30,冒険者を殺す者たち。(≪壊滅の華≫視点)。
冒険者の追跡を本業とする冒険者。それがハンターだ。
その中でも腕利きのハンター・パーティを、≪空の芙蓉≫は送り出してきた。
それはロガンたちが、かつて≪空の芙蓉≫に属していたからだろう。
Aランクパーティ≪壊滅の華≫が。
「で、リーダー。どうするんですか? ジルガ家の依頼があるってのに、ハンターどもに嗅ぎつけられるなんて」
アベラルド。≪壊滅の華≫のタンクが、そう問いかける。
対して≪壊滅の華≫リーダーであるロガンは応える。
「問題ない。ここでハンターどもを殲滅する。それから標的であるフランチェスカの追跡に入る」
『ここ』とは、イダという町だ。
主要街道に寄生するように作られた集落の一つ。
800人ほどの市民が平穏無事に暮らしている。
まともな神経の持ち主ならば、こんなところを戦場には選ばないだろう。
「ベニート、『網』を張っておけ」
蜘蛛のように手足の長いベニートがうなずく。
「カルメン、『充電』を始めろ」
「すでに充電は行われた」
鋼色の髪を長く伸ばした女が応える。彼女カルメンはメイジであり、アタッカー。
ロガンはもう一人のアタッカーが配置についたのを確認した。
そして考える。
結局のところ、このために冒険者を永久追放されたのだろうと。
強者を屠ることの愉しさに目覚めてしまったために。なら、このハンターどもは格好だ。
5人構成のハンター・パーティが、イダ町に侵入する。
ロガンはハンター5人を、『A』、『B』、『C』、『D』、『E』と識別。
ロガンは町の広場に一人、佇んでいた。
分かりやすい囮。しかしロガンは≪壊滅の華≫のリーダー。ハンターたちは無視はできまい。
やはり、だ。ハンター・パーティは、『A』のアタッカーを中心にして向かってくる。
この『A』がリーダーだろう。
そして練度の高いパーティでもある。まずはその強固な布陣を壊すとしよう。
ロガンが合図する。
瞬間、カストによる狙撃が行われる。
狙ったのは、『D』。ヒーラーの女だ。
カストによって、頭部を撃ち抜かれる。他のハンターが動揺しつつも散開した。
カストの狙撃が予測できなかったのは無理もない。
カストだけはこの町にいない。10キロ離れた森林の中だ。
そこから『遠距離狙撃』を可能とするのが、カストの攻撃スキル《完全狙撃》。
続いてバッファーの『E』を殺すことにした。
これはカルメンに任せる。
カルメンは充電することで、大量のMPを瞬間的に貯められる。
そして一気に解き放つ。
《大獄炎》。
半径500メートルに地獄の猛火の柱を出現させる魔法。
多数の市民を巻き添えにして、『E』も焼死した。
ヒーラーを仕留めることで回復できなくし、バッファーを仕留めることでパーティの強化を無効にする。
『A』がロガンに向かって、突撃する。
何としてもロガンの首を獲り、戦況を立て直そうというのだろう。
『A』は剣士。だがその刃が、ロガンに届くことはない。
ロガンを守護するアベラルド。
ユニークスキル《絶対防御》は、物理攻撃を全て防御する。
たやすく『A』の一撃を弾き返す。
『A』は自分ではなく、メイジである『B』に魔法攻撃させるべきだったのだ。
カストの《完全狙撃》2発目。
『A』の頭部を撃つ。だが『A』は持ちこたえた。アタッカーならではの防御力で。
「おいリーダー、サボんねぇでくださいよ」
と、アベラルドが毒づいてくる。
ロガンは笑った。
「すまない。ウッカリしていた──《最弱化》」
ロガンはデバッファーだ。
《最弱化》は、敵パーティ・メンバー全員を、半分の数値まで弱体化できる。
攻撃力も防御力もMPも敏捷性も、数値化できるものは全て半分。
その上で、カストの3発目。
今度はちゃんと『A』の頭を撃ち抜き、殺した。
『B』が遠隔から魔法攻撃を仕掛けようとする。
だが『B』は、すでにベニートの『網』にかかっていた。
ベニートはどこのクラスにも入りがたい。
そのスキル《網毒》は、『網』に触れたものを毒状態にしてしまう。クラウドコントローラーにしては、殺傷力が高い。
そして耐性が弱ければ、毒状態になったとたん毒死だ。
『B』がそうなったように。
唯一の生き残り『C』が逃走を始めた。
敏捷性に自慢があるようだが、今は《最弱化》のせいで、その速さも半分。
あっけなくカストに狙撃された。
ハンターは全滅。
ロガンたちは掠り傷ひとつ負っていない。
ロガンは溜息をついた。
「もう少し愉しませてくれるかと思ったがな」
「そりゃあ、無理な相談でしょうよ。オレら実際のところは、Sランクレベルなんじゃないですか?」とアベラルド。
「アベラルドの莫迦にしては、その評価は正しい」とカルメン。
「かもしれんな──さて行くぞ。標的はすでに移動を開始しているはずだ」とロガン。
「フランチェスカとかいう令嬢も不運なことですぜ。どの程度の護衛隊を使ってんのか知らねぇが、オレたちが相手じゃ秒も持ちませんぜ」
「そう決めつけるなアベラルド。案外、骨のある護衛どもかもしれんぞ」
「またまたご冗談を。≪死滅の上弦≫でも出張って来なきゃ、やられる気はありませんぜ」
「確かに私も、≪死滅の上弦≫が追跡してきたら恐怖を感じるだろうな」
だが≪空の芙蓉≫が、大事なSランクパーティを人狩りに出すはずがない。
よって結論はこうなる。
誰も、≪壊滅の華≫を止めることはできない。
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