28,護衛クエスト。
王都と主要街道が繋がっている都市は、衛星都市と呼ばれている。
そんな衛星都市のひとつガボロに、僕たちは滞在していた。
ある昼下がり。
美味しいコーヒーを求めて一人で歩いていると、後ろから人が走ってきた。
僕が振り返るのと、「助けてっ!」と求められるのが同時だった。
年のころ18の少女。ブロンドの髪に白い肌、整った顔立ち。高価そうなドレスを着ているので、貴族の子かな?
「男たちに追われてるの、助けてっ!」
「えー」
少女は実にショックを受けていた。
「そんな、あからさまに嫌がらなくても……」
「面倒ごとは避ける省エネな性格なんで」
などと話している間に、少女の追手たちに囲まれていた。相手は4人。武装はしていないが、全員、荒くれという感じだ。
「その娘を渡してもらおうか。逆らうようなら、ただじゃすまねぇぞ」
「そう言われても……話し合いで解決は? 無理?」
結局、暴力沙汰になった。
4秒後には、全員を伸し終えていたが。
倒れたまま呻いている追手たちを見下ろして、僕は溜息をついた。
「だから嫌だったんだ。プロの冒険者なのに、素人のチンピラをボコるなんて。なんか恥ずかしい」
「……あなた、強いのね。意外。けど冒険者だというなら納得かも。今の強さだと、アタッカーね?」
「あのね。アタッカーの戦闘力は、こんなものじゃないから」
一般人の基準だと、アタッカーの戦闘力は『化け物』に映ることだろう。
「じゃ、僕はこれで」
「待って!」
少女にしがみ付かれた。
「あなたを冒険者の中の冒険者と見込んで、頼みがあるの!」
「えー」
★★★
少女はフランチェスカといった。
頼んでもいないのに自己紹介されてしまったわけで。こうなると僕もトラヴィスと名乗らざるをえなくなる。さらに逃げづらくなる。
近くのカフェで、不味いコーヒーを飲みながら話を聞くことになった。嫌だけど。
「あなた達って、パーティで移動しているのでしょ? それなら是非とも頼みたいことがあるのよ」
「悪いけど僕たちは先を急ぐ身なんだ」
「どこへ行くの?」
「商業都市ランセ」
「これも神のお導きね。わたしがお願いしたいのは、旅のあいだの護衛なのよ。そして目的地がランセなの。もちろんタダでとは言わないわ。無事にランセに着いたら、報酬はたっぷりと支払います」
「つまり、護衛クエストかぁ。で、どんな事情があるのか説明してくれるのかな?」
「クエストを受注してくれたら、話すわ」
「じゃ受注はできないな」
19日後、要塞ゴーゴンが地上に姿を現す。そうしたら、狂った精霊の討伐クエストとなるのだから。それまでは厄介事は遠ざけておきたい。
ふと見ると、フランチェスカが潤んだ瞳で見てきている。
「あなたが助けてくれなかったら、わたしは殺されるわ。きっと殺されるわよ。それでもいいの、トラヴィスさん?」
「…………分かったよ。受注する」
「やったわ!」
ガッツポーズを取るフランチェスカ。さっきまでの潤んだ瞳はどこにいった。
最近思うんだけど、女運が悪いんじゃないかな僕は。
「それでトラヴィスさん、いまパーティの仲間はどこにいるの?」
「さぁ」
「さぁ?」
「うちのパーティは、自由気儘な人たちが集まっているからね。この都市には4日間滞在する予定で、いったん解散したんだ。明日には約束の場所で落ち合うんだけど」
「今日中には出発したいわ」
「なら、まずは仲間探しクエストだなぁ」
僕はチェルシーと同じ宿に泊まっていた。安宿を探していたら、自然と同じ場所になったわけ。
だからチェルシーはいいとして、残り4人。クローイ、リビー、ライラ、シドニーを探さねば。
「よし。まずは酒場を回ろう」
5軒目の酒場で、テーブルに突っ伏しているリビーを見つけた。そのまわりには、空のグラスが複数転がっている。
「紹介しよう、フランチェスカ。彼女が我がパーティのアタッカー、リビーさん」
「……酔いつぶれているようにしか見えないのだけど」
リビーはお酒好きだが、酒に弱い。あと二日酔いにも弱い。
「だね。とりあえず、明日までは戦力になりそうもない。さ、リビーさん行くよ」
リビーの持ち物から、どこの宿に泊まっているのか判明した。酔いつぶれた彼女を抱き上げて、そこまで運ぶ。
「とりあえず、出発の時までここに寝かせておこう」
「次はどこに行くの?」
「さらに酒場を回る」
13軒目で、ライラを見つけた。
ライラは椅子に背筋を伸ばして座っている。優等生のようにして。
そんなライラと飲み比べ対決していた大男が、急性アルコール中毒で運ばれていくところだった。
一方、こちらも大量の酒を飲んだライラだが、少し頬が赤いくらいだ。
「紹介しよう、フランチェスカ。彼女が我がパーティのヒーラー、ライラだ」
「……こっちは酒豪なのね」
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