスカ! 貴様が生きていちゃ困るんだよ!」
駆けてきて、フランチェスカに斬りかかろうとする。
横合いから、僕が蹴っ飛ばしておいた。
ニガが吹っ飛んでいく。
「≪空の芙蓉≫は、≪壊滅の華≫を雇ったあなた達をどう思うかな? 永久追放したパーティを雇ったジルガ家を。大手のギルドに目を付けられたくなかったら、もう諦めるんだね」
ニガよりも現実的らしく、イチガが言う。
「フランチェスカを遺産相続人として受け入れれば、≪壊滅の華≫のことは黙っていてくれるんだな」
「フランチェスカに指一本触れないと約束するならね」
「や、約束する」
「この約束が破られたら、≪空の芙蓉≫に知らせるだけじゃないよ。こちらのシドニーが、寝静まったころあなたたちのもとに遊びに行くことになる」
シドニーが近くにあった家具を指さし、火炎魔法であっけなく塵にした。
それを見てイチガとニガの2人が震え上がる。
「や、破るもんか!」
「賢明だね」
これで本当に護衛クエスト完了。
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