表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/34

25,救出クエスト。

 


 精霊と戦うなら、シドニーの回数制限ヒールだけでは心もとない。

 やはり、ちゃんとしたヒーラーが必要だ。


 そこでライラに話を持ちかけてみることにした。

 ライラと2人で落ち着いて話したいので、彼女の家を訪れるつもり。


 で、さっそく問題発生。

 ライラの家って、どこ?


≪来航の善≫時代、ライラとはクエスト関連以外の会話はほとんどしなかった。

 地味に覚えている世間話といったら、ダンジョン攻略中の食事休憩のときのこと。

 ライラが水筒から持参した牛乳を飲んでいたので、僕は聞いたわけだ。


「ダンジョン入ったの昨日だけどさ。その牛乳、腐ってないの?」


 するとライラは僕を睨みつけて、


「私の牛乳は、腐らない」


「……そうなの」


 これだけ。


 というわけで、≪渚の剣≫元受付嬢のリビーに尋ねてみた。

 ギルドに所属する冒険者は現住所を知らせなければならず、受付嬢が全て記録しているので。


〔莫迦と金づる亭〕の賑やかな店内で、リビーは困り顔で僕を見返した。


「トラヴィス様。わたくしは残念ながら平凡な記憶力の持ち主です。また記憶系スキルの所有者でもありません。よって各冒険者の住所など覚えておりません」


「だよねー」


≪渚の剣≫に問い合わせたら教えてくれるだろうか? うーん、無理だろうなぁ。

 同じギルドに属していても、正当な理由なく個人情報を開示するとは思えない。ましてや追放された身の僕には。


「でしたら、わたくしが友人に頼んでみましょうか」


 僕が困っていると、リビーがそう提案してくれた。


「え、お願いできる? じゃ頼むよ。だけどリビーさんも、今は≪渚の剣≫を辞めた身だよね。大丈夫なの?」


「はい。≪渚の剣≫の受付には、わたくしが教育した後輩がおります。わたくしの頼みなら断らないでしょう」


 リビーは自信満々だ。これぞ先輩と後輩の絆だね。


 で、30分後。

 リビーが〔莫迦と金づる亭〕に戻ってきた。よほどお怒りモードらしく、こめかみに青筋が立っている。


「……どうかしたの?」


 リビーは虚空を見つめながら呟いている。


「何度、あの小娘のために遅刻を誤魔化してあげたことでしょう。その報いがこれとは。ただ受けた恩を忘れて、わたくしの依頼を断っただけではありません。

 あろうことか、このわたくしに対して『先輩も早く身を固めないと婚期を逃しますよ~』などと助言をしてくるとは。何様でしょう、あの小娘は」


「……」


 どうやら、後輩さんに情報提供を断られたらしい。

 まぁ、後輩さんは責められないよ。すでに部外者のリビーに、ギルド・メンバーの個人情報を明かすほうが倫理に反しているし。


「じゃ、ライラの現住所は分からずじまいだね」


 リビーはきょとんとした顔で、僕を見やった。


「いいえ、トラヴィス様。ライラ様の現住所でしたら入手いたしました」


「え? だって後輩さんには断られたんだよね?」


「はい。その上、わたくしにいらぬ助言をしてきました」


 ああ、婚期を逃す云々という助言ね。さては後輩さんは結婚したばかりだな。


「ですので、わたくしは後輩に申しました。『あなたが昔、小遣い稼ぎに売春組合に入っていたことを、愛しの旦那様はご存じなのですか』と。

 すると後輩は面白いくらい顔面蒼白となり、求めた情報を教えてくださいました。やはり先輩と後輩の絆は永遠ということでしょう」


「……うん、そうだね」


 リビーだけは怒らせないでおこう。

 何はともあれ、ライラの現住所をゲット。


 あとは訪ねて、こうお願いするだけだ。

 ──≪来航の善≫も≪渚の剣≫も辞めて、≪エコの王≫に入ってよ。≪エコの王≫はいまだにギルド登録もできていないけど、気にすることはないって。と。


 うーむ。断られる未来しか見えない。

 ま、当たって砕けよう。


 ところが、まず当たることができなかった。

 ライラは留守だったので。クエストに出ているのかもしれない。

 ライラの家の前で困っていたら、近所の人が声をかけてきた。


「ライラさんなら、まだお帰りになっていませんよ」


「まだ? というと、長期のクエストに出発したんですか?」


「いいえ。ライラさんは連行されました、冒険者管理局に。それからまだ戻っていないのですよ」


 冒険者管理局に? 

 どういうことだろ?


 僕は管理局本部に向かい、ライラに会いたいと伝えた。

 だが現在、ライラへの面会は禁じられているという。


 意外だ。管理局に冒険者を留置する権利があったのか。

 確かに機関名は『管理』ではあるけど、名称だけの有名無実と思っていた。


〔莫迦と金づる亭〕に戻ると、リビーだけでなくクローイの姿もあった。

 クローイはリビーの肩に腕をまわして、何やら陽気に話しかけている。リビーは迷惑そうだが。


 僕は席に座って、エールを注文した。それからライラが管理局に留置されているらしい、と話す。

 するとクローイは嬉しそうに言いだした。


「ほらね。クエストは向こうからやって来るわけよ」


「クエストだって?」


「管理局から、()()()()()()()()()を救出するわけ。これはれっきとした救出クエストね」


 いや、脱獄クエストじゃないの、それ。



気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ